Borisと明日の叙景が語る、ヨーロッパ・ツアーの舞台裏、ファンの熱狂

Boris、明日の叙景

Borisと明日の叙景(あすのじょけい)が一緒にヨーロッパをツアーする、というニュースが今年の2月初旬に発表されたとき、国内外のファンから大きな反響が寄せられた。Borisは名実ともに日本を代表するバンドの一つであり、国外ではメタルの枠を越えたファンベース(レディオヘッドのトム・ヨークなども)を築いている。また、明日の叙景は昨年7月にリリースされた2ndアルバム『アイランド』が非常に高く評価され、「J-POP? それともブラックメタル?」というCD帯掲載のコピーどおり、様々なジャンルの音楽ファンを惹き込んでヒットを続けている。音楽性は異なりながらもいずれ劣らぬ素晴らしいバンドであり、ツアーも大成功だったようだ。

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今回の対談は、そうした欧州ツアーのアフタートークとして実現したものである。BorisからはAtsuo(今回のツアーではドラム兼任でなくボーカル専任)とTakeshi(ギター、ボーカル)が、明日の叙景からは等力(ギター)と布(ボーカル)が参加。前編となる本記事では、昨年末の邂逅から一気にツアーの話がまとまっていった経緯や、過去作品に対する海外からの反応、実際のツアーの様子や現地の人々との交流などが語られている。他では聞けないだろう話も満載。お楽しみいただけると幸いだ。

・交流の始まり、欧州ツアー実現のきっかけ

ー本日はとても貴重なご機会をありがとうございます。それではまず、先日の欧州ツアーについてお聞きします。Borisは4月29日から6月8日、明日の叙景は5月18日のフィンランドから6月5日のUKまで、5月下旬は同じ会場を一緒に回られていたように思います。こうしたツアーが実現したきっかけはどんなものだったのでしょうか。

Atsuo まずはツアー先を組んで行って、だいたいの日程が決まってくると、次はサポートのバンドをどうしようかという話になってくるものなんですけど。ちょうどその時期にに、『現代メタルガイドブック』関連の絡みもあって、明日の叙景の名前も聞いたり目にしたりする機会が多かったんですね。色々なところでプッシュされてるな、みたいな。そういう中で、Takeshiも気に入ってるという話で。

Takeshi Borisが高円寺HIGHでライブやった時(2022年12月18日の夜公演)、同じ日に別の会場で明日の叙景がやってて(渋谷CYCLONEの昼公演、初ワンマン)。その日に、今制作に関わってくれてるVinyl Junkie Recordingsの南さんが明日の叙景を観てからこちらのショウにも来てくれて。

Atsuo そうそう、南さんはCOALTARS OF THE DEEPERSと一緒にやった時(2022年7月27日、吉祥寺SEATA)にも関わってもらってて。そういう流れの中でも、明日の叙景の名前を目にする機会が増えてきてたんですよね。それで、Dog Knightsという今はフランス拠点のレーベルからBorisが以前リリースしていて、明日の叙景のアルバムもそこから出ていることは知ってたんですね。海外からリリースしているんだったらツアーのサポートも受けられるんだろうなという考えもあったので、それじゃ連れてったらいいんじゃない、みたいな。

Takeshi そうそう。短期間にね、いろんなものがキューっと一気に繋がって、全部リンクして。

Atsuo こういうのって縁だよね。そうせざるを得ない流れみたいなのが生まれて。


Boris

ーTakeshiさんは、明日の叙景をいつ頃から聴かれてました?

Takeshi 『アイランド』の前、2nd EP(邦題:すべてか弱い願い、英題:Wishes)から聴いてたんですよ。日本にもこういうバンドが出てきたんだなと思ってて。ただ、その時は正直言って物凄く「くる」感じの印象ではなかった。だけど、『アイランド』が出た時に、特にキラーチューンの「キメラ」を聴いた時に、これは新しいのが来たなと思って。



Atsuo 周囲の評価も高くなっている感じはあったよね。国内でも。

等力 そうですね。『アイランド』から。

Atsuo 実際に海外ツアーに行けるバンドかそうでないかという問題がある。だから海外でリリースしていて、それは向こうでの活動をイメージしているんだろうなというのがわかったので、声をかけさせていただきました。

ー明日の叙景のメンバーの方々は、実際に声をかけられてどう思いましたか。

等力 それはもう、行くしかないなと(笑)。行かない選択肢はないだろって感じでしたね。

Atsuo 結構早かったよね。話を振ってから形になるまでが。

等力 そうですね。今回はベースの関が行けなかったりとか、サポートメンバーを用意しなければいけない(Gen〈Graupel〉とGabrielが参加)というのはあったんですけど、意思決定としては結構すぐに決めちゃって。


明日の叙景

ーもともと海外でも展開していきたいという希望はあった。

等力 そうですね。先にもお話していただいたように、海外リリースをしていたのは各国でフィジカル(LPやCD)を入手しやすくするためで。日本からフィジカルを送ると大変なことになるので、各大陸で作って売りたいと思っていろいろなレーベルとやってきました。その中で、ツアーをやりたいというヴィジョンも、具体的ではなかったにせよ持っていまして。それで、今回チャンスをいただいたので、これはもうフルスイングで行くしかないでしょという感じでしたね。

布 そもそも、日本人だけに向けてやっていると1億人としか商売できないので。80億人を相手に商売したほうがチャンスは多いですよね。そこの選択肢を最初から除いちゃうのは勿体ないので、海外での活動というのは日頃から考えていました。具体的に何かやっていたわけではないですけど。

Atsuo 日本人として好きな音楽をやり続けようと思うと、国内だけの規模だとどうにもならないですからね。特にこういったエクストリームな音楽は。世界にはこれだけの受け皿があるというのは最初から意識しないと。

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