Gacharic Spinの最終形態、アンジェリーナ1/3が語るアルバムで描いた二面性

―今お話を聞いていると、アンジーさんはすごく明るくてエネルギーに満ち溢れてますけど、アルバム『W』を聴くと結構ネガティブだったり人間臭い曲が多いですよね。

アンジー:Gacharic Spinはもう今年で14周年で、しんどいこともたくさん経験してきた姉さんたちがいるので、明るくポップな曲もあるけど、そこだけじゃなくGacharic Spinだからこそ表現できる人間臭さっていうのをすごく大事に描いています。『W』っていうタイトルには、「本当の自分と人前に立ってるときの自分」という二面性をしっかり描きたいっていう思いが込められているんです。だからこそポップな「カチカチ山」みたいにちょっと笑い飛ばしながらも、不満なこともあるよみたいなことを伝える曲もあれば、「ロンリーマート」とか、もっと根っこの部分、部屋で1人で思ってることを曲にしたような曲があったりとか。Gacharic Spinの2つの顔がしっかり描かれたアルバムだと思います。

―そういう意味の『W』なんですね。曲は作詞作曲編曲がバンド名義だったり、編曲に他の人が入っていたりしますが、どうやって出来上がっていったんですか。

アンジー:1曲を作るのにいろんなやり方があって、歌詞だけができててそこに曲をつけるメンバーがいたりとか。私で言うと、はなさんからラップパートだけを作ってきてって言われて、オケも何もない状態でとりあえずラップだけを作って、そのラップを聴いてはなさんが曲を作ったり。歌詞もいろんなメンバーの歌詞が入り組んでいたりするんです。リードの2曲(「レプリカ」「カチカチ山」)を含む前半4曲はTOMO-ZOさんがガッツリ、ギターから作っていこうという曲になってたりとか、本当に1曲通してもいろんな作り方があります。

―「ナンマイダ」は、まさに最後に〈どーにかして曲できた。〉って歌ってますけど、この曲は本当に複雑な構成ですよね。

アンジー:これはもう、はなさんだからこそ作れる曲で、Gacharic Spinって何回死んでてもおかしくないっていう(笑)、Gacharic Spinの歴史を歌ったような曲になっています。Gacharic Spinとして生きていくためにいろんなことを考えながらやってたら、もう何回死んでもおかしくなかったけど、結果今生きられてるよねみたいな。曲としてもすごく展開が多くて面白いし、歌詞も面白くて、いろんな紆余曲折ありながら、でもそれを歌ってたら〈どーにかして曲できた。〉みたいな落としにするのは、はなさんらしくてすごく良いなと思います。

―こういうミクスチャー的な曲って、何か参考にしているバンドとかいるんですか?

アンジー:Gacharic Spinって面白いことに、どのバンドっぽいなっていうことがないんですよね。だから本当に自分たちの音楽をしっかり確立してるんだなって思います。ざっくりしたくくりで言えばオルタナティブ・ロックとかメタルとかいろいろあると思うんですけど、ジャンル的にもどこにも属してないのがGacharic Spinの強みなんだなって感じますし、今回のアルバムもどの曲がどのバンドっぽいとかどのジャンルっぽいなっていうのがない、Gacharic Spinとしか言いようがないのが面白いんじゃないかなって思います。

―「レプリカ」は、アルバムのテーマの二面性を歌ってるからこそ、リード曲になった感じですか。



アンジー:そうですね。一発目にポップな「カチカチ山」をリード曲に持ってきたんですけど、「レプリカ」はその逆をいくだいぶシリアスなテーマが曲になっていて。これはレコーディングしながらだいぶ食らいましたね。

―食らったというと?

アンジー:自分の人生と重ね合わせながら歌ったときに、だんだんシリアスな方に意識が行っちゃって。レコーディングってだいたいいろんな人の顔が見える状態で行うのが普通ですけど、「レプリカ」に関しては、たまたま全然違うところにボーカル・ブースがあって1人の世界でじゃないと歌えないみたいな環境だったんですよ。私はもうそれがしんどすぎて、何か自分と闘いながらレコーディングしたので、めっちゃ疲れました(笑)。

―アンジーさん自身の中には二面性というか、仮面をつけているような瞬間ってあるんですか。

アンジー:私、じつはめちゃくちゃ暗いんですよね(笑)。人の言葉にいろんなことを感じちゃいやすくて、いろんなものをもらいやすいから。でもステージに立ってる私が求められてるのってそうじゃなくて、爆発的な力があったりパワーがあるキャラクターなので、そういう自分でステージの真ん中に立っていたいっていう気持ちはあるんです。そういう意味では、芸名のアンジェリーナ1/3と本名での自分っていうのは全然違っていて、そこが二面性になってるんじゃないかなっていうのは感じてます。

―「The Come Up Chapter」では赤裸々に嫉妬心や葛藤を歌っています。

アンジー:歌い出しの〈生きたい、生きて。感じてる〉っていうフレーズだけ、私が歌詞書いたんですけど、ここのサビの頭だけ歌詞がなくて、何にしようっていろいろメンバーの中で考えてたときに、KOGAさんに「これアンジー書いてくれる?」って言われたんです。それで歌詞を見ていたら、私自身もやっぱり人に対しての嫉妬心ってすごくあるし、自分のふがいなさにすごく腹が立ったりとか、なんでもっと自分ってうまくできないんだろうって葛藤することがめちゃくちゃ多いし、いろんな消化しきれない思いとかもいろいろあるけど、それでも生きたいと思ったんです。〈生きたい、生きて。〉の〈生きて〉っていうのは、自分を客観的に見たときに、それでも私はちゃんと生きなきゃいけないし、生きてほしいっていうのを伝えたいと思って書きました。自分を俯瞰で見て歌ってる曲にもなっているので、悔しさがあっても強くありたい自分っていう葛藤がすごくちゃんと書かれた曲になったんじゃないかなと思ってます。

―「リバースサイコロジー」はライブでお客さんが腕を振ってる光景が目に浮かぶような曲で、ベースのスラップとギターのユニゾンが凄まじいです。

アンジー:これは、インスト曲を第5期でも作ろうかっていうことで作っていたんですけど、サビだけ作ったら思いのほかサビがめちゃくちゃかっこよくて、AメロBメロはちょっとインスト的要素がありつつサビだけ歌詞があるっていうのも面白いんじゃないかっていうのでこの構成になっていて。インスト曲ってなるとライブで私の立場的に、「アンジー、なにやるの?」ってなるじゃないですか?

―実際、そうなったら何をするんですか?

アンジー:本当にそうなったときは、はけるんじゃないですか(笑)。でも第5期のインストっぽい曲って考えたときに、私はマイクパフォーマーだから、ボーカルとは違うけど楽器的な声の要素を入れようっていうので、ラップなんだけどラップとして聴くんじゃなくて、音の一部、演奏の一部として聴いてもらうようなラップがあったりとか、第5期だからこそできる楽器演奏と私の声も含めた面白さっていうのが「リバースサイコロジー」に入ってるんじゃないかなと思います。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE