DJプレミアが語る、どれだけ時代が変わってもヒップホップが愛され続ける理由

RZAとのビートバトル

ー新しいEPのねらいは?

ディスコグラフィーに新たな作品が加わったことくらいかな。でも、ナズが参加してくれたのは、特別な意味合いを持っている。ナズのことは、彼が起業家としての道を歩みはじめた頃から知っているんだ。彼が成し遂げたことを誇りに思うよ。このEPには、いろんなアーティストに参加してもらったから、多様性が気に入っている。ラン・ザ・ジュエルズをフィーチャーした曲は、ナズのとはまったく違っている。それにナズの曲もジョーイ・バッドアスの曲とは別物だ。リル・ウェインとスリック・リックをゲストに迎えた曲もあれば、レミー・マーとラプソディーの曲もある。タイプの違うふたりのMCを組み合わせるのは、単純に最高なんじゃないかって思ったんだ。だから、彼らのいろんな表現の一部になれたのはすごく楽しかった。

ー参加しているアーティストのなかでも、特にリル・ウェインとのコラボレーションを強く望んだ理由は?

ずっと前からリルのファンだったんだ。だから、ヨーロッパで会った時に「いつかコラボしようぜ」と声をかけた。もともとは、ロジックにこの曲を歌ってもらうつもりだった。でもリルに音源を送ると、翌日に歌を入れて戻してきたんだ。感想を聞かせてくれって。それを聴いた瞬間、圧倒されたよ。突き抜けた奴だとは思っていたけど、まさかここまでとはね。



ーいままで手がけたB面曲のなかでいちばんのお気に入りは?


「The Question Remains」。とんでもない曲だってことはグールーも俺もわかっていたのに、思いもよらぬ方向に行ってしまった。1992年のアルバム『Daily Operation』に収録するつもりだったんだ。マスタリングまでさせられたよ。でも、レーベル側から「12インチシングルで十分」と言われたんだ。カセットシングルにもなっていないなんて、ひどい話だろ?

ー私もカセットテープの時代に生まれたかったです。

当時は自分たちの店で働いていたんだ。R&Bからジャズやヒップホップまで、ありとあらゆる音楽を取り揃えた大きな棚がいくつも並んでいた。だから、初めてCDが出た時のことをよく覚えている。ピッカピカの新品だ。それを見て、「スゲーな! ってかこれ、スクラッチできんのか?」と思った。でも、いまはCDでもスクラッチできる。CDをスクラッチする技術が開発されたんだ。

ー最後に、2020年にVerzuz(訳注:ヒップホッププロデューサーたちがビートバトルを繰り広げる企画)で行われたRZAとのバトルの話をしましょう。あれはヒップホップの偉大さが証明された歴史的瞬間でした。

俺は乗り気じゃなかったんだけど、D・ナイスに「しのごの言わずにインスタライブをやってみろ」と言われたんだ。俺はただスピーカーにつないで配信を見ながら家の掃除をしていただけなのに、正気かよ?と思ったね。対戦相手はピート(・ロック)のほうがいいんじゃないか?とも言った。ピートとツアーを回る時はいつもバトルをしていたし、俺たちのバトルはとにかく楽しいから。すると、D・ナイスが電話をかけ直してきて、RZAはどうだ?と言うんだ。もちろん、快諾した。ドクター・ドレーとでも喜んで対戦したけど、RZAとのバトルは望むところだったから。



ーRZAほどの好敵手はいませんからね。


RZAと俺は、同じ屋根の下で暮らしていたことがあるんだ。だから、お前がダウンしたら、俺もダウンすると言った。あの夜、俺たちは歴史を創ったんだ。息子も見ていたから、その瞬間を分かち合うことができたよ。

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from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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