XTCのテリー・チェンバースが明かす、名曲を支えたドラム秘話と「EXTC」結成の真意

ドラマーとしてのルーツ、楽曲ファーストの姿勢

―EXTCのライブでもう一つ感激したのは、テリーさんの叩くドラムが、XTCの音源や映像でずっと親しんできた演奏そのものだったことです。「本物だ!」と思いました。

テリー:(微笑む)


Photo by Brian K. Kreuser

―ご自身の演奏スタイルについて、どのような特徴があるとお考えですか?

テリー:若い頃の僕は、好きなドラマーたちだけに耳を傾けてきた。イアン・ペイス(ディープ・パープル)、ビル・ブルーフォード(イエス/キング・クリムゾン)、アラン・ホワイト(イエス)、サイモン・カーク(フリー/バッド・カンパニー)、ブライアン・ダウニー(シン・リジィ)といった人たちに感銘を受けてきたけど、彼らにだって聴きながら学んだ人たちがいることを知り、もっと昔の人たちを深掘りしていったんだ。バディ・リッチ、ルイ・ベルソン、ケニー・クレアといったジャズのプレイヤーたちはもちろんだし、ハル・ブレインのようなレッキング・クルーやモータウンも今は聴いてるけど、子供の頃は彼らを知る由もなかった(笑)。僕のヒーローたちは必ずこういった昔の人たちのことをインタビューで話していて、歴史を学ぶような気分だったよ。僕のスタイルは誰もがそうであるように、こういった人たちから少しずつもらって出来上がっているんだ。

―具体的に、どういった影響を受けてきたのでしょう?

テリー:それぞれから様々なことを頂いているよ。イアン・ペイスとブライアン・ダウニーは似たようなところがあるドラマーで、彼らは規則的でタイトなロールが特徴的だ。サイモン・カークのプレスロールは素晴らしくて、僕はあそこまで上手く叩けない。ビル・ブルーフォードとアラン・ホワイトのドラムはオーケストレーションを意識していて、とてもオリジナリティに溢れている。

その一方で、アンディ(・パートリッジ)は僕らを他のバンドとは一味違うものにしたくて、「1、2、3、4!」って叩く当時のパンクバンドみたいになるのを嫌がっていた。彼はデヴィッド・ボウイに影響を受けていて、毎回異なるアルバムを作りながら進化してきたことに感銘を受けていた。ステイタス・クォーみたいにお決まりのやり方に乗り続けたバンドじゃなくて、進化していくバンドがやりたかったんだ。他にもイギー・ポップやルー・リードといった人たちも尊敬していて……ルー・リードのソフトでメロディックに歌うスタイルは独特だったよね。そんなふうに多様性や進化を重んじ、長く続けていくことを目指したんだ。パンクみたいにすぐに振り向きもされなくなった音楽とは違ってね。




―ハイハット、スネア、バスドラム、タムなどドラムキット全体で捉えたとき、どこの使い方に自分らしさが色濃く出ていると思いますか?

テリー:XTCはタムに特徴のある楽曲がいくつか存在して、今夜もプレイする「Grass」(『Skylarking』収録)ではティンパニのスティックでプレイしている。基本的には曲に合ったドラムをプレイすることが重要で、オリジナルの「Grass」がどうだったのか分からないし(原曲ではプレイリー・プリンスがドラムを担当)、僕は自分のバージョンをプレイするだけなんだけど、歌詞や曲が持つ雰囲気に合わせてプレイすることを心掛けている。ヘヴィでロックっぽいスネアを常に叩きたいとは思っていなくて、シンプルに音楽に合ったものをプレイしたい。僕のスタイルっていうのはバンドのメンバーと話し合って培ってきたものだし、『Black Sea』の「Travels in Nihilon」でプレイしているドラムはかなりトライバルだけど、それも曲に見合ったものをプレイしているんだ。




―ハイハットについてはいかがでしょう。「Burning with Optimism’s Flames」での刻みもそうですし、『Drums & Wires』にも特徴的なプレイが収録されている印象です。

テリー:「Making Plans for Nigel」みたいな曲だよね? ジョン・レッキーと一緒に作った最初のアルバム2作はグッドだったけど、ヴァージン・レコードはそこからヒットシングルは生まれなかったと判断していた。僕らが3枚目のアルバムを作る段階で、野球でいえば三振目前の状態だと考えられていたんだ。僕らはアルバム6枚分の契約をしていたけど、どうしてもここでヒットシングルを出さなければならないと彼らは考えていたから、プロデューサーを変えてみることを提案してきた。

当初はかつて僕らのシングル(「This Is Pop」のシングル・バージョン)を手がけてくれたマット・ランジをプロデューサーとして迎えるべきだと考えたけど、彼はAC/DC『Back in Black』やデフ・レパード『Pyromania』を手がけるのに忙しくて、他の人に声をかけるしかなかった。そこで僕は、ウルトラヴォックスの1stアルバム(『Ultravox!』)におけるスティーヴ・リリーホワイトの仕事ぶりにグッと来ていたから、彼とやってみるべきだと提案した。するとみんな納得してくれたし、スティーヴ本人も興味を持ってくれた。

僕らはマナー・スタジオで録音することになり、そこでハウスエンジニアとして活躍していたのが、幸運なことにヒュー・パジャムだった。これは偶然の巡り合わせとしか言いようがないんだけど、他のエンジニアのスケジュールとは全く合わなかったうえに、それまで2人は面識がなかったらしい。ヒューはスタジオの特性をよく知っていたから、ドラムサウンドを作るうえで大きな力になって、ビッグでラブリーなサウンドを作ってくれた。

「Making Plans for Nigel」のドラムパターンは、実をいうとかなりシンプルで、ある意味ちょっと退屈なところもあった。だから、ドラムのサウンドを軽く弄っているんだ。ハイハットの鳴り方とか、スネアに対する位置関係が普通と違うように聴こえるよね。基本的には、あのリズムを維持しながら面白いことをしようというアイディアだったんだ。



―「Making Plans for Nigel」のリズムは、Devoの「Satisfaction」から影響を受けたそうですね。

テリー:そう、本当にその通りなんだよ。アンディはクラフトワークやDevo、CANをすごく気に入っていて、彼らに敬意を払ってちょっと頂いてみようということになった。だから、彼らから少しずつ拝借しているという感じだね。ビートルズやローリング・ストーンズ、ビーチ・ボーイズに影響されている人は山ほどいるだろうけど、そういう人たちだって何かしら捻りを加えてアプローチするものだろう? それにアンディはキャプテン・ビーフハートも好きだったね。彼は王道から少し外れた、商業的成功を掴んでなくても届く人には届く音楽が好きだったから。



XTCによるキャプテン・ビーフハート「Ella Guru」のカバー

Translated by Tommy Molly

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