ノエル・ギャラガー来日公演が開幕 ソロ〜オアシスの軌跡を辿る名唱名演、鎮魂の「Live Forever」

ステージ上で実践されるソロでの音楽的トライ

クリス・シャーロックは序盤から乗りまくっていて、次の「Council Skies」では早くもザ・フーのキース・ムーンよろしく、スティックを空中に放り上げてキャッチ、を始める。ノエルのボーカルも絶好調、高域での声の張りは過去最高では?と思うほど素晴らしい。アコースティック・ギターが引っ張る洗練された曲だが、間奏でリフのグルーヴの中にローリング・ストーンズの「Jumpin' Jack Flash」が浮かび上がってくる仕掛けなのも、古典からの引用によって創作を続けてきたノエルらしい。

そうした“引用王”ノエルの健在ぶりを示すもうひとつの曲が「Open The Door, See What You Find」。60sサイケ・ポップのマニアが聴けば、即座にレフト・バンク「Barterers And Their Wives」からの引用が含まれていることに気付くAメロを経て、そこから飛び立つような開放感のあるサビへとなだれ込んでいくひらめきは、やはり天才的なのだ。「何よりもチューンが大事」と事あるごとに言っているだけのことはある。


Photo by Mitch Ikeda


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ビートルズ時代のポール・マッカートニーやゾンビーズを彷彿させる路線に徹した「We're Gonna Get There In The End」で華やいだ雰囲気になった後、しみじみと聴かせる「Easy Now」では逆にジョン・レノンへの憧憬が露わになる。この2曲を足したら、ビートルズの話題の新曲「Now And Then」よりビートルズっぽく聞こえるのでは……とも思った。後者の印象的なギターソロはゲムが担当、ここまでノエルはアコースティックギターしか弾いていない。

ようやくノエルがエレキギターに持ち替えた「You Know We Can't Go Back」で、またガラッと雰囲気が変わる。アップテンポでビートが効いた曲ながら、ジェシカ、ラッセル、ノエルのハモりが前面に出て、これもスタジオ・バージョンから随分と“育った”という印象を受けた。バラードの「We're On Our Way Now」でも、和声をうまく使ったアレンジが耳に残る。オアシスという“バンド”の中にとどまっていたらできなかった音楽的なトライを、地道にひとつずつ試してきたソロ・キャリアだったな、とも改めて思う。


Photo by Mitch Ikeda


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アップテンポの「In The Heat Of The Moment」が始まると、またしてもクリスが俄然元気に。取り損ねるのではと心配になるほどスティックを高く放り上げるが、難なくキャッチしてリズムを崩さない。アイシクル・ワークスやザ・ラーズ、ワールド・パーティー、ライトニング・シーズでもプレイしてきたこのベテラン・ドラマーは来年で還暦を迎えるはずだが、独特な跳ね方をするドラミングの魅力はまったく変わらない。

続いてNGHFBsの1stアルバムから歌われた「If I Had a Gun...」にはセンチメンタルにならざるを得なかった。この名曲はもともとオアシス在籍時に書かれたもので、場合によってはゲムやクリスとレコーディングしていた可能性があるのだ。結果的にソロ作に収められることになったが、ノエルもこの曲を気に入っていて、インタビューした際に「この曲をシングルに選んだことをどう思う?」と逆に訊き返されたことを思い出した。ノエルを傲慢な自信家のように思っている人がいるかもしれないが、ああ見えて曲の感想を知りたがるタイプなのだ。逆に、同じくHFBsの1stに入れられた「AKA... What a Life!」は16ビートを強調したリズムアレンジがオアシスのコンセプトとはかけ離れていて、ソロでやることに意義のある曲だったな……と、独立したばかりの時期の記憶が次々によみがえる。

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