歌舞伎町に集った若者たちの退廃的な革命、ヒップホップフェス「BADASSVIBES presents TOKYO KIDS」総括

「BADASSVIBES presents TOKYO KIDS」

約60組が一同に会したヒップホップサーキットフェス「BADASSVIBES presents TOKYO KIDS」が2022年10月28日、新宿・WARP SHINJUKUとFACEの2会場、3エリアで開催された。書籍『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』が話題の文筆家・ライター、つやちゃんによるレポートをお届けする。

ヒップホップがユース層のハートにリアリティをもって響く様子が刻まれたイベント

2022年は、国内ヒップホップの勢いがフェスやイベントという形になり拡大した元年として後に記憶されるだろう。ベテラン勢を集めた1月のDIAMOND FESに始まり、大阪で開催された3月のGrooving Jam、次世代フェスのスタンダードを提示することに成功した5月のPOP YOURS、神戸に様々なクルーが集結した同じく5月のKOBE MELLOW CRUISE 2022、レッドブルが東京タワー真下で開催した6月のRed Bull Tokyo Unlocked、AVYSSのサーキットイベントとして多彩なジャンルのクロスオーバーを切り取った9月のAVYSS Circle、「ラップスタア誕生!」関連とギャングスタ系が集った10月のTHE HOPE……と、実に多くの場所で様々なラッパーやDJが魅力的なステージを繰り広げてきた。そして今回、WARP SHINJUKUとSHINJUKU FACEで開催されたサーキットイベントがBADASSVIBES TOKYOKIDSだ。ヒップホップがカルチャーとして根づき、時にポップな音楽としてユース層のハートにリアリティをもって響いていること――そのヒリヒリした盛り上がりを近年最も肌で感じた、忘れられないイベントとなった。



BADASSVIBES TOKYOKIDSがイベント開催にあたり選んだ場所は、新宿。ヒップホップにおける新宿というと、まずは真っ先にMSCや漢 a.k.a GAMI、9SARI GROUPといったハードコアなラッパーやレーベルが思い浮かぶだろう。ただ、近年では歌舞伎町にたむろする10代を中心とした文化圏に、ダンス/EDMやロックとクロスオーバーした新生代のヒップホップがゆるやかな形で聴かれている現状もある。歌舞伎町といってもその文化圏はTikTokをハブとしながら全国各地に聖地を持ち、鬱屈とした感情を、ビートの高揚感とラップの解放感に託す者たちで構成されている。この日、2つの会場に挟まれたシネシティ広場、別名いわゆる「トー横広場」にはそれら2つのコミュニティが入り乱れ、異様な空気を醸し出していた。特に、会場誘導のごたつきがやや見られた18時前は長蛇の列により若者があふれ、皆がそれぞれにお目当てのラッパーを観ることができるかガヤガヤと話している。圧倒的な頻度で耳にしたのは、STARKIDSとJUBEE、Jin Dogg、そしてRYKEY DADDY DIRTY。ストリーミングの再生数からは見えてこない、今の10代に熱狂的に支持されているラッパーたちのリアルが垣間見える。

私も例に漏れず長蛇の列に巻き込まれてしまったため期待していたWatson(間違いなく今年最も活躍しているラッパーの一人だ)はじめ16~17時台のステージを観ることはできなかったが、確認できた18時台以降は、主にオーセンティックなラッパーが並んだSHINJUKU FACE、クロスオーバー中心の新世代ラッパーが並んだWARP SHINJUKUともに盛大に盛り上がっていた。

Rolling Stone Japan 編集部

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