クイアを主人公にした青春ドラマが人気、出演者が抱える「苦悩」

次回作『Cuban Girl’s Guide to Tea and Tomorrow』の第一報が出ると、コナーは「ばかばかしい」とTwitterからしばらく距離を置いた。だがそれでも騒ぎは続き、しまいには、コナーにカミングアウトするか、またはゲイでないなら『HEARTSTOPPER ハートストッパー』を降板するかの二択を迫る声も聞かれた。

「彼はバイセクシャルなの?」とは、あるユーザーのツイートだ。「ストレートの役者が非ストレートの役を演じるのはもうたくさん。せめてバイの役者を探してよ、そんなに難しくないでしょうに」「ちょっと落ち着いて」と、ついにコナーも10月最終週にツイートした。「僕はバイだ。18歳の青年に無理やりカミングアウトさせたみなさん、おめでとう。番組の本質を見誤っている人もいるようだ。じゃあね」

「なんちゃってクイア(queerbaiting)」にまつわる今回の騒動が、人気メディアに対する警戒心から来ているのは間違いない。この言葉は2000代初期から、TVドラマやインターネットのファン層を中心に商業的に使われるようになった。ちょうどTV番組や映画がクイアの恋愛関係をにおわせて観客を惹きつけ、ふたを開けると違ったということが頻繁に行われていた時期だ。映画製作者のレオ・エレーラ氏が以前ローリングストーン誌とのインタビューで語ったように、「セレブや有名人が売名行為や宣伝目的や金儲けのために、同性と恋愛関係にあるような疑惑をまいて得をすること」もなんちゃってクイアに相当する。自分たちを代弁しているかもしれないという淡い期待を抱かせてファンの心をつなぎとめ、結局はメインストリームでの名声と引きかえにファンを見捨てる。それが「なんちゃってクイア」だ。

だが、『HEARTSTOPPER ハートストッパー』が10倍返しを約束したことは一度もない。番組はクイアをコンセプトにして、期待していた以上に原作のクイアの表現と重要な場面を忠実に描いた。「これは僕たちのための番組だ。今まで描かれなかった僕らの声を代弁している」と、コナーもGQ誌に語っている。自分なりのタイミングでセクシュアリティを理解すればいい、と10代の若者を励まし、「心の準備ができるまではカミングアウトしなくてもいいんだよ」というセリフまであるドラマなのに、その主人公がこれほど乱暴に世間から疑問視されることになるとは、二重の意味で皮肉だ。

コナーのカミングアウトを受け、共演者や友人はこぞって彼の支援に回り、愛と声援を送った。だが今後若い俳優が、心の準備ができる前にキャリアとカミングアウトの板挟みにされることは容易に想像できる。そこで考えてみてほしい。勇気を出して自分の物語を代弁してくれる人々に対し、これが最善の対応といえるだろうか?

From:We Failed ‘Heartstopper’ Star Kit Connor. Let’s Make Sure It Doesn’t Happen Again

Translated by Akiko Kato

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