「Cheap Sunglasses」(1979年)

時には、過酷なコンサートツアーからインスピレーションを得ることもある。「I’m Bad, I’m Nationwide」と並び、1979年のアルバム『Degüello』(邦題:皆殺しの挽歌)に収録されたハイライト曲のひとつ。メンバーがツアー中に見かけたチープなサングラスをテーマにした曲だ。バンドはツアーで長距離を移動するため、何度も途中で休憩しなければならない。「どこのガソリンスタンドでも、ボール紙で作ったディスプレイに安くて酷いデザインのサングラスを並べて売っていた」とヒルはスピン誌に語った。ゴツゴツしたギターリフとヒルのステディなベースラインで始まる「Cheap Sunglasses」のテーマになっているサングラスは、二日酔いの朝に使える道具というだけではない。MTV時代の到来を前に、ロードハウスブルースのギターリフを心地よくモダンに聴かせるバンドの技量を証明した、初期の作品だ。—D.B.



「Gimme All Your Lovin」(1983年)★

「俺たちがシンセサイザーをちょっと試してみたら、メーカーからあらゆる種類が出てきた。リスク覚悟で思い切ってやってみたのさ。バンドが新たな展開を見せ出した頃の曲だ」とビリー・ギボンズは、ローリングストーン誌のインタビューで語っている。『Eliminator』からの1stシングルとなった本曲を皮切りに、80年代の先端技術を使ったZZトップのイメージチェンジが本格化した。80年代のシンセサイザーと燃えたぎるギターリフが、ピュアなアドレナリンを4分間にわたり激しく放出し続ける。同曲はラジオにおけるクラシックロックの定番になると同時に、アルバムジャケットにも使われた1930年製フォード・クーペが登場するティム・ニューマン監督(ランディ・ニューマンのいとこ)によるミュージックビデオもまた、車とギターと女性という、ZZトップのお決まりのイメージを作り上げた。—A.M.



「Sharp Dressed Man」(1983年)

1983年の大ヒットアルバム『Eliminator』で、ZZトップとプロデューサーのビル・ハムは、伝統的なテキサスの音とシンセサイザーとを巧みに調和させた。「Sharp Dressed Man」で聴かれるビリー・ギボンズのギターは相変わらずファジーで荒々しいが、シンセサイザーを重ねることでダスティ・ヒルのベースが強化され(人によってはベーストラックを置き換えたとも表現している)、着飾った賛歌に躍動するリズムを吹き込んでいる。メンバーはブレザーやスカーフでなくダスターコートにフェドーラ帽という出立ちを選んだものの、おしゃれなミュージックビデオと共に、楽曲もまた80年代を代表する作品となった。「似合うかどうかは、着こなす人間次第だ」とヒルは、スピン誌に語っている(1986年)。「バイクに乗る時はスマートなレザーがよく似合う。パンクロッカーにはパンクロッカーに合うスタイルがある。どんなファッションでも、おしゃれにもなればダサくもなる。要は自分がどう思うかだ。自分でおしゃれだと思えば、おしゃれになれるだろう」—J.H.


Translated by Smokva Tokyo

 
 
 
 

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