NEX_FEST総括、メタルの新時代を示した「音楽的越境」、ブリング・ミー・ザ・ホライズンの功績

新しい時代の幕開けを示す一日

以上のような音楽的越境や自由度がピークに達したのが終盤の流れだった。「メタルダンスユニット」として知られるBABYMETALは、80〜90年代のHR/HM(ハードロック/ヘヴィメタル)を軸としつつ、そうした領域では敬遠されがちだった越境的な要素も積極的に取り込み、ジャンル批評とエンタテインメント性を極めて高い水準で両立してきた。Paleduskの音楽的挑戦も今のメタル関連領域では世界屈指で、コード・オレンジやFire-Toolzにも通ずる過剰な展開をポップに聴かせ楽しませる手腕には右に出るものがない。そして、トリを飾るBMTHは、コロナ禍以降のEP連作「POST HUMAN」シリーズのコンセプトを体現するステージのもと、先述のような越境性を極上のセットリストで示してくれた。この3組の並びはNEX_FESTの総括として完璧だろう。最初から最後まで余すことなく充実した、本当に素晴らしい一日だった。




BABYMETAL(Photo by Masanori Naruse)




Paledusk(Photo by Yu Kubo)






ブリング・ミー・ザ・ホライズン(Photo by Masanori Naruse)



実のところ、こうした挑戦をする大規模フェスはNEX_FESTが初めてというわけではなかった。例えば、BMTHとBABYMETALがそれぞれ1日目と2日目に出演したLOUD PARK 2013では、ヘッドライナー格以外のほとんどをジャンル越境傾向のあるバンドが占めていて、従来からのHR/HMファンを主な客層としつつその嗜好を拡張しシーンの持続可能性を高めようとする意志が滲んでいた。これは、OZZFESTやKNOTFEST、ダウンロード・フェスティバルといった海外発のフェスも同様で、HR/HMファンとラウドロック(ニューメタルやメタルコア以降のメタル寄りロック)ファンの分断傾向に配慮しつつ橋渡しに苦闘してきたのが、日本におけるヘヴィ・ミュージック関連フェスの歴史でもあったのだ。

NEX_FESTでは、フェスのヘッドライナー格(一部の大物バンドに良くも悪くも固定化されていた感がある)が若い世代のBMTHに更新された上で、HR/HMファンとラウドロックファンの双方を納得させるラインナップが構築され、チケットも早期に完売している。これは、各アクトの実力や魅力に加え、今のメタル関連領域においてはジャンル越境性を軸に据えたバンドが普通になってきたことや、そうしたバンドがポップミュージックとの接続を示すことにより、ヘヴィ・ミュージックのファンがポップなものをあまり敬遠しなくなってきたことも少なからず関係しているのではないか。そういう状況が目にみえる形で示されたという意味でも、NEX_FESTは、新しい時代の幕開けを示す一日になったのだと思う。ここからシーンがどう広がっていくのだろうか。それを目撃できるのが本当に楽しみだ。

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