EASTA & NAOtheLAIZAが語る、世代とビートとメロディの化学反応が生んだラップ作品

NAOtheLAIZAがプロデューサーとしてEASTAに伝えたこと

―普段、NAOtheLAIZAはプロデューサーとして何を一番大事にしていますか?アーティストに求める「これだけは!」という条件みたいなものは?

NAOtheLAIZA トラックだけ渡す時と、プロデュースをする時とでハッキリ違うんですけど、プロデュースするときは「リリックも含めて、自分がフィールせえへん人とはやらへん」ということです。メロディとかも大事なんですけど、やっぱりラッパーのリリックを一番重要視しているかもしれません。EASTAにも「これは言わんといて」ということは結構言ったかもしれません。

―具体的には、EASTAさんにどのような内容を伝えたのでしょうか。

NAOtheLAIZA 世代の違いもあると思うんですけど、ストレートにパッと言うのが好みじゃないんですよ。もうちょっと言い回しを面白く、とか文学的に、とか。”深く感じられる日本語のよさ”みたいな部分は出したいなと思っていたんです。

EASTA (そうした要求を受けて)ハードルが高かったですね。大人の方やな、とも思いました。なので、制作中はまず第一に表現に気をつけていきました。あと普段よりもメロディを作るのを頑張りましたね。表現方法とメロディ、この二つが難しかったです。

NAOtheLAIZA メロディに関しては、やっぱり「めちゃくちゃええな」という印象でした。何々風、というのではなくて、完全にオリジナルなんですよね。EASTAは、これまでにレゲエ界隈で活動していた時期もありますし、現行のUSヒップホップの感じと、自分がやってきたことをうまくEASTAのフィルターを通して作っているメロディなんですよ。絶対に他と被らないな、っていう。自分が考えていたメロディもあったんですけど、EASTAが出してくるものは、それと全然違ったんですよね。

―特にEASTAさんの良さが現れている楽曲はどれだと思いますか?

NAOtheLAIZA 「OSAKA LOVER」のヴァースの後半8小節ですかね。あそこは結構「やべえ」と思いました。リスナーに伝わっているか分からないですけど(笑)。



EASTA 楽曲自体がアフロ・スイング調のビートだったので、レゲエのディージェイをしていた頃の感じと、最近のDavidoみたいなフロウを出したいと思って、降ろしたメロディなんです。俺としては感覚的にやった、という感じなので、こうして改めて言われるとすごく嬉しいです。逆に、難しかったのはSIMONさんをフィーチャーしている「Too Busy」。結構、時間が掛かりましたね。ナオさんには、2014〜15年くらいのトラップ感を出してほしい、とオーダーしたんです。一回、サビ部分を録ったら「いや、ちゃうなあ」ってナオさんからやり直しを命じられたんですけど、俺はそうやってやり直しさせられることが超嫌いなんです。それで、めっちゃ悩んで。SIMONさんはめちゃくちゃリスペクトしていたラッパーで、「誘えるのはこのタイミングや!」と思って、曲に入ってもらいました。



NAOtheLAIZA SIMONと曲を作ったのは、俺も初めてだったんです。いいタイミングで出来たので、それはEASTAにも感謝しています。

―先輩アーティストとのコラボ曲というと、JAGGLAさんとNORIKIYOさんが参加した「Straight Up」という曲も収録されています。

EASTA 俺自身、JAGGLAさんのめっちゃファンであり、彼のことをリスペクトしているんです。ナオさんがJAGGLAさんの1stアルバム『蜃気楼』をフル・プロデュースした話も伺っていたので、最初に声をかけさせてもらいました。で、オッケーしてくれて「やったー!」と喜んでいたら、NORIKIYOさんも参加することになって……。

NAOtheLAIZA もともと、「EASTAとJAGGLAで曲をやる」ということが決まってからビートを作ったんですけど、ビートを送ったらJAGGLAもめっちゃカマして来てくれた。「完璧やな、この曲」と思いながら、アレンジやミックスなど、最後の仕上げに入っていたんですよね。その時に、ちょうどNORIKIOYOくんが俺のスタジオに来ていたんです。(NORIKIYOとの)レコーディングの合間の休憩時間を使って、「Straight Up」の修正作業をしていたら、NORIKIYOくんから「これ、 EASTAくんですよね?彼は自分が一緒に曲をやりたいと思っているアーティストの一人なんですよね」と言われて。「よかったら、この曲に入ります?」と聞いたら、「ビートも好きな感じだし、いいですよ」と言ってくれて。NORIKIYOくんとは、また三日後くらいに会う予定だったんですけど、その時にもう自分のヴァースを書き上げてくれて。

EASTA 仕上がった曲を聴いて、JAGGLAさんとNORIKIYOさんのヴァースが自分に贈られているみたいな気がしたんです。そこが自分にとっても励みになったというか。アルバムには、「Straight Up」の直前に「Happy End 2022」っていう曲が収録されているんですけど、「Happy End 2022」は、もともと5年くらい前に作った曲なんです。それと同じトピックで歌った楽曲が「Straight Up」で。なので、5年の成長を自分の中で認識できたというか、同時に背中を押されている感じもある。先輩たちが自分に向けてスピットしてくれている感じっていうんですかね。

ーEASTAさんのラップのいいところって、トレンドを追うような表現だけではなく、ネガティブで泥臭いことも包み隠さずラップするところだなと感じているんです。今回の『T.U.R.N.』に収録されている曲だと、「らしいな」とか、そうした魅力が溢れていると思うんです。アルバムとして深みを増しているというか。

EASTA そうした部分に関しては、意識している部分もあるんですけど、レゲエをやっている時に影響を受けた部分でもあります。レゲエのアーティストってよりストレートに言う人が多いなと思っていて。感情が伝わる感じっていうんですかね。それを無意識にラップに落とし込んでいるのかもしれません。分かりやすい言葉を使いたい、という気持ちもあって、自然とこういう歌詞の書き方になっていました。

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