LiSAが語る、世代を超越したパンクロックの力、「次の10年」を見据えて

これまでとは異なる「攻めの姿勢」

ー歌詞のテーマにおいても映画のストーリーを踏まえつつ、LiSAさん自身の今の想いもリンクされているのかなと思います。

LiSA:私はこれまでのスパイダーマンの映画は全部観ていますが、スパイダーマンはヒーローなんだけど、ヒーローとしての運命としては結構過酷で、自分の大切な人を皆さん亡くしてしまう。どの世界線のスパイダーマンも家族を亡くしたり恋人を亡くしたり、いろんな大切なものを犠牲にしてでも世界を守って、犠牲を払った上でのヒーローというのがスパイダーマンなんだとすると、私もデビューから10年以上活動してきて、スパイダーマンほど何かを犠牲にしているわけではないですけど、自分が歌手である、プロであるということを意識したときに……やっぱり我慢しなくちゃいけないとかいいことばかりじゃないっていうのは、ヒーローと同じなのかなと。側から見るとヒーローってカッコいいものではあるんだけど、覚悟を持った上でその肩書きを背負っていくこと、自分の使命とか運命とか役割を理解する、自覚することで強くなっていくのかなと思うんです。



ーヒーローはもちろん、LiSAさんのように人前に立つ職業の方々もその立場に対する責任っていうのも求められることも多いと思います。その責任や使命みたいなものを、特に意識するようになったタイミングってありましたか?

LiSA:やっぱりデビューしたときに、私は一番強く感じました。というのも、それまでは自分が好きな音楽をただ好きなようにやっていたんですけど、応援してくれる人が増えたり、活動に携わる方が増えたりすることで……自分の楽曲やライブ、アーティストとしての活動にお金を出してくれる人が増えて、自分ひとりでやっているのではないという事実に気づかされるじゃないですか。そういう現実に対して、自分の使命だったり責任だったりを意識できるようになってきたような気がします。でも、責任という点においてはお母さんだってそうだし、働いている方々もそうだし、それこそ生徒会長でもいいんですけど、何か役割を持った人たちはその使命を自覚することでどんどん強くなっていくのかなと。そういう意味でも、この曲がいろんな人たちのもとに届くことを願っています。

ー先ほど「次の10年はどんな音楽をやっていくか」という話題も出ましたが、今回の「REALiZE」ではその意識はどのように反映されていますか?

LiSA:今までの10年ですごく大切な曲がたくさんできたので、ならば今は“役者”が揃っている状態なわけで。今までは目の前のことに必死で、夢中になって進む方法しか知らなかったような気がするんですけど、ここからは自分自身がもうちょっと遊べるというか、自由に飛び回れるようになりたくて。余裕を持った状態で1曲1曲と向き合っていけるような10年になるといいなと思って、今回はこの攻めの札を出しました。

ーこの攻め方も、例えば20代前半での攻めとまた違ったものですよね。

LiSA:たぶん20代前半の攻めの姿勢って、やっぱり「Rising Hope」みたいに身を削って、ちょっと危なっかしい“なりたてのヒーロー”というか。自分の術を全部使って一生懸命投げて、「どれか当たれ!」みたいな感じだったと思うんですけど、今はちょっと倒し方がわかってきた先輩ヒーローのような感覚ですかね。



ーいくつかある攻略法のうち、「今回はこれだ」みたいな。あと、経験という点で言うと、ファンの方やスタッフさん、いろんな仲間たちとの出会いや、人生におけるさまざまな変化も音楽に対してより深みを与えているのかなと思います。

LiSA:私、昔は「仕事以外いらない、LiSAの以外の活動はいらない」って思っていたんですけど、最近はLiSAの活動の中での出会う人たちはもちろん、そうじゃないところで出会った人たちも含めて、歌詞に反映されたり自分の進むべき道の指針になったりしているので、そういう人との出会いや関係、会話など音楽以外の部分もすごく大切なんだなってことにやっと気づけたんです。それこそ以前はLiSAとしての活動を通してたくさん壁にぶつかったり、いろんな苦しいことがあったけど、LiSAの物語だけで音楽を作れるぐらいのハプニングやうれしいこともたくさんあったので、それ自体は全然苦じゃなかったんですけど、そうじゃない自分の人生枠というか、プライベートの部分も音楽の要素になっていたんだなということもわかってきたからこそ、そっちも大切にしながら音楽活動に活かしていけたらいいなと思ってます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE