瀬尾一三のアレンジ曲から読み解く、70年後半から80年代頭の音楽的な文明開化



田家:86年の曲で、作詞が吉元由美さん、作曲が河合奈保子さんだった。ご本人なんですね。

瀬尾:そうですよ。この頃から彼女がアイドルというカテゴリーからアーティストっていうカテゴリーにいきたいという事務所的な動きもあって。彼女が曲を書いてきたんですけども、あくまで素人さんなので、それにちょっと僕が構成的に繋げてこうした方がいいよとかってアドバイスをして。それで曲にして、それからアレンジしたんですけどね。

田家:去年の12月に大村雅朗さんの特集をこの番組で組んだときに、河合奈保子さんのアルバムで大村さんが全曲をアレンジしてるものがあるのを知らなかったんですね。その後に自分で曲を書き始めるようになって、瀬尾さんに出会って。

瀬尾:そうですね。あのときにたまたまプロデューサーの方から、こういう意図で彼女をアーティストとして育てたいんで助けてくれないかっていうことで。いろいろとアドバイスした覚えがありますね。

田家:こういう話を聞けるのが、スーパーダイジェスト4の今までになかった面ではないでしょうかね。そんな瀬尾さんの代表曲。次は男性曲です。



田家:徳永英明さん88年のシングル「風のエオリア」。これまでのスーパーダイジェストも徳永さんの「壊れかけのRadio」 「最後の言い訳」「夢を信じて」、それぞれ入っておりました。

瀬尾:本当に快く原盤提供いただいていますけど、ありがたいことに。

田家:そういう問題はついて回る。

瀬尾:そうなんですよ。やっぱり原盤をお借りしてるので、あまりできない人たちもいますので。そういう裏事情は別に言わなくてもいいんですけれど、徳永さんとか中島さんだけ特別扱いしていっぱい入ってるのって言われたら、徳永さんや中島さんは原盤提供を快くしていただいてるので。あとは別に意地悪じゃないんですよ。

田家:音楽ファン、リスナーの方たちのアルバムを聞いてるときの感想と、そういう音楽業界の現実に対しての知識っていうんでしょうかね。音楽業界こうなんですよっていうことが伝わらないでコンピレーションアルバムを聞いてる方が多いんで、なんでこの人が入ってないの?って思う人はたくさんいらっしゃるんでしょうけども。

瀬尾:でも会社には会社の事情もあるし、ご本人の許諾がないっていうのもあるし、最低二つの段階をちゃんと通さないとはこういうことはできないので。でもそれはしょうがないことですよ。あくまでいわゆる決まりごとなので。ただ、こうやって徳永さんや中島さんみたいに快く貸していただけると、こちらは作ることができるんでっていうだけのことであって。そういうときに快くとか言わない方がいいんだよね(笑)。快くとかいうと何か個人感情が入ってくるんで、貸していただけると嬉しいんですね。

田家:リスナーの1人としてそういう縛りがなくなると、もっと面白いコンピレーションアルバムいっぱいできるだろうなと思いますけどね。

瀬尾:あまりコンピいっぱい作ってもね(笑)。大きなレコードレーベルを持ってらっしゃる会社の人たちがコンピ作ってるんで、そことバッティングしてもよくないし。それはいろいろと思惑があるんですよ。それはそれで、皆さん今言ったことは聞き流しておいてくださいね。僕なんか本当は1枚目の2枚組で十分だったのに出させていただけているのは、提供してくださってる会社やアーティストの方に感謝しかないですけどもね。

田家:それは瀬尾さんだからいいですよって許諾されてるということですからね。

君を抱きしめてた / 東野純直

田家:東野純直さん96年の「君を抱きしめてた」。東野さんは「君とピアノと」でデビューしたシンガーソングライター。この曲は93年に収録したのですが、当時アルバムには入らなかった。

瀬尾:そうなんです。録音はしたんですけど、未発表のままになってしまったのか、僕は結構好きだったんですけども、いろいろな事情があったんでしょうね。彼がレーベル移籍をしてからベストとして入れたのはあると思います。やっぱり僕も未発表っていうのが心残りだったので。だから今回の中に入れていただきました。

田家:今まであまり選曲にタッチしてないって話がありましたけど。でも今回の曲の並びを見ると、やっぱり選ばれるディレクターの方と瀬尾さんとでそういう話があったんだと。

瀬尾:今回は数少ない引き出しの中から一生懸命探してたので(笑)。

田家:数少ない(笑)? 3000曲の引き出しの中から。

瀬尾:探してて、そう言えば東野くん未発表あるよねって。今回これだったら入れてくれないかなって話はしました。

田家:そういう曲はまだ他にもおありになるでしょう。

瀬尾:あると思いますけど、また探すの面倒くさいから。大掃除しなきゃ駄目なんで。

田家:そろそろそういう時期かもしれませんよ。

瀬尾:終活ですね。

田家:そういうアルバムの最後はこの曲です。

Rolling Stone Japan 編集部

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