「原音再生スピーカー」のパイオニア、KEFが東京・青山に体験型フラッグシップショップをオープンした理由

(中央)「KEFジャパン コマーシャル・ディレクター」の福島真澄氏 / (左)「クライン ダイサム アーキテクツ」共同代表であるアストリッド・クライン氏と(右)マーク・ダイサム氏(Photo by Kimi Mikawa)

KEFが12月9日、東京・青山にフラッグシップショップとなる「KEF Music Gallery Tokyo」をグランドオープンした。

KEFは1961年、英国ケント州のメイドストーンで誕生したスピーカーブランドである。創業者のレイモンド・クックは国営放送BBCの音響エンジニア。レコーディングスタジオのスピーカーで鳴らされたサウンド、つまり作者が意図した「原音」をそのまま届けたいという彼のこだわりは、メイドストーンの小さな町工場にてハンドメイドでスピーカーを制作していた時から、現在に至るまで一貫して変わらず当社のミッションであり続けている。

今回オープンする「KEF Music Gallery Tokyo」では、Hi-FiスピーカーやワイヤレスHiFiスピーカーなど、KEFの様々なモデルを実際に「体験」することができる。また「ハイ・フィディリティ・サウンドのエクスペリエンスセンター」というコンセプトのもと、同社のコミュニケーションハブとして今後さまざまなクリエーターとコラボレーションしたコンテンツを、随時発信していく予定だという。

今回のフラッグシップショップの設計を担当した「クライン ダイサム アーキテクツ」の共同代表であるアストリッド・クライン氏とマーク・ダイサム氏、そして「KEFジャパンコマーシャル・ディレクター」の福島真澄氏に、ブランドのポリシーやショップへの思いを語り合ってもらった。

──KEFが持つ、他のスピーカーブランドにはない特徴についてお聞かせください。

福島真澄:最大の特徴は、当社のシンボルともいえるドライバー「Uni-Q」を搭載していることです。通常のスピーカーは高域、中域、低域それぞれ別個のユニットが搭載されているのですが、高域と中域を結合したこの「Uni-Q」により、安定した再生が可能となりました。また「タンジェリンウェーブガイド」という、スピーカー中央にあるプロペラのような羽が、部屋全体に音を均等に分散させます。それによって部屋のどの空間にいても、同じような音響効果を楽しむことができる。スウィートスポットの奪い合いにならないわけです(笑)。


KEF LSXII

またKEFは、マイケル・ヤングやロス・ラブグローブ、エリック・チャンら著名なデザイナーとのコラボレーションを積極的に行ない、スピーカーとは思えぬほど洗練されたデザインを持っています。昨今、デバイスの多様化やブロードバンドの進化などにより、音楽の聴き方や映像の楽しみ方の幅がどんどん広がっています。そこでリスナーのニーズに合わせ、イヤホンやヘッドホンから2300万円のフラッグシップモデルまで、さまざまな製品を開発・販売してきました。



初めてKEFのスピーカーで音楽を聴いたとき衝撃を受けたと語る福島真澄氏

──今回、KEFの直営店「KEF Music Gallery Tokyo」がオープンすることになった経緯、背景についてお聞かせ下さい。

福島:当店が目指しているのは、ハイ・フィデリティ・サウンドのエクスペリエンス・センター。音響はやはり「体験」が重要であり、正しく最高の音響体験をリスナーにしていただくことが、ブランドを理解していただくための最も近道という考えがベースにあります。そのためには東京で、しかもファッションの中心地である青山という場所でフラッグシップショップをオープンすることに意味がある。商品を販売するだけでなく、KEFサウンドを体験する「場」にしたいという強い思いもあり、このたび有楽町から移転してまいりました。



「KEFスピーカーのある暮らし」をイメージしやすい空間を心がけましたと語る、アストリッド・クライン氏

──お店の前に着き、まずはスピーカーに模した建物の外観に驚かされました。「クライン ダイサム アーキテクツ」のお二人は、設計するにあたってどのようなコンセプトを掲げたのでしょうか。

アストリッド・クライン:リニューアル前、「なんだかスピーカーのような形だね」と思ったところから始まりました。「だったらいっそ、スピーカーみたいにしちゃえばいいんじゃない?」と、半ば冗談で言ったアイデアが通ってしまったんです(笑)。結果としては、KEFのメッセージがダイレクトに伝わるうえに、通りかかった誰もが「なにこれ!」と驚くような、インパクトのあるデザインになったと思っています。

