Novel Core武道館公演を総括 「何者でもない自分」が「誰かを救うヒーロー」になるまで

Novel Core(Photo by Satoshi Hata)

2024年1月17日。東京・日本武道館。Novel Coreが「メジャーデビューから3年以内に武道館をやる」という夢を叶えた日。Novel Coreの22年間のライフストーリーを描いてみせた約2時間半。独りよがりで、大馬鹿者で、問題児で、エラーとして扱われた存在が、自分にとってのヒーローの背中を追いかけて、誰かのヒーローになるまでのストーリー。それを彼は余すことなく描き切った。

【写真をまとめて見る】ライブの様子

Novel Coreは自分にとっての夢である初の日本武道館公演を、新曲でスタートさせて、新曲で終わらせた。通常のライブの作り方でいえば、みんなが知っていて会場のボルテージが一気に上がるような曲を1曲目に置く。そうしなかったことこそ、「一般的には」と言われることを飛び越えた選択を重ねてきたNovel Coreの生き様の表れであり、ここが到着点ではなくまだまだ描きたいものがあるということの明確な提示でもあった。彼はこの先、音楽界における唯一無二のスターに、革命家と呼ばれるような存在に、自身を押し上げていくつもりだ。その道中では、ここまでの歩みを知らない人がNovel Coreと出会う機会もたくさんあるだろう。だから今ここに、「Novel Coreが初の武道館公演で描いた22年間のストーリーとは何だったのか?」を記しておこうと思う。これからNovel Coreと出会う人が、Novel Coreのこれまでを知ることができるように。

『ONEMAN LIVE -I AM THE- at BUDOKAN』とタイトルが発表されていた本公演は、大きく分けると「これまで」と「これから」を表現する2つのパートが、細かく見ると4つのパートが、それぞれ連なるように流れていった。最初は、最新曲「I AM THE」で15歳から現在までに手にした自信を堂々と見せて、「WAGAMAMA MONDAIJI」「BABEL」「JUST NOISE」「TROUBLE」、claquepotとの共作で音楽業界や社会をチクリと刺す「blue print」などを挟み、インディーズ1stシングル「Metafiction」へと続いたパート。Novel Coreの人生を振り返ると、「WAGAMAMA MONDAIJI」で歌っている通り、青春/学生時代から学校や世の中の「こうあるべき」や「杓子定規」とされるものに馴染めないことに苦しんでいたという。そして高校生になると家でラップを始めて、のちにMCバトルや路上ライブ、さらに2017年(当時16歳)には「高校生RAP選手権」に参加。高校を中退して退路を断ち、アーティストになることに人生を懸けたが、早々に出鼻を挫かれる想いを経験する。この日のMCでも当時についてこう語った――「高校生RAP選手権に出て、準優勝したあと優勝して、一気にたくさんの人の注目を浴びるようになって、すごく嬉しかったんだけど、同時にびっくりするくらい厳しい言葉が増えました。今までは俺が何か言ったらバコーンって湧いていた会場が、急に湧かなくなった」。理解者や味方などいないと思い込み、感情もうまくコントロールできずに愛する家族にまであたってしまい、家から出ていく夜もたくさんあった。さらにはラップ業界から批判が多く苦しいときに父親が他界。生きることから逃げ出したくなる日もあった。


Photo by Satoshi Hata


Photo by Satoshi Hata

批判が集まったのは、一言で言えば、ラップ/ヒップホップ業界においてNovel Coreのスタイルはそれまでにないものだったからだ。でも彼はその批判を、孤独を、アーティストストーリーの脚本の一部として扱うことに決めた。1stアルバム『A GREAT FOOL』では普通からはみ出して賢く生きられない「大馬鹿者」を主役にし、2ndアルバム『No Pressure』で業界や他人から嘲笑われても忖度も迎合もしない自身とその心意気を「TROUBLE」「JUST NOISE」と表して、次作のEP『iCoN』ではエラーとされた存在が新世代の象徴になっていく様を体現した。







Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE