Novel Coreが語る、期待と後悔を経て手にした「本当の自分」と武道館ライブ、『HERO』の真意

自分の中にあるボカロのルーツ=武器を大胆に使う

―ボカロの文脈は日本の音楽シーンでどんどん広がっていて、米津玄師、YOASOBI、Ado、キタニタツヤ、なとりとかを筆頭に、今の10-20代前半あたりに愛されてトップチャートに入ってくる音楽において「ボカロの要素をいかに面白く新しくやるか」というところは大きいですよね。

Novel Core:ずっと真夜中でいいのに。、ヨルシカ、対バンさせてもらったyamaさんとかもそうだし。初めて買ったCDはぐるたみんで、中学生の時期にkemuさん、じんさんとかの世代のボカロPを総ナメにして聴いていたので、もともとそういうものが自分のルーツにあるんですよね。Ayaseさんと食事会で一緒になったとき、AyaseさんのボカロPとしての活動もそれ以前のバンドマン時代も好きだったので、その話を本人にして、「この世代のこのボカロの曲が好きで」みたいな話をしていたら「俺よりボカロ詳しいよ」って言ってくださって(笑)。邦楽ヒッツを聴いてると、どこかしらにあの時代のボカロの色が混ざっているんですよね。今まではその色を一切出さずに、「ラップをする人」「ロックテイストのもの」というくらいのところで落ち着いていたけれど、もっと鮮明になるだけで破壊力が増すと思う。なので、むしろ今まで使ってなかった武器を大胆に使います、というのがここからかなと思ってます。

―今回のアルバムで、特にそういうことが大胆にできたと思っている曲は?

Novel Core:それはもう明確にあって、「カミサマキドリ feat. Takuya Yamanaka (from THE ORAL CIGARETTES)」なんです。これ、めっちゃボカロなんですよ。これはTHE WILL RABBITS(Novel Coreのハウスバンド)と作ったんですけど、デモを作る段階からクマさん(バンマスであるギターのYuya Kumagai)に曲の構成からメインのギターリフの雰囲気、コード進行、トップライン、掛け合いの量、お客さんが歌えるところの作り方とか、全部僕がめちゃくちゃ細かく指示しながら、メンバーともたくさんアイデアを出しあって。今まではプロデューサーさんと1対1でセッションさせてもらって、その化学反応を楽しむような制作が続いていたので、「僕の頭の中に当初あったものとは違うけど、これもかっこいいよね」みたいなものが数多く世に出ていたんですけど、「カミサマキドリ」に関しては、解像度的に僕の頭の中にあったものをそのまま作った感じです。そこに誤差が1ミリもない曲は、実は初めてなんですよね。しかもそこにヤマタクさんと、コーラスで花譜ちゃんが入ってくれているという。今まで絶対的になかったアプローチだけど、今まで僕がやってきたロックの色、ラップ、皮肉めいた風刺的な歌詞とかを全部詰め合わせているこの曲が、今回のアルバムに入っていることは僕的にすごくデカいですね。



―この曲に山中拓也さんを呼んだのは、どういう想いや考えからでしたか?

Novel Core:まずはストーリー回収。「SOBER ROCK」(メジャーデビューシングル)のギターをヤマタクさんが弾いているんですよ。「SOBER ROCK」を日高さんの家で作っていたときに「生のギターを入れたい」ってなって、日高さんが電話したのがヤマタクさんで。俺はもうただのファンだったので「嘘でしょ」みたいな(笑)。そのあとも1stアルバムのタイトル曲(「A GREAT FOOL」)をプロデュースしていただいたりして、『HERO』というアルバムを作るときに欠かせない人だと思ったので、作詞と歌唱で参加してもらいました。あと、これは個人的になんですけど、THE ORAL CIGARETTESの楽曲って、僕が当時大好きで聴いていたボカロの楽曲とテンションが近くて。メインのリフがサビのあとにもう1回戻ってくる構成だったり、ヤマタクさんの歌のメロディとかもボカロPっぽかったりして、だからTHE ORAL CIGARETTESが好きだったというのもあって。そういう意味でも、ヤマタクさんだなって。かつ、ロックフェスを狙ってる曲でもあるので。全部の要素を回収する1曲になっているかなと思います。



―こうやって何度もインタビューさせてもらってるけど、ボカロのルーツがCoreさんの中でそこまで濃いとは知らなかったです。そして今のシーンを見渡して、そこに目を向けるのはさすがだなと思います。

Novel Core:みんなはそこまで気づかずに聴いてるけど、やっぱり日本人がすごく反応する要素がいっぱい詰まってる音楽だなと思います。日本人が日本の音楽にもっと誇りを持っていいと思っていて、海外の流れを日本語でなぞり描く以上に面白いことが、まだまだみんなの知らないところに残されている気がする。そういう感覚がこの2年くらいあったので、このタイミングで好き勝手めちゃくちゃやりたいなと思って、その試験作みたいな感じですね。これでもまだ行き切ってないほうなので。

―これまで見せていなかった武器をこれから出していく、というところでいうと、「ex feat. Ayumu Imazu」も大事ですよね。USのティーンポップみたいだなと思って。

Novel Core:そうですね。「ど真ん中アヴリル(・ラヴィーン)」みたいなコード進行でやらせてもらいました。A.G.Oさん(「ex」のサウンドプロデューサー)は(Aile The)Shotaが大阪でイベントをやったときにプライベートで遊びにいって、打ち上げでShotaがつないでくれて、3人で会話しているとすごくフィールして盛り上がって。「シンプルバカになれる音楽ってやっぱり大事だよね」「考えずに聴ける曲って、意外と日本の音楽シーンに少ないよね」みたいな話になったんですよ。作り手側は色々考えていいと思うんですけど、受け取り手が何も考えずにタオルをぶん回したりできるものを、という方向性で作っていきました。自分じゃない目線で曲を書くことも、今までそんなにやってこなかった気がするので、女の子目線で歌うのは新鮮で楽しかったです。自分以外の人に曲を書いて提供することも視野に入れたいという感覚は去年くらいからありますね。「TYPHOON」もまさにそう。ダンス&ボーカルに曲を提供したすぎて(笑)。





―ああ、なるほど!

Novel Core:ボーイズグループ、ガールズグループに曲を提供したい、ラップを書きたいという想いがあって。Number_iの新曲(「GOAT」)を聴いたときも「うわあ、こういうのを人に書きたい!」と思いました。「TYPHOON」は「Novel Coreがダンス&ボーカルだった世界線の曲をやりたいんですよね」「フルコレオで踊ります」ってSunnyさんに伝えて作りました。この曲はボーイズグループとかカバーとかしてくれるとすごく嬉しいですね。


Photo by Kentaro Kambe、Hair and Make-up by Megumi Kuji (L & Co.)

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