キティー・デイジー&ルイス、ロックンロール3兄弟が振り返るデビュー15年の歩み

Photo by Yukitaka Amemiya

 
10月22日に出演した「朝霧JAM」と、翌23日の渋谷クラブクアトロにおける単独公演。5年振りに来日したキティー・デイジー&ルイス(Kitty Daisy & Lewis)は、その両方で最高のステージを見せてくれた。

彼らが日本のオーディエンスの前で初めて演奏したのは2008年の朝霧JAM。ちょうどデビューアルバムの国内盤が出たタイミングで、3人ともまだ10代(デイジーが18歳、ルイスが17歳、キティーは15歳!)だった。あれから15年が経ち、ひとりひとりもバンドとしてもすっかり成長したわけだが、しかし芯の部分は何も変わっていなくて、今も自分たちの「好き」を追い求めながら楽しんで演奏しているのが本当に素晴らしいと思った。また朝霧より50分ほど尺の長かったクアトロ単独公演では各自の長めのソロやジャム的な場面も多く盛り込まれ、それぞれプレイヤーとしての能力の向上も見て取ることができた。と同時に、日本のオーディエンスとバンドとの間に確かな信頼関係が築かれていることも、大きな盛り上がりを見せたその単独公演からはっきり伝わってきたのだった。

そんな来日公演に合わせた形で、これまでのシングル曲をまとめたオールタイムベスト的な『Singles Collection』が日本だけで発売。同時にこれまでの4作のオリジナルアルバムもカラーヴァイナルとなって日本でのみ発売された。ということで、朝霧JAM翌日の昼間に行なったインタビューでは、ざっくりとこれまでを振り返ってもらうことにした。

【写真を見る】来日撮り下ろし&最新ライブ写真(全10点、記事未掲載カットあり)


渋谷クラブクアトロ単独公演のライブ写真(Photo by Masashi Yukimoto)

―朝霧JAMのステージ、最高でした。天気もよくて、3人ともとても気持ちよさそうに演奏していましたね。

キティー:すごく楽しかった。私たちが日本で初めて演奏したのが朝霧JAMだったので、そのときのことを思い出したりもしたし。

―2008年の朝霧JAMですよね。自分もあのときのことを思い出していました。3人ともまだ10代で、なのに1曲ごとに楽器を持ち替えながらブルーズやジャンプミュージックをクールに演奏しているのを観て驚いたものでしたよ。あの頃はまだフェスで演奏する経験もほとんどなかったんじゃないですか?

キティー:うん。だから特別な感じがしたのを覚えている。

デイジー:あのあと(2009年)、コールドプレイのUSツアーをサポートして大きな会場で演奏する経験を積むこともできたけど、デビューアルバムを作った頃はフェスに出るとかアメリカの大きな会場で演奏するようになるなんて想定外だったし、ましてや日本で私たちの音楽を気に入ってくれる人がいるなんて思ってもみなかったので、オーディエンスの反応のよさに驚いたし、嬉しかった。

ルイス:英語で歌っているから伝わらないんじゃないかなんて心配もしたけど、全然そんなことなくて。言語を超えたところで僕らの音楽を感じ取って楽しんでくれていることがはっきりわかったから、あれ以降、日本で演奏するのが楽しみになったんだ。




「朝霧JAM」出演時のライブ写真(Photo by Taio Konishi)

―今回の来日公演は5年振りですよね。ツアー自体、再開したのは今年の春で、それまでしばらく活動を休んでいたようですが。

キティー:フェスとか単独のショーとかいろいろブッキングされていたんだけど、ロックダウンがあったから全部キャンセルになっちゃって。それでしばらく休むことにして、ようやく今年4月のドイツのツアーからまたいろんなところに行くようになったの。

デイジー:というか、ロックダウンの前に私がふたりめの子供を産んだから。子育てに専念する意味でも少しバンドを休もうということになって。

ルイス:そうだったね。でもロックダウンの間にYouTubeとかで僕らを発見してくれた人がたくさんいたのはよかったよ。活動は休止していたけど、新しいファンベースを築けたところもあって。ツアーを再開したら以前よりも多くの人がライブに足を運んでくれるようになった。やっぱりみんな音楽に飢えていたところがあったんじゃないかな。

―デビューから15年が経ちましたが、「もう15年」という感じがしますか? それとも「まだ15年」という感じですか?

デイジー:15年……。もっと経っている気がする。実際、私たちは子供の頃から一緒に演奏しているので、ずいぶん長く音楽をやっているなぁって。

ルイス:初めてのギグから数えると、20年くらいステージに立っているんじゃないかな。でもライブをする上での気持ちはそこまで大きく変わってない。僕らは本当に若い頃から人前で演奏してきていて、どこに行っても同世代の子より年上の人たちと話す機会のほうが圧倒的に多かった。大人たちのなかに放り込まれた子供たちって感じで、その状態がけっこう普通のことだったんだ。それに「バンドをやるのはクールだ、バンドを始めよう」って始めたわけじゃなくて、子供の頃から当たり前のように音楽をやる環境が家にあって、自然に楽器を鳴らしていたから。ただ自分たちが楽しむためにやっていただけっていう。

キティー:それは今でもそうだよね。今も自分たちを楽しませるためにやっている。その延長線上でやっているというのはまったく変わっていなくて。


Photo by Yukitaka Amemiya

―それは観ていてわかります。でもデビューアルバムを聴いたときはやっぱり驚きましたよ。10代の3人がキャンド・ヒートやマディ・ウォーターズ、ルイ・ジョーダンなんかの曲を楽しそうにカヴァーしているんですから。

デイジー:子供の頃から家で父がギターを弾いて歌ってくれていて、それに合わせて私たちも歌っていたから。そもそもそのへんの曲はどれも父の歌う曲として親しんでいて、オリジナルを聴いたことがなかったの。だからオリジナルを初めて聴いたときはヘンな感じがした。「へえ~、キャンド・ヒートの『Going Up The Country』って、こんな感じなんだ~?!」みたいな。

ルイス:「I Got My Mojo Working」も「Honolulu Rock-A Roll-A」もそう。僕らが聴いていたのは父の歌声のそれらだったから。あとになってオリジナルを聴いて、「へえ~」って(笑)。




―あのデビューアルバム『Kitty,Daisy&Lewis』(2008年)で既にデジタルを排除して全編アナログ・レコーディングをしていましたよね。ヴィンテージのマイクや8トラックのテープレコーダーを使って録っていたわけですが、そうした機材はもとから家に揃っていて、お父さんから使い方を習ったんですか?

ルイス:(マスタリング・エンジニアの)父が電子楽器や機材の類をいろいろ触っているのを見て自分も好きになったんだけど、どういうふうにレコーディングしたらいいのかといった知識はなかったので、ミキサーの組み立て方とかそういうのをひとつずつ覚えて、コツコツやっていった感じだね。自分たちがレコーディングで最も重きを置いているのは、その瞬間のエネルギーをいかにキャプチャーしてレコードに封じ込めることができるかということ。昔のいいレコードを聴くと、必ずミュージシャンがそれをプレイしたときにしか出せないエネルギーがしっかり捉えられている。だから、どうしたらそうすることができるかってことを考えながら少しずつ機材を揃えていったんだ。

デイジー:レコーディングしているときの部屋の空気感みたいなものが大事だよね。

ルイス:うん。例えば祖母が掃除機をかけていたら、その音も入っちゃうわけだけど、それはまさしくそのとき起きていることなんだから残してもいいと思うんだよ。ラップトップを使って録ったら、そういう空気感は絶対に出せないよね。

Translated by Tomomi Hasegawa

 
 
 
 

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