エル・デスペラードが語る、自由なパンク精神とプロレス観の源流

エル・デスペラード(Photo by Mitsuru Nishimura)

新日本プロレスのビッグマッチである1.4東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM 18 in 東京ドーム」でジュニアの至宝であるIWGPジュニアヘビー級王者・高橋ヒロムに挑む、ならず者ルチャドール、エル・デスペラード。彼もまた、ジュニアの可能性の拡張とジュニアの地位向上を実行した1年間を過ごしていたように思う。デスマッチにも果敢にチャレンジした2023年。DDTやFREEDOMSへの参戦、アメリカ・GCWのデスマッチワンデイトーナメント出場、盟友・葛西純とタッグを組みモクスリー&ホミサイドとの“超刺激的”NO DQマッチなどなど、名場面製造機と言っても過言ではない彼に音楽の話を軸に話を聞く。謎多き、エル・デスペラードの素顔を紐解いていく。

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―Rolling Stone Japanはカルチャー誌ということで、今回は音楽を切り口としてインタビューを行おうと考えていまして。デスペさんは、スタイルブックの中でBRAHMANのTOSHI-LOWさんと対談されていたりもしますが、ずっとパンク寄りの音楽がお好きという感じなんですか?

ロック、パンク、ヒップホップを聴いていましたね。ニューエラが大好きなのは、海外のヒップホップ・アーティストがみんなニューエラを被っていたのに単純に影響されたから。当時は何個も買えなかったので、ある程度仕事で稼いで好きなものを買えるタイミングでいちばん嬉しかったのは、憧れていたものを買えるようになったことでした。ニューエラもたくさん買ったり、好きな声優さんのグッズを買ってみたり。お金を自由に使えるようになって増えたのは、ニューエラとアニメ関係とバンド関係のグッズでしたね。

―コレクターになりたいと思うくらい、ニューエラがお好きだった。

服に合わせて被らないと帽子もそれじゃない感出るじゃないですか。そうすると黒一辺倒や白一辺倒のどちらかになってしまうので。だったらいろんな色を買ってそれに合わせて服も選べるようにしたいなと。

―なるほど。ファッションに目覚めた頃から、キャップが好きだったんですか?

キャップありきですね。現状もプロレスラーの中では締まった体ではないんですけど、若いころはデブがコンプレックスで服を買えなかったんです。自分の外見にコンプレックスがあると自分がいいものを着るのが恥ずかしいという気持ちになってしまって、いちばん無難なところに落ち着いていったときに、靴とキャップだけは好きなものを買えたんですよね。

―ちょっとぽっちゃりしていた?

単純にデブでしたよ。小学校終わりで80kgはあったので。柔道をやっていたから、重い方が強いというのが小学校のころは単純にあったので。大人になっても重量級の方が基本的には強いじゃないですか。というのもあって、小学校の柔道は重い方が強い。練習もちゃんとしてたし、多少太ってもいいよという感じだったんです。親父も柔道をやっていたので、息子がある程度成績を出すと嬉しかっただろうし。とはいえ県大会だと全然成績は出なかったですけど、地方大会なら相手になるのは1〜2人くらいしかいなかったです。お山の大将ですけどね。

―そういう少年時代の中で音楽はどういうものを聴いていたんですか?

小学4年生くらいのときに、6年生を送る会というイベントがあって。そのときに、その年から担任になってくださった新卒の男性の先生が、 THE BLUE HEARTS の「TRAIN-TRAIN」を流してくれて。そこで初めてこういう音楽に触れた感じがありましたね。



―デスペさんの中で、「TRAIN-TRAIN」はすごくインパクトがあった?

ありましたね。ただ小学生なんて音楽の何がどうすごいかなんて全く分からないじゃないですか。その中でジャンル分けというものもないし、いまだに音楽ってどれがどれって明確に名前をつけられないけど、好きだったら聴くというか。好きという理由だけで選り好みしないで音楽を聴き続けることができているのは、あのときに聴いた「TRAIN-TRAIN」の存在が大きいです。

―周りで流行ったりはしたんですか?

いや、こういう言い方をするとアレだけど周りは流行り物というか。そのときに新しく出たミスチルの何か、スピッツの何か、そんな感じの買い方だったと思います。みんな聴いてるしという側面の方が大きいのかなって。ちょっと時間が経ってから、僕が浜田雅功さんの「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント~」のCDを買ったときに「今それを買ってんの?」って言われたことがあって。リリースから半年くらい経ってからだったんですけど、そのときに音楽を聴くのに早いも古いもあるんだなと思ったんです。ちなみにそれが人生で2枚目のCDでした。

―H Jungle with tだったんですね。

はい。でも2枚目でいきなりこんなことを言われるの?って(笑)。辛辣!って。それで言ったら1枚目は加藤茶の『ズンドコ伝説』ですから。発売から何年経っているか分からないじゃないですか!

―確かに。そこからどんな音楽を?

うーん、その後買ったのは「ポケモン言えるかな?」だったかな。でも、周りではSHAZNAが流行っていましたね。僕も聴いてはいましたけど、当時は僕が知ってる中でとんでもないV系ブームが来ていた時代だと思います。SIAM SHADEとかもいましたし。

―V系には惹かれることはなかった?

多分ヴィジュアル的な部分でカッコいい・美しい男性というものに自分がコンプレックスを持っていると、すごく惹かれるかすごく敬遠するかのどちらかだと思うんですけど、僕は敬遠した側だったんです。だから音楽はいいなと思っていて、LUNA SEAとかを聴いて何となくかっこいいな、すごいなと思うけど、そこまで聴き込むことはなかった。今でこそリスペクトがあるんですけど、そのときはすごくカッコいい歌い方をしてすごく美しいメロディというのにはハマらず、当時は完全にパンク好きでした。


Photo by Mitsuru Nishimura

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