オースティン・ペラルタ、「21世紀ジャズの特異点」がフライング・ロータスとLAジャズに遺したもの

『Endless Planets』を今こそ再発見すべき理由

『Endless Planets』にはそういったオースティンの資質と、様々な交流や試行錯誤によって培われたものが集約されています。「Capricornus」に顕著ですが、高度な作編曲に基づく複雑なリズムとハーモニーは、当時のコンテンポラリージャズにおける最先端を意識したもの。楽曲のポテンシャルを引き出すべく、ピアノ・トリオにサックスを加えた編成にはLAローカルの仲間たちに加えて、現代屈指の名手ベン・ウェンデル(Sax)も参加しています。



ベン・ウェンデルがオースティンに捧げた楽曲「Austin」(2016年作『What We Bring』収録)

同時期にグラスパーがジャズとヒップホップ、サンダーキャットがフュージョンとLAビートのハイブリッドを実践していたのに対し、『Endless Planets』の演奏はストレートアヘッドなジャズそのもの。それゆえ当時のリスナーは困惑したわけですが、よく聴くと録音とミックスはかなり異質で、エレクトロニック系レーベルのBrainfeederから本作が発表された意義もそこにあると思います。

LAスピリチュアル・ジャズの伝統を受け継ぐ「Algiers」での、ベースとタブラが並走するバランス、2管のサックスが立体的に響き合う快感、低音とリズムを強調させた音作りやコズミックな音像はデトロイト・テクノ的ですらありますよね。ジャズのアコースティック楽器でここまで生々しくスペイシーな質感を生み出しているのは驚異的で、この過激なミックスにオースティン本人も携わっていたことも特筆すべき点でしょう。さらに、アルバムの随所でストレンジループによるエレクトロニクス処理も施されている。ここまで野心的なジャズ作品は聴いたことがなかったし、今も比類なき作品であり続けているように思います。



そう考えると、今回のリイシューで初のアナログリリースが実現したのは嬉しいですよね。Brainfeederはここ数年カタログのLP化を進めていますが、そのなかでも群を抜いて音がいい、レコードで聴きたくなるアルバムだと思うので。ジャズ喫茶やミュージックバーの設備で再生したら、作品の印象がまたガラリと変わるかもしれない。

21世紀ジャズの特異点として、リリースから10年以上が経過した今だからこそ気づけることがたくさんあると思うんですよね。『Endless Planets』のデラックス・エディションを世に送り出したフライローが、本作を聞き返しながらどんなことを思ったのか。機会があったら話を聞いてみたいです。


フライロー、サンダーキャットとオースティンの共演





オースティン・ペラルタ
『Endless Planets (Deluxe Edition)』
発売中(CD国内盤/LP限定盤)
初リリース音源4曲を追加収録
詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13761

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