16歳のトランス女性刺殺事件、追悼集会で怒りと悲しみが噴出 英

アイルランドのダブリンで行われた集会に設置されたブリアナ・ジャイさんの写真(ARTUR WIDAK/NURPHOTO/GETTY IMAGES)

16歳のトランスジェンダーの少女ブリアナ・ジャイさんが2023年2月11日、イングランド北西部チェシャー県クルチェス市内のウォリントン・パーク内で刺殺され、警察は15歳の若者2人を殺人容疑で逮捕した。トランスジェンダーの権利がかつてないほど危機にさらされている中、この痛ましい死をきっかけにイギリスでは怒りと悲しみが噴出している。

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16歳のロシェルさんは、イギリスのメディアが友人のブリアナ・ジャイさんを出生時の名前で呼ぶのを耳にし、泣き出した。トランスジェンダーだとカミングアウトした時に捨てた名前で彼女を呼ぶなんて、なぜメディアは失礼な態度を取るのだろう? ジャイさんにメッセージを送ろうと、ロシェルさんは携帯を手にした……が、それが無理なことを思い出した。16歳のTikTokユーザーが殺害されて、まだ1週間も経っていなかったのだ。「彼女と電話するのはセラピーのようなものでした」とローリングストーン誌に語るドイツ人のティーンエイジャーは、生前のジャイさんから送られたTikTokを見せてくれた。すらっとした赤毛の女性が丸メガネと学校の制服姿で、Current Joysの歌に合わせて「ああ、私はまだ子どもなの……」と口パクしている。

いまや世界的に知られる存在となったジャイさんだが――イギリスで行われた追悼集会は事実上トランスジェンダーの権利を訴える集会と化した――実際の彼女は、ネットを中心に知り合った友人から愛され、実生活では自分らしさを隠そうとしなかったがためにいじめを受けていた若者だった。ロシェルさんはジャイさんを「姉妹のような存在」と言う。大のゲーム好きで――それもロブロックスとマインクラフト――好きな色は「間違いなくピンクね」。すでに削除された彼女のTikTokアカウントでも、よくピンクを着ていたから間違いない(ロシェルさんはジャイさんと直接会ったことはないが、彼女の写真を保存していた)。ミニスカートとメイクが大好きだった。やはりネット友だったロンドンのヴィヴィアンさんが言うには、歯に衣着せぬ鋭いユーモアのセンスの持ち主で、決して自分を恥じることがなかった。「トランスジェンダーであることを誇りにしていました」とヴィヴィアンさんはローリングストーン誌に語った。「そのことをとても大事にしていました。超がつくほどのフェミニストで、すごく美人で、世間からどう思われるかなんてちっとも気にしていませんでした」。

「ようするに、彼女はごく普通の16歳の女の子だったんです」と、別の友人のケンジーさん(20歳)も言う。「たくさんの可能性を秘めていたのに、あんな目に遭うなんて」。

Akiko Kato

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