AIチャットボットに浮気される女たち「生身の人間と浮気された方がまし」 米

四つん這いになる女性ロボット3Dレンダリング(白背景)STOCKPHOTO/GETTY IMAGES

デジタル時代の浮気の定義を巡る議論が起きている。

【写真を見る】隔離中の変態たちに残された唯一の選択肢、バーチャル乱行パーティ

マーケティングマネージャーとして働く22歳のダフネさんは、元カレのデイヴとは絶対に上手くいかないとわかっていた。最初からフラグがいくつも立っていたそうだ。2022年の夏に付き合い初めてからというもの、デイヴはつまらないことでよく嘘をついた。「本人は『本当のことを言わなかった』だけで、嘘をついたわけじゃないと言い張ってましたけど」と彼女はローリングストーン誌に語った(ローリングストーン誌は本人の希望でダフネさんの苗字を伏せている。シロとは言えない元カレの個人情報を守るために、デイヴという名前も仮名だ)。だがさすがのダフネさんも、この世に(ほぼ)存在しない人物のせいでデイヴと別れることになるとは思ってもいなかった。

昨年夏、デイヴがInstagramのメッセージをスクロールしてミームを見せてくれた時、1通のDMがダフネさんの目に留まった。送信者は「Instagramユーザー」というアカウント名で、削除されて久しいことが伺えた。だがこのDMがダフネさんの目に留まったのは、ウィンクをした女性の画像が貼ってあり、「これがリンク。誰にも内緒よ」というメッセージが添えられていたからだ。ダフネさんがリンクをクリックすると、NSFW(職場での閲覧禁止)動画を販売するページにアクセスした。

デイヴを問い詰めると、「ただのアメフト系」という答えだった――「私がアメフトに興味がないのを知ってて、それ以上は質問してこないと思っていたんです」とダフネさん。「でも私にはすべてお見通しでした」。彼女はデイヴをアパートから追い出し、それきり音沙汰はない。

デイヴがメッセージをやりとりしていたのが実在のセックスワーカーだったのか、それともチャットボットだったのか、ダフネさんはデイヴに確認しなかった(メッセージの構文が変だったので、おそらく後者だろうとダフネさんはふんでいる)。だが極論を言えば、実在の人間かどうかは関係なかった。デイヴは相手が生身の人間だと思い込んでいた。ダフネさんにとってはそれが重要なNGポイントだった。「間違いなく、彼はネットでそれ系のもの、ポルノを見るつもりでした。そこは別に気にしていません」と、彼女は当時の心境を語った。「私が気になったのは、むしろ彼の意思です。彼は私との関係などお構いなしに、実在すると思っていた人物と会話をしようとしていたんです」。

ダフネさんはTikTokに動画を投稿した。動画ではオリヴィア・ロドリゴの「Get Him Back!」をバックに、「POV:彼氏が詐欺まがいのInstagramセックスボットと浮気した女の子を必死で慰める友だち」というキャプションと、実際に友人から送られた携帯メール(「うちにはアレクサもいるわよって彼氏に言えば?」)のスクリーンショットが添えられていた。すると動画への反響で、「意思」という問題がたびたび持ち上がった。

この動画は複数のプラットフォームで拡散し、閲覧回数は960万回以上。コメント欄には何が浮気にあたるのかという議論が沸き起こった(驚くことではないかもしれないが、ダフネさんによると、男性は「チャットボットとのメッセージのやり取りは浮気ではない」と考える傾向にあり、女性はえてして正反対の意見が多いという)。だが彼女が驚いたのは、自分と似たような体験をした女性がこれほど大勢いたことだ。そうした女性は交際相手がうっかりチャットボットといかがわしいやり取りをして、場合によっては結果的に脅迫されたのを偶然見てしまった。

「本当に大勢の女性がTikTokやInstagramにコメントやDMで体験談を送ってくれましたが、どれも私よりずっと、ずっと最悪でした」とダフネさんは言う。「男は脳細胞か何かが欠けてるんじゃないかと思います」。

もちろん、男性がパートナー以外の人間と性的なやりとりをしたり、ネットでアダルト系コンテンツを購入すること自体はとくに珍しいことでもなんでもない――そうしたやりとり、例えばOnlyFansのモデルとSnapchatでやりとりするのが浮気に当たるのか、という議論もまたしかりだ。こうした現象はなにも男性に限ったことではなく、ダフネさんもパパ活中の女性を装ったチャットボットから無数のメッセージを受信しているという。もっとも、ランダムに送信された最初の1通以外はスルーしている。「文字通り、男性はあんまり深く考えないんでしょうね」と彼女は言う。「目の前のことしか頭にないんです」。

Akiko Kato

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE