ローリングストーン誌が選ぶ、2022年の年間ベスト・ホラー・ムービー10選

5位『MEN 同じ顔の男たち
12/9より全国劇場公開中

A24



アレックス・ガーランド監督は、『MEN 同じ顔の男たち』によって男性の悪しき行い——ここで改めて“男性の”という点を強調したい——を寓意的に表現している。本作が公開されると、敵意に満ちたコメントが噴出した。それでも私たちは、本作が過去12カ月にわたってもっとも不当に評価されてきたホラー映画であることを慎ましやかに訴えたい。本作がここで取りあげられるのは、当然のことなのだ。主人公は、夫を亡くしたばかりのハーパー(ジェシー・バックリー)という女性。ハーパーは夫の死を悼み、心の傷を癒すためにイギリスの田舎街を訪れる。ある日、散歩をしていた彼女は、不審な裸の人物の存在に気づく。その人物は、彼女の後をつけているようだ。ハーパーは警官に助けを求めるが、警官はそれほど力になってくれない。それも警官だけでなく、彼女がこの街で出会うすべての男性が非協力的なのだ。ストーリーが進むにつれて、オーディエンスはガーランド監督の意図に気付きはじめる。体系立てられた女性嫌悪という展開が明確になるにつれて、その不穏さも募る。それは幻覚の領域に足を踏み入れるラストにおいてもっとも強く感じられる。ここでは、バックリーと共演者のロリー・キニアはもちろん、VFXチームの見事な仕事に拍手を贈りたい。トラウマになるほどショッキングな作品だ。

4位『Speak No Evil(英題、原題:Gæsterne)』

SHUDDER



デンマーク人の父親(モルテン・ブリアン)と母親(シゼル・スィーム・コッホ)、そして幼い娘(リヴァ・フォシュベリ)の3人家族がイタリアのトスカーナ地方でバカンスを楽しんでいた。滞在先の別荘で、一家はオランダ人の3人家族と知り合う。父親(フェジャ・ファン・フェット)は誰よりも社交的で、妻(カリナ・スムルデルス)も親切でオープンな性格のようだ。だが不思議なことに、息子は一向に話そうとしない。両親は、先天的な異常が原因で息子はしゃべることができないと言う。その数カ月後、デンマーク人一家は、森の奥深くにあるオランダ人一家の自宅に招待される……。シンプルな前置きとともに、クリスチャン・タフドルップ監督は中産階級の家族を地獄のような恐怖体験へと誘う。ここには、悲鳴以外のありとあらゆる恐怖描写がある。その理由は、最後にタイトルの意味を知った人だけに明かされる。抜群に後味の悪い、新しいユーロホラー映画の世界へようこそ。

3位『バーバリアン
デジタル配信中

20TH CENTURY STUDIOS



2022年の意外すぎるヒット映画は、俳優から映画監督に転身したザック・クレッガーの『バーバリアン』だ。知的で面白おかしいだけでなく、必要な場面で背筋の凍る恐怖体験を味わわせてくれる、禁断の地下室をめぐる昔ながらのストーリーをきわめて過激に描いた本作は、公開当初はまったく話題にならなかった(劇場公開直後の1週間は興行収入ランキングで1位に輝いたが、これはたまたま夏の終わりの新作映画のない時期に公開されたおかげ)。その後、徐々に口コミで評判が広がり、ついには普段ホラー映画にあまり関心のない人の耳にも届いた。ある日、テスという女性(ジョージナ・キャンベル)があまり治安の良くないエリアにある民泊を予約する。そこを訪れると、ダブルブッキングによってすでに男の先客(ビル・スカルスガルド)がいた。他に行くあてもないため、テスは仕方なくその男と宿泊することに。すると、真夜中に不審な物音で目を覚まし……。次の展開が見えたと思った瞬間、本作は思いもよらない方向へ進んでいくのだ。クレッガー監督の次回作が待ち遠しい!

Translated by Shoko Natori

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE