Novel Coreが語る、期待と後悔を経て手にした「本当の自分」と武道館ライブ、『HERO』の真意

“本当のことは僕しか知らない”の真意

―そうやって新しいこともやる一方で、1曲目「I AM THE」のようにこれまで見せてきたルーツと自分のストーリーを今一度ここで歌う、しかもそれを武道館公演のタイトル(『ONEMAN LIVE -I AM THE- at BUDOKAN』)に掲げる、というのも大事なポイントですよね。

Novel Core:2024年はヒップホップシーンに対するアプローチの再開の年でもあると思っていて。今だからできるんですよね。ラップバトルから出てきて、ジブさん(Zeebra)の事務所にいて、最初はヒップホップのアプローチをやっていて、でも「自分はこの中だけで完結しちゃダメだ」「もっと外を見なきゃ」という意識でロックやポップスの文脈のルーツを外に出して、もっと広いジャンルの音楽を作ってきて、それがこの規模まで拡大した。だからこそ「じゃあ俺の出自って何だったっけ」ということを、今やるべきだと思っていて。それを去年やるのと今年やるのとでは説得力に大きな差が出ると思ったので。ヒップホップシーンの外も見てきた上で、もう一回ラップという自分の一番の武器を使って扉を叩きにいくフェーズは、2024、25年の中で絶対にあると思います。このインタビューを見てもらって、「あれ? もうラップはしなくなっちゃうのかな?」とか思われる可能性もあると思うんですけど逆で、「めちゃくちゃラップします」という感じです。バトルもどこかで一回くらい、遊びで出ようかなと思ったりもしますね。だから武道館の1曲目は絶対にこれである必要があったんです。「Back to the basic」をやるよ、そのためにこの3年間いろんなことを外でやってきたよ、って。メジャーもインディもアンダーもオーバーも全部経験してきたけど、「結局、自分次第じゃね?っていうのが俺の答えだよ」ということをラップでやりたかったから。



―それはNovel Coreにしか言えないことですね。話のテーマを「ヒーロー」に戻しちゃうけど、最後の曲でありタイトル曲の「HERO」は、まさに武道館のコンセプトを曲にしたような一曲で。

Novel Core:これ、レコーディング、マジやばかったんですよね。めちゃくちゃ泣いて。号泣、嗚咽でした。



―それは、どういう感情が込み上げてきたんですか?

Novel Core:胸の内にしかなかった言葉を全部出したので。武道館を終えたあと、これが世に出ることを想像したときに、今までやってきたこととか言ってきたことが相馬灯みたいにフラッシュバックして。「こんな時期があったな」「しんどかったな」「こんな嬉しいことがあったな」「あれ楽しかったな」とか全部蘇ってきたときに、もう涙が止まらなくなっちゃって。今後は、自分と同じような景色を現在進行形で見てる子たちに光を与えられる人にならなきゃいけないんだという使命感も、曲を歌いながらすごく芽生えて。その両方があまりに自分的にエモーショナルすぎて、「まずい、歌えない」というくらい号泣してました。

―今までいろんな曲で歌ってきたことを集約したような一曲でもありますよね。

Novel Core:“本当のことは僕しか知らない”という1行目にもう全部が詰まっているというか。僕としてはこの1行をずっと歌いたかったんです。この1行を公で歌うためだけに3年間やってきたと言っても過言じゃないくらい。悔しかったことも、悔しいと言わずに飲み込んだことも、後悔も、全部僕しか知らなくて。どんなに綺麗な言葉で歌っても、結局僕の感情とかその時々の心の動きは僕しか知らないし、誰かに伝わるときにはどこかに誤差があって。100人が100通りの受け取り方をすることが音楽の面白さでもあると思うんですけど、それが原因で苦しんだこともあって、「真意なんか伝わりっこないよな」という時期もあった。どれだけ周りにスタッフさんや愛してくれるファンがいても、自分の手で守ってきた夢とか希望がたくさんあったんだよなっていうことを、どうしてもここで歌いたかったんです。

―そういった内容を歌ってから、最後を締め括る2行がまたいいですね。“ヒーローも同じ場所で/ずっと泣いていたんだよ”。

Novel Core:そうですね、もうこれが答えですよね。当時の自分にとってキラキラ輝いていて無敵に見えた、先を走っていたアーティスト――SKY-HIであったり、フラワーカンパニーズとかもそうですけど――なんでこの人たちはこんなに強いんだろう、こんなに前向きに歌えているんだろう、こんなにたくさんファンがいるんだろうって、疑問しかなかったんです。その目線を目指してひたすら走って、いろんなことで躓いたり、逆に楽しいことや嬉しいこともたくさんあったりして、武道館というステージを踏んだ結果、見えたものは「あれ?」っていう。俺がめちゃくちゃ強いと思っていた人たちは全然強くないかも、何だったら当時の俺より弱いんじゃないか、みたいな。だからこそああいった曲を歌っていたし、それがいろんな人の支えになっていたという気づきがあって。だから、それを歌う必要があったんです。

―それを次に武道館に立つ下の世代の子たちに、Novel Coreから伝えてあげたいということでもありますよね。

Novel Core:本当にそうなんですよ。登り詰めたところで、特に何もないんですよね。それは悲しいことでもあるのかもしれないですけど、僕としては気づきだったというか。山の頂上に何かがあると信じてみんな登るけど、登った先から見えるのは、結局自分がもともといた場所が上から見えるだけで。でも、そこにすべてが詰まっているなという感覚がある。

―うわあ、それはそこに立った人にしか言えない言葉だ。2017年の日高さんの武道館公演を見て、武道館に立つときは人間としてもちゃんと幸せでなきゃいけないと思ったと前に話してくれましたけど、それは叶えられていますか?

Novel Core:完全にクリアだと思います。それがマジで誇らしい。周りに感謝しなきゃいけないなと思います。めちゃくちゃ幸せですよね。さっきも言ったみたいに、本当のことは僕しか知り得ないんですけど、本当のことを想像、理解しようとしてくれるファンがこれだけの数いるということがすごく誇りなんですよね。理解できる必要はなくて、理解しようと歩み寄ってくれる人の数がすごく大事だから。それはとても嬉しいことですね。

―「カミサマキドリ」で歌ってるような人間ばかりじゃないと。

Novel Core:逆に今後、今みたいに信頼関係が築けていて絆みたいなものがある人たち以外もNovel Coreの曲を聴く状態になると思うので。ブレイクスルーってそういうことだと思うので。Novel Coreのバックグラウンドとかストーリーは知らないけど、単純に「この曲めっちゃよくて、最近プレイリストに入れて聴いてるんだよね、カラオケで歌ってるんだよね」という人が急にドカンと増える瞬間が来るということは、言いたがりの人たちも絶対に増えるし、ストーリーを知っていたら言わないようなことを言ってくる人たちも一定数出てくると思う。だからこの曲で先に釘刺しとく、みたいな。そういうことをここで曲にしておく必要があったし、このスタイルを地でいってるTHE ORAL CIGARETTESのヤマタクさんがフィーチャリングにいることに意味があると思ってますね。


Photo by Kentaro Kambe、Hair and Make-up by Megumi Kuji (L & Co.)

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