フジロック総括 「洋楽フェス」復活の熱狂、浮き彫りになった新たな課題

2日目・7月30日(土)

この日のGREEN STAGEヘッドライナーはジャック・ホワイト。過去にはザ・ホワイト・ストライプスとザ・ラカンターズ、ソロ名義でフジ出演、デッド・ウェザーのメンバーとしても来日経験があり、今回のフジロック前にはテレビ出演でも話題となった現行ロックシーンのスターである。今年は『Fear of the Dawn』、『Entering Heaven Alive』という2作のソロアルバムを発表してのフジ出演。辣腕バンドの演奏も凄まじいのだが、それが霞んでしまうくらい、キャリアを広く見渡す選曲の、多彩で逐一刺激的なジャックのギタープレイが強烈だ。「Taking Me Back」にしても、リスナーと真っ向対峙する武装としてのギターが響き渡る。有難い恩恵のみならず、ときには畏怖さえもたらすジャックは、まさに神としてそこに君臨していた。高度な演奏技術を追い越してしまう気迫が、確かにそのサウンドに宿っていたのだ。


ジャック・ホワイト

インド出身のスラッシュメタル/ラップ・ミクスチャー・バンドであるBLOODYWOODは、ボーカル2人のドスの効いた煽りも手伝って、絶好の目覚ましアクトであった。訛りのあるスクリームやラップはそのまま彼らのアイデンティティを表出させ、何しろメンバー全員の面構えがすこぶる格好いい。出身や表現スタイルは違えど、前日のTHE HUと共通するロックバンドの魅力を溢れ出させていた。UKの人気バンドであり、ここ数年の間に傑作アルバムを量産してきたフォールズは、まさにその収穫期を迎えているかのような充実のライブを繰り広げる。ポストパンク/ダンスロックを起点にキャリアを重ねて15年以上、視覚的な演出こそ皆無だが、音の華やかさだけで広大なライブ空間を満たしてしまう。序盤にロックなアタック感を見せておいて、恍惚のダンスタイムに持ち込み、熱狂のジャムで締め括るという流れも鉄壁であった。


フォールズ

日本のバンドマンたちとも縁深い台湾のFire EX.(滅火器)は、エモーショナル・ハードコアから骨太なビッグメロディまで、懐の深いライブを披露。終盤にはTOSHI-LOW(BRAHMAN / OAU)もボーカルでゲスト参加し、母国の英雄であるFire EX.の功績を称えた。USの若手シンガーソングライターであるスネイル・メイルは、オアシスの初期バンドロゴと「Live Forever」の文字が描かれたTシャツ姿で登場。ポストグランジ的なダウナーなメロディと、伸びやかで風通しの良いメロディを自由に行き来する、地域性を突破した現代的なソングライティングの幅が持ち味だが、それ以上に力強く艶のある歌声が成長の証を刻みつけていた。


Cornelius

RED MARQUEEを早々に入場規制にしてしまったアーロ・パークスは、民族的/セクシュアリティのバックグラウンドを文学的に落とし込んだ表現で注目を集めてきたアーティストだが、シャーデーを彷彿とさせる優美にしてキュートな音楽性がライブエリアを一息に包み込む。まるでRED MARQUEEが丸ごとアーロと恋に落ちるような体験であった。そして、WHITE STAGEのトリを飾ったのはライブ活動復帰のCornelius。終盤しか観ることができなかったけれども、徹底してCorneliusでしかあり得ない美意識に物言わせるパフォーマンスは、「Star Fruits Surf Rider」や「あなたがいるなら」まで、絶大な説得力に満ち満ちていた。

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