──各フロアはどのような作りになっているのでしょうか。

マーク・ダイサム:1階は、ワイヤレスHiFiスピーカーやヘッドホン、英国のスポーツカーブランド「ロータス」とのコラボ商品など主に最新機種を展示した、いわば「ギャラリー」のようなフロアにしました。通りがかりの人を含め、誰もが気軽に入って来られるようオープンな空間にすることを心がけています。

店内の奥に入っていくと、地下に続いているのがリスニングルーム。ここはKEFのフラッグシップモデルMuonを「体験」できる場所です。ビルの中央にはシェルフタワー(棚柱)を設置し、KEFのこれまでのヒストリーをさまざまな展示物とともに振り返りながら階段を移動してもらえるようにしました。2階はイベントスペースで、さまざまなアーティストとコラボレーションしたコンテンツを随時発信していく場所にしたいと思っています。





クライン:店全体として、アットホームな雰囲気が伝わるようにしたいというのが私たちの共通認識でした。そして、先ほど福島さんがおっしゃったように、音楽との向き合い方はリスナーによって違います。多種多様なライフスタイルに合わせたスピーカーを提案できる場所作りといいますか、訪れた方が「KEFスピーカーのある暮らし」をイメージしやすい空間を心がけました。

──みなさんそれぞれの、KEFに対する思い入れを聞かせていただけますか?

福島:私は初めてKEFのスピーカーで音楽を聴いたとき、かつて聴いたことのないような音響に衝撃を受けました。奥行きや広がりによるあまりの「没入感」に、「今まで聴いていた音って一体なんだったの?」と思わず叫んでしまったんです(笑)。私は決してオーディオマニアではない、ごく普通の音楽好きです。世の中にはそういう人がたくさんいると思うのですが、このスピーカーを体験していないなんて本当にもったいないと思うんです。一人でも多くの方に、まずはこのKEFサウンドを「体験」してほしいという思いだけで、この仕事を続けていると言っても過言ではありません。



左から「クライン ダイサム アーキテクツ」の共同代表であるアストリッド・クライン氏とマーク・ダイサム氏(Photo by Kimi Mikawa)

クライン:私も音楽に対してはごく普通のリスナーであり、個人的には音響よりデザインを重要視している方なのですが(笑)、KEFを一目見た時に「こんなにかっこいいスピーカーがあるんだ!」と思いました。もしかしたら機能性を考えた結果、こういうフォルムになったのかもしれませんが、まるでアートのようなデザインの美しさに惚れ込みました。

ダイサム;驚かされるのは、スピーカーの正面でなく裏面も美しいこと。そのため、壁に背を付けて設置する必要なく、どこにでも置くことができるんです。個人的にはKEF初期に発売したアルミ製のBluetoothスピーカーMuoがお気に入りです。Muonと同じくロス・ラブグローブがデザインしたフォルムがとても美しく、大学に進学した娘が気に入って寮へ持っていってしまいました(笑)。なので、今は自宅でLS50を愛用しているのですが、我が家を訪れた人はみな音の良さに感動してくれますね。



スピーカーの正面でなく裏面も美しいのがKEFの魅力と語る、マーク・ダイサム氏

──今後、「KEF Music Gallery Tokyo」ではどんな展開を考えていますか?

福島:ハイ・フィディリティ・サウンドを幅広い層にお伝えすることで、それが当たり前のように浸透していくような活動をしていきたいと思っています。製品をただ販売するだけでなく、そこにあるストーリーをご紹介するためには、我々だけでなくアーティストやプロデューサー、エンジニアなどさまざまなクリエーターとコラボレーションを行ない、その方たちの視点を通してお伝えすることが大切だと思っています。何度も訪れたくなるような「場」にするため、これからも定期的にコンテンツを発信し続けますので、どうか皆さんお気軽に足をお運びください。



KEF MUSIC GALLERY TOKYO
オープン日 : ⁠2023年12月9日(土)
名称 : KEF MUSIC GALLERY TOKYO
所在地 : 東京都港区南青山5丁目5番6号
営業時間 : 11:00〜19:00
交通 : 東京メトロ表参道駅A5出口徒歩3分
URL : www.kef.com


KEF Music Gallery
Tel: 03-3409-2150

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