SMエンターテインメントの敏腕プロデューサー、KENZIEが明かすK-POPサウンドの秘密

課題と野望

時代とともに進化し、変わり続けなければいけないのは、何も音楽だけではない。それは、音楽制作のプロセスにも言えることだ。実際、KENZIEはソングライティングキャンプが導入された頃のワクワク感が薄れはじめていることを認める。「今日では、すべての大手レコード会社が同じシステムを取り入れて、いろんな国からプロデューサーを招聘してはソングライティングキャンプを行っています。そのせいで新鮮味が失われつつあると思います」と、言葉を慎重に選びながらKENZIEは話す。「プロデューサーとして、これは最大の課題でもあります」。だが、彼女は過去に固執するタイプではない。彼女自身、常に前を見続けることをモットーにしているのだ。

「新しい曲の構成やメロディ、新しいコラボレーション方法や音楽づくりの方法を追求することで、こうした状況を乗り越えようとしています。メロディに関して言えば——私は、メロディにすごくこだわるんです——すべてのメロディはもう世に出てしまい、新しいメロディなんて存在しないとよく言われていますが——」と、いたずらっぽい笑みを浮かべながら続ける。「それでも私は、新しいメロディを探し続けています。過去のメロディとは違うメロディを、音楽業界に革命をもたらすようなメロディを探しているんです」

KENZIEがSMに入所した頃と現在のK-POP業界は、確かに別物だ。だが、こうした変化は、どちらかと言えば聴き方の変化によるものだと彼女は指摘する。「リスナーは、単なる音楽としてではなく、多彩な側面を備えたコンテンツとしてK-POPを聴いています。これが近年の進化や変化だと思います」と彼女は話す。「具体的には、私は曲をつくったり、曲をリリースしたりするのを楽しんでいます。歌詞はどちらかと言うと比喩的で、本当の意味が隠されていることが多いのですが、今日のファンは歌詞の本当の意味を予想して、YouTubeなどにコメントをたくさん寄せてくれます。これはとても興味深いことですし、すごく嬉しいですね。K-POPコンテンツでファンのみなさんが楽しんでくれているのです」

たいていの人は、受動的に音楽を消費している。新しい流行が生まれるとそれに飛びつき、自分が共感できる音楽に自然と吸い寄せられていく。だがKENZIEには、そんな贅沢は許されない。彼女は、まだ存在しないサウンドを追い求め、新しい方向性を取り入れながら仕事に取り組まなければならない。そうすることで、リスナーの心を動かしたいと願っている。それは決して簡単なことではないが、KENZIEは確信に満ちている。「個人的には、あまり流行についてあれこれ考えないようにしています。その代わり、自分らしさを保ちながら、内面からオリジナルな何かを引き出そうとしています」と彼女は言う。「現在のプランや世間でどんな音楽が流行っているかはわかりません。私は、アーティストひとりひとりのスタイルや個性、性格をベースに仕事をするので、こうした要素には気を配るようにしています。作業中は、とにかく集中しています。呼吸に似ていますね。息をしている時は、何を吸い込んでいるかなんて考えませんよね?」

この先、どんな未来が待ち受けているかはわからない。だが、こうした環境でKENZIEは最大の力を発揮する。周囲の期待に縛られず、自らのペースで自由に動くことができるのだ。「頭のなかはアイデアでいっぱいです。でも、時間が足りません」とKENZIEは冗談っぽく言う。「韓国のエンターテインメント業界がグローバルレベルでの盛り上がりを見せるいま、もしチャンスがあれば、K-POPコンテンツクリエイターとして海外のプロジェクトにもっと参加したいです。とりわけ、世界中で公開される映画やドラマのサントラづくりには興味があります」。それでもKENZIEが抱く野望はいたってシンプルで、音楽チャートや予想された未来とは無縁だ。「もし、私の音楽が誰かにいろんな感情を想起させ、その人の人生のサウンドトラックになったとしたら、これ以上幸せでありがたいことはありません」

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from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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