クーデターの連鎖生む、対テロ軍事演習の実情 米

不透明なアフリカでの軍事活動

「アフリカ全土で行なわれている軍事活動の規模と場所の情報開示に関していえば、米政府はいつも透明性に欠いています。ですが、国防総省でさえこうした『演習』ないし『協力』活動の全貌を把握していないのです。演習などの言葉は、見たところ戦闘と何ら変わらない活動を遠回しに指すものとして頻繁に使用されています」と、ロードアイランド州ブラウン大学で「Costs of War Project(戦争のコストプロジェクト)」の共同ディレクターを務めるステファニー・サヴェル氏は本誌に語った。

22のアフリカ諸国への派遣は、米軍特殊部隊のグローバル活動の相当な割合を占める。2021年に海外派遣された特殊部隊のうち、アフリカに派遣されたのは約14%。大中東圏を除いて、アフリカは米軍の最大の派遣先なのだ。


2022年3月2日、クーデターを首謀したポールアンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐がブルキナファソの首都ワガドゥグで行われる大統領就任式の場に到着。(Photo by OLYMPIA DE MIASMONT/AFP/GETTY IMAGES)

2000年代初頭より、米軍特殊部隊はSOCAFRICAの年次特殊作戦部隊演習「フリントロック」——演習のねらいは「過激な武装集団に対抗するべく、主要パートナーの力を強化する」こと——をはじめ、あらゆる軍事演習を展開してきた。こうした活動の目的は、特殊部隊が参加し得る戦闘に備えて、地元部隊に「助言を与え、アシストし、同行する」ことだ。だが、これらはメディアの目から遠く離れた場所で、それも人知れず行なわれている。その一方で、フリントロックは透明性を謳い、大々的な広報活動を毎年行なっている。軍に好意的な一部の記者たちを選んでは、「灼熱の太陽の下」あるいは「息もできないほどの暑さ」、「サハラ砂漠の砂にまみれた演習場」、「過酷な砂漠」、「広大な灼熱の地」といった魅惑的な表現を使って、現地の兵士に向かって大声で命令する特殊部隊隊員や「不安な面持ちで隊員たちを見つめる、たくましいアフリカ人青年」、「アメリカのベテラン隊員たちから学ぶ地元部隊」を題材とした特集記事を公開しているのだ。

米軍特殊部隊の多大な努力にもかかわらず、アフリカ全土のテロ情勢は見るに堪えない状況にあるとACSSは指摘する。「アフリカにおけるイスラム過激派の暴力行為は、過去10年間で急増した。この間の増加率は300%にのぼる」と、アフリカ全土の状況をまとめた8月の報告書にはこのように記載されていた。「2019年以降、イスラム過激派と関連のある暴力行為は倍になった」

2022年のはじめに、本誌のケヴィン・マウラーはグリーンベレーに同行してニジェールで行われた軍事演習を取材した。ニジェールといえば、2017年に米軍特殊部隊がイスラム武装勢力に襲撃され、米兵4人が死亡した場所だ。「十数人の特殊部隊隊員と120人ほどのニジェール人の兵士を20万平方マイル(約52万平方キロメートル)にわたって配備したところで、イスラム国やアルカイダに味方する約2500人の兵士にどうやって対抗しろというのだろう?」とマウラーは問いかける。マウラーの疑念は、こうした数値によって裏付けられているのだ。

Translated by Shoko Natori

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