クーデターの連鎖生む、対テロ軍事演習の実情 米

クーデターに携わった者の共通点

米軍特殊部隊は、過去10年間に少なくとも13のアフリカ諸国で戦闘を行なってきたと語るのは、現役時代は准将だったドナルド・ボルドゥック氏。ボルドゥック氏は2013年から2015年までアメリカアフリカ軍(AFRICOM)で働いたのち、2017年までアフリカの特殊部隊の司令官を務めた人物だ。2021年当時、米国屈指のエリート部隊はブルキナファソ、チャド、コンゴ共和国、ケニア、マリ、モーリタニア、ニジェール、ソマリア、チュニジアの9カ国で活動していた。

2022年1月にブルキナファソで民主的に選ばれた大統領がポールアンリ・サンダオゴ・ダミバ中佐の主導する反乱によって失脚させられると、米国はブルキナファソへの支援を打ち切った。反乱を主導したダミバ中佐はAFRICOMでは名の知れた存在で、米軍主催の演習には少なくとも6回は参加しているという。2010年と2020年には、SOCAFRICAのフリントロック演習にも加わっていた。

9月末、ダミバ大統領はイブラヒム・トラオレ大尉という別の軍人のクーデターによって大統領の座を追われた。トラオレ大尉も米軍の手解きを受けていたのだろうか? そこまではわからない、とAFRICOMは言う。

「これについては、調査してから改めてご報告します」と、AFRICOMの報道官を務めるケリー・キャラハン氏は本誌に語った。「武力による政権掌握は、アメリカの軍事演習と軍事教育とは無関係です」とキャラハン氏は主張する。だが、そうなるとダミバのような存在をどう説明すればいいのだろう?


2018年、ブルキナファソの兵士たちに軍事演習を行うオーストリア出身の教官の軍服には、「フリントロック演習2018」の腕章が掲げられている。(Photo by ISSOUF SANOGO/AFP/GETTY IMAGES)

2014年には、フロリダ州のマクディル空軍基地で行われた対テロ訓練(主催者は統合特殊作戦大学)に参加したイザック・ジダという軍人がブルキナファソの政権を掌握した。2015年には、ブルキナファソの「フリントロック演習2010」委員会を率いていたジルベール・ディエンデレ司令官の軍事政権がブルキナファソの実権を握っている。2020年には、西アフリカに駐留する米軍特殊部隊と協力関係にあり、フリントロック演習や統合特殊作戦大学のセミナーにも参加していたアシミ・ゴイタ大佐がマリでクーデターを起こした。その後、ゴイタは大統領の座を辞して暫定副大統領に就いたが、2021年には2度目のクーデターを実行し、ふたたび政権を掌握。同年、ママディ・ドゥンブヤ大佐率いるギニアの特殊部隊の隊員がグリーンベレーの休暇中に大統領官邸を襲撃し、83歳のアルファ・コンデ大統領を失脚させた。その直後、ドゥンブヤはギニアの暫定大統領に就任した。

SOCAFRICAのフリントロック演習は、反乱の主導者の養成機関などではない。だが、近年アフリカでクーデターを実行した者の多くは、この演習に参加しているのだ。演習に2回だけ参加した軍人たちが、2015年以降5回のクーデターに関わっている。ブルキナファソのディエンデレとダミバが「フリントロック演習2010」に参加していた一方、AFRICOMが本誌に伝えたところによると、ギニアのドゥンブヤとマリのゴイタは、「フリントロック演習2019」に参加していた。「民主主義が脆弱な国にこのような軍事演習を提供することにはデメリットもあります。こうしたデメリットについて、私たちは誠実に語り合う場をいままでもってきませんでした」とサヴェル氏は話す。「それと同時に、私たちが関わっているすべての演習や人権侵害の教唆を防ぐための活動に関する情報公開も十分ではありません」

Translated by Shoko Natori

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