フジロック×サマソニ運営対談2023 新時代に突入する2大洋楽フェス

「完成されたバランス」サマソニの展望

―サマソニはいかがでしょうか? 清水社長は他媒体のインタビューで「欧米/日本/アジアのバランス、ロック/ヒップホップ/J-POP/K-POPのバランスが去年から一昨年で完成されてきた」とおっしゃっていましたが。

安藤:たしかにバランスがいいですよね。日本も含めたアジア勢の数も増えていますし。それによって洋楽アクトも逆に際立つようになった。それと今年は、MOUNTAIN STAGEのヘッドライナーをYOASOBI、BABYMETALという国内勢が務めるというのも、例年と違うところかなと。洋楽/邦楽/アジアがバランスよく融合しているのが、その辺りにも見受けられると思います。

あとは昨今、海外フェスでも出演者のジェンダーバランスが取り沙汰され、アーティスト側も気にするようになっているので、そういった点にも配慮しながらブッキングしているのもこれまでと違う点かなと。




―昨年出演したThe 1975のマシュー・ヒーリーは女性アーティストの比率に関する表明をしており、それにサマソニ側もしっかり対応したわけですよね。その辺りへの意識が新しいスタンダードとして定着しつつあると。

安藤:そうですね。あとはもちろん、ブラーとケンドリック・ラマーを迎えられたのもすごく大きくて。今年はスペインのプリマヴェーラ(6月開催)と偶然同じヘッドライナーなんですが、我々スタッフは知らなかったので結構びっくりしました(笑)。ケンドリックはフジロックで先に来日していますが(2013年、2018年)、サマソニとしても一緒にやりたいという強い思いがあって、このタイミングでブッキングできてよかったなと。

2018年のフジロックで観たケンドリック・ラマーは、日本の洋楽受容史における大きな転換点に立ち会ったような感動がありました。あの日は雨がすごくて……。

安藤:大雨でしたよね。

高崎:ピューリッツァー賞を受賞した直後の出演で、バンドも両脇にいるけどステージに一人で出てきて。僕は映像でしか観れなかったけどかっこよかった。フジロックの歴史においても一つのターニングポイントですね。




―かたやブラーのサマソニ出演は、レディオヘッドと共にヘッドライナーを務めた2004年以来となります。

高崎:ただ、そのときはグレアム・コクソンがいなかったから、サマソニでオリジナルメンバー4人が揃ったブラーを観れるのは今回が初なんですよね。

―さすがサマソニ皆勤賞の高崎さん! 今年のラインナップはどう見ていますか?

高崎:お話にあったように、ヘッドライナーも含めてバランスがいいですよね。僕としては、NewJeansを呼んでいるのはさすがだなと。個人的にもかなり好きなんです。曲作りがうまいし、キャッチーで口ずさみたくなる感じ。「この人たちは売れるよね」って。

安藤:みんな好きですよね(笑)。音楽的にも洋楽ファンに刺さるところがあるみたいで。

高崎:それとザ・キッド・ラロイ。去年はフジロックもサマソニも動いていたけれど、結果的に着地できなかったんですよね。FLOも今年話題ですし、そういう押さえるべきところを押さえている。




安藤:それにしても、ラインナップをいざ振り返ると(東京2日目・MARINE STAGEの)ジャニーズWEST、マカロニえんぴつ、TREASUREやザ・キッド・ラロイ、SOLを挟んでリアム、ケンドリックという流れは……なかなかですね(笑)。

高崎:客層が3世代くらい入り混じるんじゃないかっていう。実にサマソニらしいし、僕には浮かんでこない組み合わせ(笑)。そして、「星野源をここで使うか!」という。

―「“so sad so happy”」と銘打って、東京初日のBEACH STAGEのキュレーションを担当するんですよね。星野さんはご自身のラジオ番組で「呼びたい人を呼ぶ、フェス内フェスみたいな感じになるのかな?」と話していたようです。

安藤:当初はサマソニと別にやろうと動いていたんですが、BEACH STAGEでやったら面白いんじゃないかという話になったようです。個人的にもジェイコブ・コリアー、UMI、カミーロという並びはすごいと思います。

―Spotifyとのコラボステージ「Spotify RADAR: Early Noise Stage」も気になります。

安藤:こちらも初の取り組みで、Spotify上で注目されている日本の次世代アーティストが中心にブッキングされています。先ほどの話にもあったように、「CDがどれだけ売れているかで測れない感じになってきた」今の時代だからこそのラインナップになっていますね。



―楽しみです。フジロックも今年、いろいろと変化があるみたいですね。

高崎:まずはTHE PALACE OF WONDERが4年ぶりに復活します。あの夜のアイコン的場所が戻ってくることで、ようやく「いつものフジロック」と言えるかなと。今年はできる限り快適な空間を作ろうということで、トイレなどの環境面にも力を入れています。

それから初の試みとして、「FUJI ROCK PLUS」という新サービスを限定販売することになりました。プランは大きく2つあって、僕が面白いなと思ったのは「Bus & Food Pass」。OASIS(フジ最大のホスピタリティエリア)〜WHITE STAGEまで専用シャトルバスで移動できるんです。もともと出演者/フェス関係者が使ってきたバックステージの動線を走るわけですけど、車が2台ギリギリすれ違えるくらいの狭い道なので、チケットの枚数もそんなに出せないし、出演終わりのアーティストとすれ違えるかもしれないのでレアだと思いますね。さらに、シャトルバスの乗降場付近にある専用休憩スペースや、飲食店に並ぶ時間を短縮できるファストレーンも使えます。

もう一つは、専用ビューイングエリアとグッズ売り場のファストレーンが使える「Stage & Goods Pass」ですね。フジロックらしくない気もするんですが、お客さんからの要望はあるので、社内でも話し合って一度試してみようと。今年は他にもいろんなことを試してみて、そこから今後のあり方を決めていこうという方針で企画を進めています。

―VIPチケットは海外だと早くから導入されていますし、サマソニでも2013年からプラチナ・チケットを販売していますよね。

安藤:おかげさまで毎年人気です。夏は過酷な環境になりますし、そのなかでライブを快適に楽しみたいという要望にどう応えていくかは、ラインナップとは別のところで重要になってきているように感じますね。





―では最後に、フェス開催に向けて一言ずつお願いします。

高崎:コロナ禍を経て、「いつものフジロック」を超えるものが提供できるのではないかと思っています。ここ数年コロナの影響で見送っていた方はもちろん、昔から通っていたお客さんにも「フジロックが完全に帰ってきた」という姿を見せられると思うので、ぜひ来場していただきたいです。チケットの売れ行きも好評で、またインバウンド需要がとても動いてますね。街中で海外からの観光客をたくさん見るようになって、これからもっと増えていくのかなと。なので、海外からのお客さんに向けたサービスやサポートなども今年は力を入れていきます。

安藤:インバウンドについては、邦楽イベントにも問い合わせがあるくらい需要が増えてきているので、そこも今後変わっていくところかもしれないですね。おかげさまで、サマソニに関しては今年も東阪どちらも全券種ソールドアウトとなっていますが、深夜のソニックマニアもありますので、そちらもぜひご来場いただければと思います。




FUJI ROCK FESTIVAL '23
2023年7月28日(金)〜30日(日)新潟県 苗場スキー場
公式サイト:https://www.fujirockfestival.com/



SONICMANIA
2023年8月18日(金)幕張メッセ
公式サイト:https://www.summersonic.com/sonicmania/



SUMMER SONIC 2023
2023年8月19日(土)〜20日(日)
東京:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ/大阪:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
※全券種ソールドアウト
公式サイト:https://www.summersonic.com/

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE