収監直前のNORIKIYOが語る、10thアルバム『犯行声明』の真意

NORIKIYO

2007年にデビューアルバム『EXIT』をリリースし、これまでに9枚のオリジナル・アルバムに加え、コラボEPや数えきれないほどの客演楽曲を世に送り出してきたラッパー、NORIKIYO。無慈悲なストリートライフをリアルに描き出すと同時に、人生を鼓舞するポジティブなリリックも彼の魅力だった。常に皮肉とユーモアを忘れずに言葉を紡いできたNORIKIYOだったが、2022年8月に彼が逮捕されたという事件が報道された。“末端価格1億1000万円の大麻を育て売買していた”というセンセーショナルなニュース。しかし、それは彼が主張する事実とは異なる報道内容だった。判決を待つ保釈中という状況のなか、一体、逮捕をめぐって警察とどんなやりとりがなされたのか、赤裸々な訴えと共に勾留中に大半の歌詞を書き上げたという10thアルバム『犯行声明』に込めた思いを聞いた。

【写真を見る】『犯行声明』アートワーク

―今から順番にお話を伺っていきたいなと思うのですが、今、どんな状況にいらっしゃるのか伺ってもいいでしょうか。

はい。3年6カ月の実刑判決を受けて、控訴して、今は保釈中という段階です。6月7日に最終の判決が出ますんで、その判決いかんでは収監されるんじゃないかという状況です。

―2022年8月に、NORIKIYOさんが逮捕されたという報道が出ました。報道内容としては大麻取締法違反、かつ営利目的栽培との内容で非常に驚きました。当時はどのような状況で?

8月に報道が出た時点では、自分は再逮捕されたという状況だったんです。もともと(2022年の)6月7日に家宅捜索が来て、日付が変わって6月8日付けで逮捕された。ニュースが出たのは俺も知らなくて、弁護士が面会に来て「ニュースになりましたよ」と(ネット記事を)プリントアウトして、どういうことが書いてあるかが読み上げてくれて知ったんです。捜査機関の一方的な見解だということで、弁護士はめちゃくちゃ怒ってましたね。俺も、「こういうことって日本で起こり得るんだ」みたいな感じでした。たとえば、殺人事件があったら、最初は死体遺棄容疑で逮捕されて、その後に証拠を照らし合わせたり捜査したりして、改めて殺人事件として扱われて、その後に殺人罪で逮捕したというふうになる。なのに、なんで俺はいきなり証拠もないのに「売買していた」とニュースを(メディアに)出すんだよと。一度、ニュースに出ちゃったら全員がみんな「そうなんだ」っていうふうに思うじゃないですか。「何でですか?おかしいと思わないんですか?」って刑事さんに聞いたんすけど、「それは上が決めたことだから」の一点張りだった。それで、「この人たちサラリーマンなんだな」って感じたんです。

―『犯行声明』のリリックを聴くと、とにかくそのフラストレーションや怒りが生々しく伝わってきます。アルバムからのシングルとしてリリースされた「オレナラココ feat. STICKY」の歌詞にも”ポリの脚本ってすげぇ苦痛、自分勝手出すなよフェイクニュース、人の人生にゃねぇぞ Take 2”というリリックがあったり、「Prove One’s Case」でも” 証明しようにも証拠の類なんてのは元々ねぇ”という箇所があったりする。



俺が営利目的で大麻を所持していたんじゃないかって嫌疑がかけられている時点で、「捜査機関は俺の事件をそういうストーリーにしたいんだな」って感じたんですよ。でも、「事実は違う」ということは、俺は最初から申し上げていた。さっきも言いましたけど、8月に「ニュースが出た」と聞いた時に「マジで半端ねえ、すごい演出だな」と。みんなが「NORIKIOYOって売人なんだ」って思うだろうな、と感じましたし、「厚生省の麻薬取締捜査官の人や警察は、証拠もないのにそんなストーリーを作っちゃうんだ」って気持ちでした。(熊本県警は)9カ月間、内偵の捜査をしていて、俺は4カ月ちょっと勾留されていたんです。結局、1年ぐらいの間にわたって俺のことを調べてたんすよね。9カ月間も捜査していた間に、俺から(大麻を)買ったってヤツは一人もいなかった。それにも関わらず「売ってただろ」って主張しているんです。俺は、自分の携帯電話を(警察に)渡して、パスコードも教えた。こっちからかしてみたら「やってねえから、どうぞ」って話です。それでも、何も証拠は出てこない。

大麻が二つの場所にあったので、この件を巡って、所持と栽培で計4回逮捕されたんですけど、結局、調べることって一緒なんですよ。一回目の逮捕で起訴された段階で、最終的には営利目的という疑いは外れたんですよね。ニュースになったのは三回目の逮捕の時。一回目も二回目も、営利目的という事項は起訴内容から外れていたにも関わらず、三回目でもまだそう主張されていた。調べる証拠は全部一緒なのに、かつ、営利目的を裏付ける証拠もなくて起訴できないにも関わらず、捜査機関はどうしても営利目的で起訴したいんだ、という気持ちをひしひしと感じました。弁護士からは、「大多数の国民はみんな普通に警察を信じてるけど、日本の警察は彼らに都合いい部分しか証拠を使わないし、検事にいたっては証拠を改ざんすることもある。それが露呈して、懲役に行った捜査機関の人もいらっしゃいますよ」と言われたんです。「残念ながら、日本の捜査機関にはそういうことをやる人たちもいる。NORIKIYOさんの場合は既に捜査機関がニュースを出しちゃってるから、例えばそこら辺で捕まえたヤツの中に『NORIKIYOから買った』って吹聴する二人でもいたら、状況が危なくなりますね」って言われて、「怖っ」て思ったんですよね。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE