Aile The Shotaが語る第1章の終わり、「あなた」に向けて歌った理由

Aile The Shota(Photo by Yukitaka Amemiya)

2022年1月に1st EP『AINNOCENCE』をリリースし、2nd『IMA』、3rd『LOVEGO』を経て、ついに4部作を締めくくるEP『Epilogue』を完成させたAile The Shota。ここまでの2年間を「Aile The Shotaの序章」と位置付けて、次の章ではまだ誰も聴いたことのない新しいJ-POPを生み出し大衆的な存在になるべく、鍛え上げた筋力でさらに駆け上がっていく。

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ダンスシーン出身者として人々を踊らせるビートを追求し、愛や生命を讃える言葉を独自のフロウと声で響かせるAile The Shotaサウンドは、この2年間でいかにして磨かれていったのか。『Epilogue』完成を機に、たっぷりと語ってもらった。なお12月25日発売の雑誌『Rolling Stone Japan vol.25』には、撮り下ろしの別カットとともに計6ページでこのインタビューが転載される。

―まず2023年の活動を振り返ると、昨年に引き続きコラボレーションが多く、自身がライティングにも関わっている客演ものを9曲リリース、さらにはBE:FIRSTのMANATOさん、SOTAさんとのユニット「ShowMinorSavage」の活動もありました。

客演が多かったですね。まだ作り途中のものとか、ライブで披露してるけどリリースしてないものもあるんですよ。客演のワークスを増やし続けることがAile The Shotaの序章のタイミングでは大事だと思っていたし、自分の曲で毎回プロデューサーを変えているのも同じ理由ですけど、いろんなシーンに足を引っ掛けている感が出るワークスをやり続けたいと思っていたので、それが実ったなと思います。並べたときにdawgss、GANMI、Sam is Ohm、AK(-69)さんとかがいて。











―経歴もジャンルもさまざまなところと関わりながら、Aile The Shotaのルーツがより濃く浮き彫りになるような並びですよね。

Aile The ShotaのJ-HIPHOP、J-R&Bルーツを支えてくれているなと思います。ラッパーのJs Morganとか、自分の出身であるダンスやヒップホップシーンの兄貴分や後輩とのリンクアップも続けたいですね。(客演した楽曲のリストを見ながら)いやあ、満足ですね。友達とか、ワッツアップして「一緒にやろうね」と言ったりする中で、フィーリングとタイミングがばっちり合った人とやっているのが現状なので。

―レコード会社とプランニングを練って、戦略的にコラボレーション企画を作っていく、とかではない。フィーリング重視でShotaさんのフットワークの軽さから生まれた音楽たちであると。

claquepotも、先月末とかに連絡が来て、来月もう出すみたいな(笑)。対バンもしたし、claquepotが年末にアルバムを出すから、やりましょうって。タイミングとフィーリングが大事ですね。

―「フィーリング」の部分を少し噛み砕くと、どういう人たちと特にやりたいと考えていましたか。

GANMIとかSam is Ohmはファンだったからよりハングリーにやりたいなと思ったし、僕からのスーパーリスペクトに「一緒にやらない?」と返してくれた人たちもいます。「こういう曲をライブでやりたいな」ということを描けるかどうかはちょっと考えたかもしれないです。MATZとやった「DAWN」とかは自分のワンマンのセトリにおいて武器になりました。あとは、同じ世代を盛り上げたいという感覚もあります。同世代でシーンをいい意味でごちゃごちゃにしたいし、Aile The Shotaとしてクロスさせる中心にいながら、それをコントロールできるようなところまで行きたいという想いもあったり。

―近いシーンにおける20代半ばの「世代感」みたいなものを、Shotaさんはどう感じていますか。

すごくやりやすい世代だなって思いますね。SIRUPくん、(向井)太一くんとか、アーティストとしてリスペクトしている人たちがちゃんとお兄ちゃんお姉ちゃんとしていて。同い年で同級生みたいな感覚で出会えるのがdawgssの(森光)奏太、idom、eillとか。Skaaiからも全然違う刺激を受けたりするし。ライバル意識がまったくないのが僕らの世代な気がします。「あいつに絶対負けねえ」みたいなものがない。でもちゃんと考えていて、「自分がキーマンになる」という感覚を持っている人が多い気がします。ライバル視はしないけど、シーンにおける自分の存在位置に対してストイックな人が多いですね。それはAile The Shotaの次の章を描きたいと思ったときに影響を受けていると思います。

―この1年、いろんな人と音楽を作ってきたことで、Aile The Shotaの個性をどのように捉えましたか。これだけいろんな音楽性と混ざり合っても自分のオリジナリティとして発揮できているものが確実にありますよね。

トップラインと声だと思いますね。特に「Pandora」はヒントをもらえた曲でした。「Pandora」のリアクションが自分の想像の倍以上というか、もうすごすぎて。あれがなぜあんなに浸透しているかというと、Yohji IgarashiサウンドにAile The Shotaの大衆的な要素を乗せたからだと思う。メロディラインはめちゃくちゃ複雑で、カルチャー色の強いフロウをやってるし、ヴァースも1番しかないとか、結構変則的なことやっているんですけど、それでもポップとして受け入れられている気がするのは声質なのかなと。「僕が歌うとキャッチーになるトップライン感」みたいなものがあることを感じますね。Yohji IgarashiとAile The Shotaのバランスは、それこそシーンにおけるパンドラ的なものに近い気がするし、「J-POPSTARです」って自分から宣言してるやつが「Pandora」をやることがAile The Shotaにとって大事な要素のひとつなんじゃないかなと感じます。



―確かに、J-POPの普遍的なメロディラインかと言われると、そうじゃなくて。「J-POPSTAR」とかも意外とクセのあるラインを歌っているのに、でもキャッチーさがあるのは何なのだろうかと思ってました。


「カラオケで簡単」と言われたことは一度もないので(笑)。僕がキャッチーだなと思うものって、多分ちょっと変化球なんですよね。でもそれは自分が聴いてきたJ-POPとか大衆的なものを吸収した状態で僕が判断するキャッチーさで、だからみんなのどこかに刺さっているんだと思います。「新しくて懐かしさがあるね」って、いろんな曲で言われるんですけど、自分が吸収してきたルーツ、及び、そのルーツが吸収しているもの――たとえばドリカム、及び、ドリカムが吸収してるR&Bとか――を自分の中で綺麗に並べられているのかなと思います。それが新しい「大衆的」の作り方だという感覚があります。

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