BTSのVが語る、ソロアルバム『Layover』発表までの道のりとメンバーたちの支え、ジャズからの影響

「ロマンス(ロマンチックに考えること)」の真意

—『Layover』がめざしたスタイルとはなんでしょうか? 個人的には、ジャズやクラシック音楽の影響を感じましたが。

おっしゃる通り、ジャズとクラシックは大好きなジャンルですから、そうしたものを自分でもつくってみたいという想いは常にありました。ジャズもクラシックも、子どもの頃からよく聴いていました。自由時間ができたり、仕事と仕事の合間に時間ができたりすると、いまもジャズとクラシックをよく聴きます。聴いていると心地よさを感じるんです。なので、聴いてくれる人がほっとできるような音楽をつくりたいと思っていました。アルバムの準備段階で、「ジャズとクラシックを聴くと、いつも穏やかな気分になれる。それなら、ARMYのみんなにもそういった音楽を届けて恩返しできないだろうか?」と思ったのです。

—初めてジャズを聴いたのはいつ頃ですか? ジャズに惹かれた理由は?

ジャズを聴きはじめたのは、14歳頃からだと思います。中学一年生の頃ですね。でも、当時は自分から聴こうと思って聴いたわけではありませんでした。サックスをはじめたので、学校の試験のために練習しなければいけなかったんです。試験勉強として、ジャズをたくさん聴きました。でも、本当は大嫌いで。試験が終わったら、もう二度と聞くもんか、と思っていました。

でも時間が経つにつれて、自然とジャズに反応するようになりました。街を歩いていて、ふと音楽が聞こえてくることってありますよね。その時に「あ! この曲知ってる。あの曲も知ってる!」ということが増えていって。なんだか新鮮でした。仕事や勉強の一部でなくなったことで、ジャズが私の中で新しい意味を持ちはじめたんです。何気なく聴いているうちにジャズが大好きになり、良さがわかるようになりました。20代前半にジャズの魅力を再発見したんです。

—ジャズの影響もあると思うのですが、『Layover』の楽曲からはノスタルジーのようなものが感じられます。Vさんご自身は、ノスタルジックなタイプですか?

このアルバムには、青春をテーマにしたBTSの「花様年華」シリーズにも通じるものがあると思います。過去を振り返って、センチメンタルな気分になる感じですね。昔のことを思い出しながら「あの頃は良かったな。あの頃に戻れたらいいのに」と思うような、不思議な感覚です。『Layover』には、こうした感情が投影されていると思います。それが特に強いのが「Love Me Again」。過去に戻りたいという気持ちを歌った曲です。MVにも、こうした感情が表現されていると思います。でも、「私の人生がもっとも輝く瞬間」は終わっていないですよね?



—終わっていませんよ。まだそんなに若いんですから。最近は、多くの若者が過去を振り返って「昔はよかったなぁ」とロマンチックに思い描く傾向があると思います。ご自身にとって「ロマンチック」とは?

「ロマンス(ロマンチックに考えること)」という言葉はよく使います。実際、よく使う言葉のひとつだと思います。私はどちらかと言うと、日常の風景の雰囲気や空気感が大好きです。何事にも意味を見つけようとするタイプの人間なんです。だから、美しい場所に行ったり、おいしいものを食べたり、きれいな景色を眺めたりなどが私にとっての「ロマンチック」なんだと思います。「スタイリッシュに生き、スタイリッシュに死ぬ」という言葉にもあるように。

—『Layover』の楽曲とVさんが手がけた過去の楽曲には雨、雪、月、夜といった自然のモチーフが度々登場します。こうしたものを通じてご自身の感情を表現しているのですね?

そうです。BTSのリーダーのRMは、詩情豊かな歌詞を書くのがとても上手です。なので、いつもRMから学んでいます。作詞を勉強したり、自分でも歌詞を書いたりする時は、自分の好きな言葉を選ぶ傾向があります。その中でも「夜」はよく使う言葉のひとつです。一日の中で一番好きな時間であり、考え事をしたり過去を振り返ったりする時間ですから。四季の中で一番好きなのが冬なので、「雪」もよく出てきます。「夜明け」も最高ですね。私は、ひとつの方向から物事を見て、シンプルに考えられる人間なので、こうしたお気に入りの言葉で自分の曲に彩りを与えたいと思っています。RMを見習いながら、一つひとつの言葉が持つ美しさを引き出すようにしています。



Translated by Shoko Natori

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