永瀬正敏が語る、信じる道を歩き続けてきた男の美学

Rolling Stone Japan vol.22掲載/Coffee & Cigarettes 43| 永瀬正敏(Photo = Mitsuru Nishimura)

音楽、文芸、映画。長年にわたって芸術の分野で表現し続ける者たち。本業も趣味も自分流のスタイルで楽しむ、そんな彼らの「大人のこだわり」にフォーカスしたRolling Stone Japanの連載。日本を代表する俳優、永瀬正敏のルーツにあるパンクの原体験、そして役者としての力量がクロスオーバーした映画『GOLDFISH』。亜無亜危異のギタリスト、藤沼伸一が自身のすべてをモチーフにしたという本作で、永瀬は何を感じたのか?

「ジム(・ジャームッシュ)は撮影の合間に、映画に出演している俳優さんと『コーヒー&シガレッツ』を撮っていて、それを上映はしていなかったんです。ジムはそのビデオを、メッセージもつけて僕の誕生日にプレゼントしてくれました。“これはよっぽどのやつにしか見せねえぞ!”と思ってたんですけど、いつの間にか上映されてDVDも出た(笑)。でも、もらったビデオは今でも宝物です」

このコーナーのタイトルがジャームッシュの映画のタイトルから来ていることを知った永瀬正敏は、そんな逸話を教えてくれながら煙草を一服。永瀬の口から吐き出された煙がゆらゆらとたなびくと、まるで映画のワンシーンを見ているようだ。それくらい永瀬と煙草は絵になる。永瀬にとって煙草の魅力はどんなところなのだろう。

「なんかリズムのような気がするんですよね、精神状態の。昔、映画を撮影している時にフィルム・チェンジというフィルムを交換する時間があったんです。カメラに光やゴミが入るとまずいので、ベテランのカメラマンでも20分くらいかかる。その間、休憩になるんで喫煙所に行って共演者の方や監督と話をするんですけど、その時間が最高なんです。『ちょっと一本ちょうだい』っていう一言から始まる何かがある。最近、撮影がデジタルになったので、その時間がなくなっちゃったのが残念ですね」



束の間、緊張感から解放されて微笑みをかわす人々の姿が浮かんでくるようだ。喫煙所は仲間たちと囲む焚き火のような場所なのかもしれない。以前、ある若手俳優がインタビューで、憧れていた永瀬と話を交わしたくて喫煙所に行くのが楽しみだった、と語っていたことを思い出した。

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