ジョン・バティステが日本で語る、世界のカルチャーを横断する音楽観とその裏にある哲学

 
ロイ・ハーグローヴへの敬意

―最後に話は変わりますが、あなたは『Chronology Of A Dream』(2019年のライブアルバム)をロイ・ハーグローヴに捧げていますよね。

JB:そうだね、(あのアルバムにも)カッサが参加している。

―プロダクション面に携わっていたんですよね。あなたにとって、ロイ・ハーグローヴはどういう存在でしょうか?

JB:自分のお金で最初に買ったのは彼のレコードだった。父のすばらしいレコードコレクションからではないし、母からでもない。祖父母でもなければ、姉からの影響でもない。自分で初めて買った10枚のアルバムのうち、偶然にもロイは4枚に参加していたんだ。コモンの『Like Water for Chocolate』、エリカ・バドゥの『Mama's Gun』、ディアンジェロの『Voodoo』、そしてRHファクター『Hard Groove』。当時は彼のことを知らなかったけど、どのアルバムも大好きで、それはまるで点と点が繋がっていくようだった。

10代の頃、ニューヨークに引っ越した時にロイと会ったんだ。それは偶然の出会いだった、僕はいつも彼の話を聞きたかったし、彼に会いたかった。それから、20歳で彼の3つのバンドーーRHファクター、ロイ・ハーグローヴ・ビッグバンド、ロイ・ハーグローヴ・クインテットで演奏するようになったんだ。彼のヨーロッパ、アメリカツアーに同行して、それが僕にとって初めてのヴィレッジ・ヴァンガードでの演奏だった。



ロイ・ハーグローヴとジョン・バティステの共演ライブ映像

JB:『Chronology Of A Dream』は10年前にロイ・ハーグローヴと演奏した、あのヴィレッジ・ヴァンガードでレコーディングしたんだ。このアルバムの構成やアプローチは、彼から授かった多くのインスピレーションでできている。ジャズとゴスペル、メロディとハーモニーが混じり合った、すばらしいテイストの旋律。彼は、バンドをうまくキュレーションする才能を備えていたし、バンドメンバーたちも彼から多くの影響を受けていた。彼は、僕らがレコーディングした1週間後に他界してしまったんだ。そのことに対して僕は、彼からトーチを引き渡されたかのような、彼の精神を受け取ったような、そんな気がしたんだ。

―深いつながりがあったんですね。あなたが(ディアンジェロやロイの作品を手掛けた)エンジニアのラッセル・エレヴァードと仕事をしているのも、ロイへのリスペクトなのかなって。

JB:ああ!

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ロイの人生最期の夏に密着したドキュメンタリー映画『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』。ハービー・ハンコック、ソニー・ロリンズ、エリカ・バドゥ、クエストラヴ、海野雅威などの証言も。11月17日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開。




ジョン・バティステ
『World Music Radio』
発売中
再生・購入:https://jon-batiste.lnk.to/WMR

Translated by Kyoko Maruyama, Natsumi Ueda

 
 
 
 

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