HR/HMの「生ける伝説」を目撃「Power Trip」レポ

AC/DC(Photo by C.WILSON for Power Trip)

1日にたったの2組の出演者、しかも、AC/DC、メタリカ、ガンズ・アンド・ローゼズ、アイアン・メイデン、ジューダス・プリースト、トゥールというそれぞれが単体で数万人を呼べるヘッドライナー規模のラインナップを迎えた夢のようなフェス「Power Trip」が米カリフォルニア州インディオにて10月6〜8日に開催された。

【写真まとめ】「Power Trip」ライブ写真

会場はエンパイア・ポロ・クラブ。Coachella Valley and Arts Festivalと同じ会場だ。思い起こすのは、2016年にCoachellaのコンサートプロモーター、Goldenvoiceが同会場で開催したDessert Trip。こちらもポール・マッカートニー、ボブ・ディラン、ローリング・ストーンズ、ザ・フー、ロジャー・ウォータースそしてニール・ヤングというロック界のレジェンドだけを迎えた3日間のフェスで1日あたり7万5000人を集めたが、そのHR/HM版といったところだろう。SNSでご覧になった方もいるかもしれないが、ドローンで撮影した観客エリアは8万人を超える観客が足を運んでいたそうで実に壮観だった。


Photo by A.Bonecutter for Power Trip


Photo by Q.TUCKER for Power Trip

「これはお祝いだ!」とステージで叫んだジェイムズ・ヘットフィールドをはじめメタリカのメンバーは3日目の出演にもかかわらず初日から会場に入って楽しんでいたように、このフェスは出演者にとってもさながら同窓会の様相を呈していたのかもしれない。そんな3日間を駆け足で振り返る。

普段なら考えられない6時半という早い時間にトップバッターとして現れたのはアイアン・メイデン。1ステージを2バンドで使うということで、当然ながら彼らであってもその後に控えるガンズ・アンド・ローゼズのベースとなるセットが土台にある上に設置されているので、映像含め演出が普段のメイデンのステージよりも簡易的。セットリストはこのイベントのために特別に組まれたものは一切なく、2023年のFuture Pastワールドツアーと同じセット、つまり、アンコール含めた全15曲中5曲を最新アルバム『Senjutsu』(2021年)からという、レジェンドながら常にアップデートされているバンドというステイトメントだと受け取った。最高気温37度を超えたこの日、ライブの最中もまだ30度をくだらない暑さに観客の我々ですらぐったりとしている中、御年65歳のブルース・ディッキンソンが厚手のコートやレイヤーを重ねた衣装で軽やかにステージの隅々や後方の壇上まで駆け上がり、見事な歌唱を披露する姿はもはや超人にすら見えた。そんなブルースが「メイデンファンは人種やその他のことを気にしないと思っている。私たちは家族であり、皆仲良くしている」と語り、この日の公演は彼らと同世代からその孫世代というジェネレーションにとどまらず、世界中から足を運んだファンの気持ちを一つに繋ぐ実に心温かなものだった。


アイアン・メイデン(Photo by Q.TUCKER for Power Trip)



2番目に登場のガンズは近年の印象だと比較的時間通りに登場しているのだが、メイデンの演奏時間が想定よりも長めだったためか35分遅れて開演。『Appetite For Destruction』(1987年)からお決まりの「It’s So Easy」からキックオフ。現在回っているツアーではアンコール含めると33曲もの長尺セットも珍しくないのだが、同会場は演奏時間制限が深夜12時までだったようで、アクセル・ローズが「門限があることを知ったよ」と、恐らく予定していたアンコールをカットして、ラストの定番「Paradise City」を披露、それに合わせて花火が上がり1日目は終了した。2016年にスラッシュとダフ・マッケイガンがバンドに復帰後コンスタントにツアーをしている功績だろうか、バンドとしての結束がこれまで以上に強いものになっていることを感じられた。


ガンズ・アンド・ローゼズ(Photo by Kevin Mazur/Getty Images for Power Trip


ガンズ・アンド・ローゼズ(Photo by C.WILSON for Power Trip)



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