XTCのテリー・チェンバースが明かす、名曲を支えたドラム秘話と「EXTC」結成の真意

ゲート・リヴァーブを輝かせるために

―『Drums & Wires』『Black Sea』を手がけたスティーヴ・リリーホワイトとヒュー・パジャムが、ゲート・リヴァーブという手法を編み出し、レコーディングに取り入れていく過程を、ドラマーの立場からどのように見ていましたか?

テリー:本当にグレイトなものだと思ったし、あのテクニックを生み出してくれたことに感謝している。ただしコカコーラのレシピみたいなもので、彼らがどうやって考案したのかは僕には分からないんだ。ちなみに、コカコーラの発案者は2人いて、不測の事態に備えて絶対に飛行機に搭乗しなかったらしいね。

ヒューはのちに、ピーター・ガブリエルやフィル・コリンズのレコーディングでもゲート・リヴァーブを使っていた。ポリスはあるとき新しいプロデューサーを探していて、僕らがヒューを推薦し、そこから結果的に『Synchronicity』が生まれた。あのアルバムのドラムサウンドは、かなりヒュー・パジャム的だ。彼が考案したサウンドは専売特許となり、それはまるでフィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドのようでもあった。偶然の産物だったのかもしれないけど、ヒューとスティーヴは他のエンジニアたちと異なる、自分たちのスタイルを見出したんだ。

ヒューやスティーヴという特別な人たちと仕事ができたことを、僕は光栄に思っている。ただ、彼らはXTCと組んだことで一切儲からなかっただろうね。スティーヴが儲かるようになったのは、U2と組んでからだろうしさ(笑)。


1980年に英BBCで放送されたドキュメンタリー番組『XTC At The Manor』。マナー・スタジオでの「Towers of London」レコーディングの様子を、バンド一同やスティーヴ・リリーホワイトを交えて再現したもの。

―ゲート・リヴァーブを効かせるなら、リズムそのものはシンプルなほうがよさそうですよね。そういう意味で「Respectable Street」や「Sgt. Rock (Is Going to Help Me)」といった曲はシンプルなリズムだけど退屈にさせない、ドラマーとしての矜持が感じられます。

テリー:その通り。スペースを十分に含んだドラムでないと上手くいかないんだ。フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドにもそういうところがあって、彼のサウンドってボーカルとスネアだけのようにも感じるだろう? 他の楽器、特にギターなんてミックスの後方で鳴っている感じだ。ビッグなサウンドのドラムなら、素早く小刻みに叩くようなパターンっていうのは必要なくて、「ドン!」って叩いたらその余韻が続くようなものが効果的だ。そうすることによってギターサウンドもより映えるし、互いに邪魔をしなくなるんだ。それに同じ周波帯で鳴ってしまうと、明瞭さを欠いたサウンドになってしまう。ドラム、ベース、キーボード、ギターの定位もよく考えてアサインすることで、それらの違いも際立ってくる。

ビッグなサウンドで忙しくプレイすると、ただグチャグチャにしかならない。シンプルなリズムをプレイするからこそビッグなサウンドが活きるわけだし、逆にビジーなリズムを叩くならタイトなサウンドが必要になってくる。例えば、ビル・ブルーフォードは忙しく様々なプレイをしているけど、それはビッグなサウンドにはなっていない。僕はそれに対して、スペースを残すことでビッグなサウンドにさせてきたんだ。




―EXTCのライブでも、『Black Sea』そのままのドラムが鳴っていて驚きました。どうやって再現したのでしょう?

テリー:今回のサウンドエンジニアは日本のスタッフだったんだけど、彼はグッドな仕事をしてくれた。ひょっとしたら、アルバムを事前に聴いたうえで最大限の仕事をしてくれたんじゃないかな。ドラムキットもこっちでレンタルしたもので、The Mayflowersのドラマーと同じものをシェアしたんだ。結局は何をどうプレイするかにかかっていると思うし、チューニングに関しても特別なことはしなかったよ。もし君が言う通りのサウンドになっていたのなら、それだけ(演奏とエンジニアリングが)グッドだったということだね(笑)。

>>>【後編を読む】XTC再結成の可能性は? テリー・チェンバースが語るバンド結成時と脱退後の記憶




EXTC
Facebook:https://www.facebook.com/groups/EXTCBand/
公式サイト:https://extc.band/

※テリーは取材後、「EXTCのFacebookページを記事中で紹介してほしい」と強く希望していた。興味をもった方は上記URLより公式グループに参加してほしい。

Translated by Tommy Molly

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