「THE HOPE」総括 2年目の開催で示した「ヒップホップのリアルなコア」

サウンドの傾向

サウンドの傾向についても触れたい。現在のトレンドを如実に反映し、この日は軽快でダンサブルなビートが終始多かった。どのラッパーも一曲はジャージー・クラブやジャージー・ドリル、あるいはトランシ―な楽曲で会場を揺らしていたのではないだろうか。デイタイムはralphの「DOSHABURI」とLANAの各曲、日が落ちてからは¥ellow BucksがC.O.S.A.を呼び披露した「What?」がジャージー系ビートによる最大の熱気だったように思う。この立地ならではの海風と軽やかなリズムの相性が非常に良く、ヒップホップフェスながら、どこか重くなりすぎない清涼感が漂う。引っ張るような低音の鳴りが軽減され細かく刻まれるようになったことで、他ジャンルのリスナーも聴きやすくなっているようにも感じる。


ralph(Photo by Daiki Miura)


LANA(Photo by Masanori Naruse)

楽曲面では、BAD HOPの素晴らしいステージにも触れたい。masasucks、伊澤一葉(ともにthe HIATUS)とKenken、金子ノブアキ(ともにRIZE)というフジロックで好評だったバンドセット編成は、ヘッドライナーにふさわしいカラフルな演奏効果を果たしていた。一日中DJセットが続いた中だからこそ、最後にバンドで変化をつける工夫が効く。特に、ギターによってBAD HOPのエモラップとしての側面がより際立ち、楽曲の情緒的な表情を引き立てることに成功していた。すでに報じられている通り、この日BAD HOPは解散ライブを東京ドームで行うことを発表。最後に難易度の高い壁を自らに課し、グループとしては第一線から退くことになる。


BAD HOP(Photo by Yusuke Kitamura)

会場の空気を掌握し魅了したBAD HOPの演奏が終わると同時に、出演キャンセルとなっていた百足&韻マンの曲「君のまま」が流れ、花火が打ち上がりフェスは幕を閉じた。近年のヒップホップ・ゲームにおいて、大規模フェスが与える影響力はますます強まっている。多くの場でヘッドライナーを務めてきたBAD HOPが不在になることで、来年以降はややゲームの様相が変化するに違いない。恐らく、東海ヒップホップシーンとAwich~YENTOWN率いるシーンを二つの筆頭としながら、ralphやTohjiといった若手も一気にヘッドライナー近辺に抜擢されスロットを搔き乱す可能性がある。その中で、THE HOPEはコアの側からヒップホップを見つめ、内側を起点に定義・刷新していく態度を今後も採っていくだろう。だからこそポリティカルな面でのアプローチにも期待感が高まるし、生々しくリアリティを帯びたフェスとして、早くも来年が待ち遠しい。

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