須田景凪が振り返る挑戦の1年、初めて語られる制作エピソード、大切な出会い

ーそして、ここ最近の動きとしては、先日「THE FIRST TAKE」で、「シャルル」と「ダーリン」の歌唱が公開になりました。「THE FIRST TAKE」自体が初めてだったと思うんですが、やってみてどうでしたか?

須田:バチバチに緊張していました。それこそ、昨日もちょっとラジオに出させてもらって同じようなことを喋ったんですけど、やっぱり白い部屋に入って歌ってくださいねっていう状態なので、イメトレはたくさんしていったんですけど、やっぱりあの場に立つと空気感も全然違いますし、今から本番ですってなった瞬間、さっきまで賑やかだったスタッフさんが一斉に静かになる。みんなで、あの緊張感を作っているんです。ただ、ひたすら緊張したっていうよりも、すごくいろんなことを考えながら歌えたんですよ、2曲とも。それは自分でもすごく不思議な感覚で。多分、あの場じゃないと生まれない感覚なんだろうなって。

ー「シャルル」と「ダーリン」、それぞれどんなことを考えて歌っていたのでしょう?

須田:やっぱり、「シャルル」の方が作ってから年月も長いので、作った当時の記憶はもちろんですけど、自分が作曲に手を出した時期のことだったりも思い出して。自分はニコニコ動画の文化出身なんですけど、あの文化って当たり前のようにそれまでいた人がいなくなっていくんですよね。去年まで一緒に仲良く頑張っていたクリエイターのアカウントが急に無くなって連絡がつかなくなるとか、当たり前の文化なんですよ。良くも悪くもと思うんですけど、そういえばあんな人もいたなあとか、そういう関係性ももちろん思い出しましたし、自分が作曲を始めて曲をたくさん書いていく中で、何を考えていただろうみたいな。音楽以外もなんですけど、いろんなことを振り返りながら歌えた感覚はありましたね。



ー「シャルル」は大きなターニングポイントになった曲でもあるわけで、自分の記憶とかあの時はああいうことを考えていたとか、そういうのが改めて蘇ってくるような感じ?

須田:もちろん蘇ってきたんですけど、それこそ昔の感覚とか、脳みそでは覚えているんですけど、感覚では意外と覚えてなかったりするじゃないですか? その感じが感覚として蘇ってきた。そうならざるを得ない場所に行かないとそうならないと思うので、改めて思い出したのはすごい貴重な体験でしたし、なるべく1日でも長く忘れないようにしたいなって思いました。

ー「ダーリン」の方はどうでしたか。



須田:「ダーリン」は、作ってから1年も経っていないんで、いろんなことを生々しく覚えているんですけど、曲単品っていうよりも、このアルバムを作るにあたって何を考えていたかをすごく思い出して。音楽的な話よりも、このアルバムを作るにあたって、そもそも自分はどういう人間だったか思い出すことがすごく多かったんですよ。音楽関係なく、皆さんの1番古い記憶みたいなのって多分あると思うんですけど、実は、さらにその奥にもう1個、思い出せない記憶みたいのあると思うんです。それを意図的に探しに行ったことがめちゃくちゃあって。それってすごくスタミナを使うし、言ってしまえば、思い出したくないことを思い出す作業とかもあるわけで。そういうものをトータルで思い出した後に、自分の一部にしなければならないみたいな感覚があって。そういうものを考えながら歌っていましたね。

ーアルバムのインタビューや、ライブのMCでもおっしゃってましたけど、『Ghost Pop』というアルバムを作ることが、アーティストとしてはもちろんですが、それ以前に人間としての自分の棚卸しのような作業になった。

須田:そうなりましたね。

ーしばらく経って、制作時期って自分にとってどういう期間だったと思いますか。

須田:どっちかっていうと、自分はパソコンの前で制作している時間が1番好きなタイプなんですよ。曲じゃなくても、ずっとゲームをしたり、黙々と作業するのが1番好きなんですけど、去年は目に見えて人前に出させてもらったり、いろんな初めましてを体験させてもらったりして。自分をある程度さらけ出さないとやっていけないんだろうなっていうのをすごく感じた1年ではあったんです。それは前からわかっていたんですけど、改めてそれを作品にする作業は初めてだったので、その感覚は意識的だったと思います。

ーじゃあ、最後に僕から1個聞かせてください。ライブのMCでも、今日のお話でも、新しいことにたくさん挑戦してきたという話題がありました。今後、挑戦してみたいことって今、思いつくことでありますか?

須田:なんすかね…? でも、今、思いつかないようなことがしたいんだろうなって気はしていて。それこそ、走ったり、ジムに行ったりも、ある種、必要に駆られてやりはじめた部分ではあるんですけど、やんなくてもいいことをやってみたいなと思っていて。水面下で、柄にもないことをたくさんする時間が多分必要なんだろうなって気はしていて。

ーこちらが勝手に言うと。デザインとか?

須田:それこそ、どこにも出してないですけど、趣味でデザインを触るのは好きなんです。それを更にやっていくのもいいし。何やったら楽しいんですかね? なんかあります?

ーそれこそアボカドさんみたいな造形物を作るとか?

須田:う〜ん、それはアボカドさんのすごさを隣で見ちゃってるから。

ーもしくは体を使った何か。ダンスとか?

須田:面白いですね(笑)。

―あとは、須田さんがやってきた中から1番遠い距離があるってところで言うと、体を駆使する何かもしくは、突然海外で1カ月過ごすとか?

須田:でも、そういうことですよね。ダンスとか柄にもないですし、海外とか、僕は絶対行かなそうじゃないですか。今、想像すると笑ってしまうようなことをちゃんとやってみたいなってのは思っています。

ー突然、アイスランドで1カ月過ごすとか?

須田:アイスランドのことを何も知らないので、何も浮かんでこないですけど、本当にそのくらい、今までの延長だったらしないであろうってことをしてみたい感覚はすごくありますね。



<リリース情報>



須田景凪
『Ghost Pop』

2023年5月24日(水)発売(CD・ダウンロード・ストリーミング)
特設サイト: https://suda-keina.com/ghost-pop/
初回生産限定盤 [CD+Blu-ray] 「Ghost Popオリジナルキーホルダー」付き WPZL-32055〜6 ¥5940(tax in)
通常盤 [CD only] WPCL-13478 ¥3300(tax in)

Rolling Stone Japan 編集部

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