DJプレミアが語る、どれだけ時代が変わってもヒップホップが愛され続ける理由

ギャング・スターについて

ーラップというのは、ワインに似ていますね。良いものもあれば悪いものもあります。それがどこで作られたかは、作品の良し悪しとは無関係です。

見知らぬ町で作られたワインがあったとしよう。ボトルの見た目は悪いかもしれない。でも、それが最高なんだ。自分がギャング・スターのメンバーであることは、いままで俺にとってロゴのようなものだった。「ギャング・スター」という言葉を見れば、誰もがそれが何を意味しているかをわかってくれた。俺は、自分が携わるすべてのことを通じて存在し続けたいと思っている。

ーギャング・スターでふたつのスタイルを結びつけた時のことについて聞かせてください。

繰り返しになるけど、DJとして聴いても、ギャング・スターのサウンドは素晴らしい。でも、誰もがこういう耳を持っているわけではない。俺は何事に対しても批判的だから、こうした能力を与えられたことに感謝している。俺はいつも、「グールーの心と連結する」と言っていた。グールーがどこでキメてくれるかもわかっていれば、期待していたところでキメてくれなくても、それはそれで想定内だ。どんなスーツを着れば相手が最高にカッコよく見えるかもわかっているし、どんな時にもう少し細身のものが必要かも俺にはわかるんだ。

ーギャング・スターの絶頂期に不安を抱えていたのはあなたですか? それともグールー?(※グールーは2010年に死去)

グールーだ。彼は、何かと思い悩むタイプだった。どうしてあんなにたくさんの不安を抱えていたのか、俺には理解できなかった。あまりにひどいので、もう辞めようかと思ったほどだ。『Moment of Truth』(1998年)の制作を途中で放り出したこともあった。でも、あのアルバムから顔を背けることなんてできなかった。そのおかげで、グールーがどれだけこのアルバムを愛していたかを知ったよ。ギャング・スターは、グールーにとって子どものような存在なんだ。ギャング・スターが世代を超えて生き続けることを望んでいた。俺はその代理人なんだ。グールーは、ギャング・スターに対して誠実であり続けた。ニューヨークで俺と合流したのも、そのためだ。俺が加入すると言う前、グールーは軍隊に入ると言っていた。俺たちは、最高の音楽を作った。それにDJとしても、次の曲を聴いてみたかった。ビートに取り掛かる前にジェイ・Zはいつも指示をしてくれる。「俺は死ねない、俺は死ねない……」と語りかけてくるスクラッチを頼む、と言われたんだ。



ーラップの脱地域化があなたに与えた影響は?


俺はただ、自分が好きなことをやり続けてきただけだ。何かに取り組むのが好きだから。ブーンバップへの回帰によってブーンバップ・ヒップホップというジャンルが生まれるなんて、いったい誰が想像しただろう? この言葉もいまではすっかり定着している。それだけのことだ。俺としては、「大丈夫、俺はこれをやり続けるんだ」と自分に言い聞かせるだけだ。うまくいかなかったり、悩んだりする時はほかのことをやってみればいい。どのみちカネは入るんだから、と思うかもしれない。でも俺は、そんなのはごめんだ。俺は自分の知識にこだわりたいし、一貫性を保ち続けたい。それに、クリスティーナ・アギレラとも仕事をした。おかげでクリスティーナが才能あるシンガーで、一緒にヒット曲を作れることもわかった。

ーヒップホップ界のバランスは崩れてしまったのでしょうか? ヒップホップの進化という点でニューヨークは正当に評価されていると思いますか? 今日では、誰もが音楽を矮小化する傾向があると思うのですが。

この業界には、俺たちをどこまでも追いかけてくる中毒性の高さがある。こうしたアーティストが存在するのは事実だし、そこには目をつけている。たとえばの話だが、俺は昔からアイスクリームが好きだ。お気に入りは、バスキン・ロビンスのアーモンド・ファッジ。大人になっても、その上にハーシーのチョコレートソースをかけて食べるのが好きなんだ。(中略)どれだけ時代が変わっても、変わらないものはある。56歳になったいまも、時々ガキの頃とまったく同じようにチョコレートソースをかけて食べる。アイスクリームを食べるのに年齢なんて関係ないから。でも、食べ方は変わる。年をとるにつれて、食生活も変えないといけない。何事も適量が大切だ。それと同じように、文化が成長しすぎることで時代と合わなくなる、なんてことはあり得ない。俺のラジオ番組が証明している。俺はあれが大好きだ。その直後にドレイクの「Nonstop」のような曲——あの曲のアプローチは最高に気に入っている——やロディ・リッチのようなアーティストが出てくるのは素晴らしいことだ。

Translated by Shoko Natori

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