海外からラブコール殺到、カメレオン・ライム・ウーピーパイの圧倒的個性が求められる理由

 
90年代譲りのミクスチャー、日本語詞で生み出すグルーヴ

音楽的ルーツをさらに掘り下げると、3人共通のお気に入りは90年代のポップミュージック。制作スペースとなっているWhoopies1号の部屋には、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョン『Orange』、チボ・マット『Viva! La Woman』といったLPから、ビースティ・ボーイズ「Root Down」、ケミカル・ブラザーズ「Block Rockin’ Beats」などのシングル盤まで、当時のレコードが(そのときの気分で)飾られている。

90年代はいろんなものを混ぜながら、メチャクチャなことをやってやろうという時代だった。ジョン・スペンサーも以前、『Orange』を振り返りながら「俺たちはジェームス・ブラウンなどの古いソウルと並行して、たくさんのヒップホップも聴いていた。そこからルーツ・ミュージックの要素を独自の方法で抽出して、それを新たに組み替えた音楽を作ってきたんだ」と語っている






そういったミクスチャー感覚は、つい最近まで時代遅れとされてきたが、『Orange』よりも後に生まれて「いろんな音楽が混ざったものが好き」と語るChi-にとっては、一周回って刺激的なサウンドだったようだ。

「Whoopiesとは好みがバッチリ合うから、三人で一緒にライブ映像とかを観て、カッコイイと思えたのが90年代のものばかりで。みんな好きなようにやっていて、熱量もあるし遊び心も感じられる。今の自分がやりたいのはこれなんだなと」

もちろん、単なる懐古主義にあらず。“ダサい方がくらっちゃう/トレンドも全部突き抜けろ”とChi-が歌う「Crush Style」では、ファットボーイ・スリムに象徴されるビッグ・ビートを「今やったらこうなるんじゃないか」と再構築することがテーマとなっており、サンプリングを駆使したブレイクビーツ、ビンテージな質感をもつベースラインは90年代的だが、そこにトラップ以降のリズム感覚も織り込まれている。




Chi-の歌声も「今っぽさ」をもたらす重要な要素だ。セルフプロデュース力と豊富なアイデアを備えた気怠いボーカルには、はぐれ者の斜め上をいく価値観が滲み出ている。さらに驚かされるのは、歌とラップが入り混じった独特のグルーヴを、日本語主体のリリックで生み出していること。Whoopiesがメロディを用意したあと、Chi-が歌詞を乗せていく過程で、曲のグルーヴはまったく想定外のものに変わっていくという。



幼い頃から忌野清志郎とともにジェームス・ブラウンの音楽と親しんできたChi-は、「踊れる」ことが何よりも大切だと語っている。最近の洋楽だと、チルなUKバンドのイージー・ライフ、「ラップだけでノレてしまう桁違いのリズム感」をもつ米アトランタのアースギャング、国際色の豊かなサウンドを操るフランス出身のジェインといった面々を挙げており、どれも頷けるし、その3組と並んでも遜色ないグルーヴを奏でていると思う。



 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE