スネイル・メイル×J・マスキス(ダイナソーJr) フジロックで実現した夢のオルタナ対談

 
理想のギタリスト像を語り合う

―ギターの魅力は、どんなところだと思いますか? 自分がギターを弾いているのはなぜだと思いますか?

リンジー:自分は5歳からギターを弾き始めて、最初はクラシック・ギターを習っていたんだ。自分はチームスポーツに向いてなかったから、ギターは趣味みたいなものでやっていた。ひとりでもやれる何かがよかったんだ。しかも常に何かをやっていないと気が済まなくて、練習に関しては強迫神経症(OCD)みたいな感じだったから、練習の鬼だった。音楽は昔から大好きで、ギターに魅力を感じたんと思う。ドラマーだったらひとりでは限界があると思うし。別に「ソングライターになりたい!」と思って始めたわけじゃなくて、常にギターを手にしていたから、自然に曲を書くようになったんだよね。

―Jはどうですか? なぜ、ギターを弾き続けているのですか?

J:俺は作曲するためにギターを始めた。俺の地元の街にいるギタリストたちは、俺が聴きたいような音楽を誰もやっていなかった。最初はドラムをやっていたんだけど、ドラムは他の人に教えて、演奏してもらえると思った。でも、自分が求めているようなサウンドを出してくれるギタリストは見つからなかったんだ。ジャズっぽ過ぎたり、俺の背景や嗜好を理解してくれなかったから、自分でギターをやることにしたんだ。新しい曲を書いて、新しいバンドを始めることにした。俺はハードコアのバンドでドラムをやっていたんだけど、ハードコアの時代はもう終わったような気がしたから、何か新しいことを始めよう、違うことをやろうと思ったのさ。

―今ではオルタナ界のギター・ゴッドになっていますけれど……リンジーもそう思いません?

リンジー:もちろん!

J:まあ、そうだね。

全員:(Jの複雑な表情がおかしくて)ハハハ!!!!

―実際のところ、大勢の人があなたをギター・ゴッドのように見ていることに対しては、どう思いますか?

J:そんなことは考えたことがないよ。

―違和感はありますか?

J:あるね。

リンジー:キャハハー!!

J:ハハハ。自分では、そんなこと思わないし、たとえ思っていたとしても、あまりそういうことは考えないよ。

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―ギタリストとしての自分はこうありたい、という理想はありますか? 

J:ギターの音だけを聴いて、それが誰のギターか分かるのはクールだよね。

―そのために必要なことは何ですか?

J:自分のスタイルやヴォイスを持っていることじゃないかな。自分のヴィジョンとか。

リンジー:今のJの答えはよかったね。自分は思い付かなかったけど、いい答えだと思った。自分はまだあんまり多くの音楽をリリースしていないけど、長いキャリアがあったとしたら、自分が誇りに思える音楽がたくさんあって、クールだと思える音楽があることが一番だと思う。現時点ではあまり想像できないけれど、キャリアをずっと続けていけるだけの作曲ができるということかな。答えになってる? でも、音を聴いただけで演奏者を認識することができるサウンドを持つという(Jの)考えはすごく気に入ったよ! すごくクールだな。

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―リンジーから見てJのギターは、どこがかっこいいと思いますか?

リンジー:Jみたいなギターを弾く人は他に誰もいない。すごく独創的で、かなりエモい。それが好き(笑)。メロディにフォーカスされていて、馬鹿みたいにシュレッドしまくる感じじゃなくて、すごくセンスあるシュレッドだと思う。革新的なシュレッドのやり方だと思う。自分もシュレッドに興味があるんだけど、センスがよくて、革新的なもので、自分の興味をそそるものじゃないとイヤなんだ。スティーヴィー・レイ・ヴォーンみたいのはイヤ。あ、それは撤回する。どのバンドの悪口も言ってないよ!

J:俺は(悪口を)言えるよ。俺はスティーヴィー・レイ・ヴォーンのライブを観たことがあるんだ。

リンジー:よかった?

J:まあまあかな。彼の帽子がよかった。

リンジー:ハハ、どんな帽子?

J:カウボーイ・ハットみたいなやつ。アンプがたくさんあったのがよかった。でもアンプの前にプレキシガラスが置いてあって、その意図が掴めなかった。最後の2〜3曲くらいで、彼はプレキシガラスを蹴飛ばしていたんだけど、なんでライブの最初からそうしなかったんだろうと思ったね。そのコンセプトが意味不明だった。



リンジー:アンプの前にプレキシガラスが置いてあるのは見たことないな。

J:俺はあるよ。ブルースのアーティストは、時々やってる。バンドにサウンドマンがついている場合は、サウンドマンの言うことなら何でもやるのさ。「こうした方が音が良くなる」とかなんとか言われて。知らんけど。スティーヴィー・レイ・ヴォーンのライブは、まあまあだったよ。単調で全部同じに聞こえたけど。バンドも結構つまらなかった。

リンジー:想像つくわ。

J:別に悪くなかったけど、今まで観たライブの中で最高だったとかそういうのではなかったね。パンクのお客さんがたくさんいたよ。当時の彼のスタイルに魅力を感じていたんだろう。

リンジー:マジで? なんで??

J:スティーヴィー・レイ・ヴォーンの服装がかっこいいからクールだと思われていたんじゃないかな。よく分からないけど、パンク・ロックの人たちに人気だった。

リンジー:それは意外。

J:カウボーイ・ハットをかぶって、おしゃれな感じだったよ。パンク・ロックの女の子に人気だった。

リンジー:全然そういうイメージじゃなかった。

―スタイルが自分とは全然違っても、魅了されるギタリストはいますか?

J:もちろんいる。今、考えてみたけど思い付かなかった。(しばらく考えている)誰とは今、答えられないけれど、そういう人は確かにいるよ。そもそも、スタイルは人それぞれだからね。

―それも含めて、最近、魅了されたギタリストはいますか?

J:今は思い付かないな。

―リンジーは? 最近のお気に入りを教えてください。

リンジー:アレックス・Gはすごく好き。あと最近の人じゃないしギタリストでもないけれどビル・フェイの音楽も好き。

Translated by Hanako Tabata, Emi Aoki

 
 
 
 

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