クーデターの連鎖生む、対テロ軍事演習の実情 米

スンニ派過激組織に殺害された米兵

2019年以降、サヘル地域西部におけるイスラム過激派の暴力行為は4倍に増加した。この1年間にこの地域で起きた襲撃は2612件。この数は、危険な国として知られるソマリアを超える。ACSSによると死亡者数は7052で、そのうちの約半分はこうした暴力行為によって命を落としたという。犠牲者の25%が民間人で、その数は2021年と比べて67%も増加している。

それと並行して、西アフリカ地域で活動する兵士たち——米軍特殊部隊の助言と手解きを受けている——は、米国が樹立しようとする政府を次々と転覆させている。2020年以降、フリントロック演習の参加者によって4回のクーデターが起きているのだ。SOCAFRICAの司令官を務めるミルトン・“ジェイミー”・サンズ海軍少将は、これは米国の責任でもなければ、米国にはそれを防ぐ術もないと本誌に語る。その一方でサンズ氏は、クーデターの原因は、国民の意志を抑圧しようとする政府への不満だと示唆した。

「セキュリティ対策の欠如と人員配備の不備、そこに一部地域の政府に対する国民の不信感が加わることで、政府は国民の信用を失います。その結果、国民はクーデターや(中略)ブルキナファソで起きた(中略)反乱のようなものを起こそうと決意するのです」と、サンズ氏は1月にブルキナファソで起きた政変に言及した。この政変により、ブルキナファソのダミバ大統領が失脚した。

2001年9月11日の米同時テロ事件後、国防総省はアフリカでの軍事活動を強化し、西はセネガルから東はケニアまで、北はチュニジアから南はガボンまでと、アフリカ北部全域に前哨部隊を配備した。リビアやソマリアでは何百ものドローン攻撃を実施しただけでなく、アフリカ全域で奇襲や演習も行なっている。

ソマリアの例を見てみよう。オバマ政権下では、8年間に37件の空爆が行われたと言われている。それに対し、英国を拠点とする空襲モニタリンググループのAirwarsが集めたデータによると、トランプ政権下では、4年間でその数は205件まで急増した。バイデン政権下では、少なくとも11件の空爆が行われている。空爆のほとんどは、ソマリアの中部と南部の70%を掌握しているスンニ派過激組織「アル・シャバーブ」をねらったものだ。ソマリアの面積は63万8000平方キロメートル。テキサス州と同じくらいだ。

「今後数週間ないし数カ月間かけて、アメリカ軍はアフリカ国内での再配備を行い、ソマリアに再駐留する」と、6月にバイデン大統領は国会で発表した。これによって、トランプ氏が政権末期に命じたソマリアからの撤退から逆行するように、最終的には約450人規模の米軍部隊が派遣されることになる。「アメリカ軍は、ソマリアの地元部隊を育成し、助言し、援助するために定期的に活動を行なっている。テロ対策の一環として行なわれているソマリアでのアフリカ連合ソマリア・ミッションもそのひとつだ」とバイデン大統領は述べた。

だが、こうした「活動」と実際の戦闘はいったい何が違うのだろうか? 2017年5月、ネイビーシールズのカイル・ミリケン隊員は、ソマリア部隊に「助言を与え、アシストし、同行する」ための活動の最中にアル・シャバーブのメンバーに殺害された。2018年には、米軍特殊部隊に所属していたアレックス・コンラッド隊員がソマリアの銃撃戦で命を落とした。2022年の初頭には、陸軍第20特殊部隊に配属された米兵がマリで追撃砲に攻撃されて負傷している。

Translated by Shoko Natori

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