フジロック×サマソニ運営対談2023 新時代に突入する2大洋楽フェス

帰ってきた来日公演と新たな課題

―高崎さんも前回「フジとサマソニが口火を切って、『来日公演が帰ってきた』という雰囲気が作れたらと思ってます」とおっしゃっていましたが、むしろ今年に入ってからは、我々メディア側も追いきれなさそうな勢いで来日ラッシュが加速しています。

高崎:興行という点では、今の状況はいい感じでしょうね。「こんなに日本経済は低迷しているのに」と思うくらい(笑)。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(2月に東京ドームで開催)のようなビッグネームや大御所のアーティストも売り切れるなど、たくさんのお客さんが入っているみたいです。

安藤:「待っていた!」という方も多いんでしょうね。

高崎:その一方で、物価高と円安の影響から、小さい会場でオファーするような新人アーティストが呼びにくくなっているという問題も出てきているんですよね。昔なら「新人を見せたい!」って割と気軽に呼べていたのが、「もう少し大きくなってからでないと無理」となってきていて。こちらとしては呼びたいなーと思いながらも……不完全燃焼というか。

安藤:そこはやりにくくなっちゃってますよね。

高崎:以前よりは追いついてきているとはいえ、若手アーティストは海外と日本の火のつき方に結構ズレがあるんですよ。海外ではすでにアリーナクラスだけど、日本では1000人〜2000人規模のクラスだったりとか。桁が一つ違うほどのズレがあると、よっぽど日本が好きじゃないと呼ぶのが難しい(苦笑)。

安藤:だから、そうなる前にキャッチアップしなきゃいけないっていう。

高崎:それが単独公演の役割でもあったんですけど、今の状況では新人を呼ぶことが難しくなっていて。

安藤:その受け皿がフェスになっているような流れはありますよね。あとは現場担当レベルでいうと、「開催できる/できない」の判断がよりシビアになってきて。円安の影響もあるし、飛行機代も上がっているのにギャラが出せないってなると、そもそも来られないという話になっちゃうので。「お客さんが入るだろうな」っていう公演でないと実現させづらくなっていますね。

高崎:とはいえ、来日公演にはお客さんが入ってるわけじゃないですか。日本盤も同じように動いているんですかね?

安藤:そこが連動している感じは正直しないというか、CDがどれだけ売れているかで測れない感じになってきてますよね。最近は日本盤が出てなくても売れていくアーティストがいて。僕が担当しているポリフィアというインストバンドも、知らない間に人気が爆発して、6月の単独公演はZepp DiverCity Tokyoがソールドアウトしています。前回の2019年はそこまで売れなかったのに。

高崎:飛躍しちゃった(笑)。そこに何があったのか……。

安藤:去年の秋にリリースされた最新アルバムが海外でバズったんですが、日本盤はリリースされてないんですよ。だから、お客さんはSNSでピックアップする世代だと思います。



―同じく日本盤は出ていないのに、とあるアーティストがInstagramで「日本に行く」と投稿したら一気にチケットが動いた、という話を最近聞きました。そういう若くて感度の高いオーディエンスが、日本と海外のズレを埋める存在になりそうな気もしていて。

高崎:TikTokを使っているような耳の早い層が増えているんでしょうね。洋楽文化の将来については慎重に考えたいところもありつつ、今の状況はいい感じだと思います。

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