SMエンターテインメントの敏腕プロデューサー、KENZIEが明かすK-POPサウンドの秘密

予期せぬメロディの変化

状況が変わりはじめたのは、2013年頃のことだった。SMのCEOを務めていたクリス・リー氏(当時はプロダクション部門の責任者でもあった)がソングライティングキャンプというコンセプトを欧州から韓国に持ち込んだのだ。KENZIEは韓国出身のプロデューサーのひとりとして初めて参加し、欧米のクリエイターたちと初めてコラボレーションを行った。「当時は、とても新鮮に感じました」とKENZIEは振り返りながら、懐かしそうに目を輝かせた。「ソングライティングキャンプの素晴らしいところは、特定のルールもなければ、メソッドもないことです。それなのに、ある一点の周りをぐるぐる回っているうちに、ひとつのアイデアが結びついて最高の化学反応が生まれることです。まさに“東西の出会い”です。そのおかげで、(当時取り組んでいた楽曲に)違った個性を与えることができました。それを示す一例として、KENZIEはEXOの「Overdose」を挙げた。ドラマチック感満載のこのEDMトラックは、2014年に国内外の音楽チャートの1位に輝いた。



KENZIEは、“東西の出会い”の意味を次のように解説してくれた。例えば、西洋(あるいは米国)のメロディは、曲全体を通して特定のメロディアスなモチーフを繰り返すことでその効果を最大限に活かそうとする。「それに対して、もちろんK-POPのメロディにもリピートという要素はあるのですが、それ以上に予期せぬメロディの変化というものもあります。ほかのジャンルと比べると、K-POPは曲のセクションとセクションの移行をよりドラマチックにする傾向があります。メロディはよりエモーショナルで、どちらかと言うとトラックに使われる(楽器の)レイヤーを最大限に活用するのです」とKENZIEは話す。「そうすることで、こうした変化の断片がひとつの大きな音楽的テーマへとつながっていきます。K-POPのメロディを視覚化するとしたら、私はフラクタル図形のようなものを連想します。個人的には、すべてのコード進行には“特別な音符”というものがひとつあると思っています。それを和音の上に重ねることで思いもよらぬ方法でコード進行を完成させると同時に、私たちが心地よいと感じるフレーズが生まれるのです。私は、納得するまでこの特別な音符を常に探し続けています」

それからというもの、KENZIEは少なくとも1年に1作のNo.1ヒット(あるいはトップ5圏内)というペースで楽曲を世に送り出し、自らのレパートリーを広めている。Red Velvetの「Some Love」(2016年)がジャンル的にはトロピカルハウスである一方、EXO-CBXの「Playdate」(2018年)はディスコ風のトラックだ。レスリー・グレイスをゲストボーカルに迎えたSUPER JUNIORの「Lo Siento」(2018年)は、タンゴ、デンボウ・リディム、ポップなレゲトンを融合した遊び心あふれるトラックである。







KENZIEは、NCT DREAMの2021年のEP『Hello Future』と同名のリードシングルの成功について嬉しそうに回想した。「(パンデミックの影響により)シングル『Hello Future』の構想をめぐって、プロデューサーのMoonshineとエイドリアン・マッキノンと何通もメールでやり取りしたり、ビデオ通話アプリを使って話し合ったりしました。その時は、こんなにシンプルなプロセスに1カ月以上かかるなんて考えてもいませんでした」と彼女は言う。「歌詞の最終決定でさえ、なかなかスムーズに行きませんでした。というのも、A&R担当者と私の間にメインテーマといくつかの言葉の使い方に関して意見が分かれてしまったからです。それでも、私は自分のアイデアに自信を持っていましたから、チームのメンバーを説得しようとしました。最終的な仕上がりには、みんなとても満足しています」



Translated by Shoko Natori

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