ローリングストーン誌が選ぶ、2022年の年間ベスト・ホラー・ムービー10選

2位『プレデター ザ・プレイ
Disney+にて視聴可能

DAVID BUKACH



ここでまったく異色な作品を紹介しよう。ダン・トラクテンバーグ監督が放つ「プレデター」シリーズ最新作『プレデター ザ・プレイ』は、絶大な人気を誇る同シリーズの世界観をただ拡大するだけの作品もなければ、知的なアプローチによる回り道でもない。本作はどちらかというとB級映画の最高傑作と呼ぶに近い、サバイバル、スリラー、スラッシャー、プロトウエスタン、ファイナル・ガールの要素がすべて盛り込まれた作品だ。アイコニックなエイリアンとそれを追うネイティブ・アメリカンの部族を描いた本作は、製作陣の狙い通りの見事な作品に仕上がっている。宇宙でもっとも危険な戦士プレデターを1719年のコマンチ族の世界に送り込むことで、本作はフラッシュバック(“新世界”から襲来する、ありとあらゆる形態の侵略者との類似点を引き出して比較していることは言うまでもない)を駆使しながら「プレデター」シリーズに新しい命を吹き込み、アンバー・ミッドサンダー扮するナルという最高峰のアクションヒロインを生み出した。それだけでなく、アーマーにどくろを加えたことでプレデターの不気味さがより一層引き立つ。壮絶なチェイスシーンも必見。文句なしに100点満点の作品だ。

1位『X エックス
2022年夏、公開終了。各社配信などで視聴可能。

CHRISTOPHER MOSS/A24



タイ・ウェスト監督がノスタルジックな作品に挑んだのは、何も今回が初めてではない。カルト的な人気を博した2009年の映画『The House of the Devil(原題)』は——悪魔崇拝を想起させる描写が特徴的——80年代のホラー映画の世界観を見事に表現している。だがそれ以上に、倦怠感漂う70年代のグラインドハウスで上映されていたような定番のB級映画をミックスした『X エックス』は、ありし日のホラー映画へのオマージュというよりは、忘れられた骨董品に近いかもしれない。トビー・フーパー監督の名作『悪魔のいけにえ』(1974)のリメイクである『テキサス・チェーンソー』(2003)にオマージュを捧げる作品は数えきれないほど存在するが、もし本作が『テキサス・チェーンソー』と同時期に公開されたのであれば、最高のダブルビルが実現したと思わずにはいられないような素晴らしい作品だ。映画の舞台は1979年のアメリカ・テキサス州。ある日、3組のカップルが人里離れた農場を訪れる。彼らの目的は、ここでポルノ映画を撮影して大金を手に入れること。だがそこには、彼らに敵意のようなもの向ける信心深い老夫婦が待ち受けていた。ミア・ゴス扮するヒロインのひとりが老人の妻と目が合った瞬間から、凄惨な事件が次々と起きる。

本作を通じてウェスト監督は、過去の名作ホラーの荒削りなグランジ感を自然に表現する一方で、ヘッドライトや血糊を駆使した惚れ惚れするようなシーンでオーディエンスを楽しませてくれる(ここまでグロテスクで魅惑的な描写は、「ハンニバル」の初期シリーズを最後に観たことがない)。さらにウェスト監督は、自らのレパートリーにある意外な要素をプラスした(それも恐怖の要素を節約することなく)。その要素とは、抑圧された者の復讐という要素をさらに盛り上げる、エモーショナルな共感性だ。さらに監督は、ミア・ゴスという新しい絶叫クイーンを発掘しただけでなく、優れたコラボレーターを手に入れたのだ。本作と本作のプリクエル(前日譚)である『Pearl(原題)』(ミアとウェストが共同で脚本を執筆)では、殺戮が繰り広げられる間も鋭い性格描写が展開される。セックスと暴力によってアドレナリンが放出された後、私たちは本作を通じて恐ろしい衝動と芸術的手腕が溶け合う瞬間を目撃したことに気付かされる。

Translated by Shoko Natori

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