YOASOBIとブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る、リスナーに「驚き」を与える楽曲とは?

左から、Ayase、オリヴァー・サイクス、ikura(Photo by Maciej Kucia)

2024年のサマーソニックでメインを飾ることになった英シェフィールド出身のロックバンド、ブリング・ミー・ザ・ホライズン。4月に初のアメリカ単独公演を開催する日本発のYOASOBI。日英を代表するアーティストのトークセッションが、昨年12月に発売された雑誌「Rolling Stone Japan vol.25」誌上で実現。今回はこの貴重なテキストをノーカットでWEBで公開する。

【撮り下ろし写真を見る】YOASOBIとブリング・ミー・ザ・ホライズン

インタビューは昨年11月の「NEX_FEST」開催前に実施された。ブリング・ミー・ザ・ホライズンのオリーことオリヴァー・サイクス(Vo)をこれまで何度も取材している編集者/ライターの大野俊也が進行役となり、YOASOBIのAyase、ikuraを交えた日英アーティスト談義はスタートした。

ーAyaseさんとPaleduskのDAIDAIは長い付き合いの友達なんですよね。

オリー DAIDAIから話は聞いてるよ。

Ayase 僕の音楽の友達の中では一番古い友達です。16歳の時からの友達なので。

オリー 同じ地元の出身?

Ayase 隣りの県です。僕が山口で、DAIDAIは福岡なので。

※DAIDAIがソングライティングとプロダクションに参加したブリング・ミー・ザ・ホライズン「Kool-Aid」MV



ーNEX_FESTにYOASOBIもPaleduskも出演が決まった時、DAIDAIとは何か話しました?

Ayase もちろんです。僕もDAIDAIもブリング・ミー・ザ・ホライズンは憧れの存在なので。それぞれ全然違うルートに進んだのに、同じところで夢を叶えて集合する感じが、本当に熱いよねっていうのを、たくさん話しました。

ー熱いですね。

Ayase 熱いです。だから、このフェスはめちゃめちゃ意味があるんです。Paleduskというバンド自体、僕の後輩に当たるんですけど、DAIDAIは後から加入してるんです。Paleduskは昔よく対バンしてました。

オリー ヤバいね。DAIDAIからは(Ayaseが)メタルコア・バンドのボーカルだったことも聞いてるよ。

ーブリング・ミー・ザ・ホライズンは最初どのように知りました?

Ayase 僕がバンドを始めた時が2012年で。始めて少しして、『Sempiternal』のアルバムが出たんです。当時一緒にやってたギターのメンバーが「カッコいいバンドがいる」と教えてくれて、「Shadow Moses」を聴いたのがきっかけです。



ー当時のメタルコア・バンドの中で、ブリング・ミー・ザ・ホライズンが特別なバンドだと思った部分はありますか?

Ayase そこから掘り下げて、前のアルバム『Suicide Season』も聴いて、それも好きだったんですけど、『Sempiternal』のアルバムにある、他のバンドにはない神聖な感じというか、曲を聴いた後に一本の映画を見終わったような感覚、宗教的にも感じられるような空気感がカッコいいなと思って。それで好きになりました。



ーシンガーとしてのオリーはどうですか? 

Ayase いやあ、もうカリスマです。

オリー (照笑)。

ーikuraさんはメタルは聴いてましたか?

ikura 自分の中では通ってきてなかったんですけど、Ayaseさんと一緒にYOASOBIを始めてから、ブリング・ミー・ザ・ホライズンさんのお名前はずっと聞いてました。

Ayase 「Parasite Eve」が初めて聴かせた曲だったんです。



ikura 自分のルーツにはなかったので、ドカンと来ました。Ayaseさんの中でどういう歴史があって、音楽ルーツの中にブリング・ミー・ザ・ホライズンがどうやって入ってきたのかというのは、あまり詳しいところまで聞いたことがなかったんです。この前インタビューでお話してるのを読んで、今回私も1曲1曲たどりながら聴かせてもらいました。Ayaseさんが大リスペクトしてる方ですし、今もずっと影響を受け続けてる音楽だと聞いていたので、なるほどと思いながら自分の中でも、YOASOBIの楽曲、Ayaseさんの作る楽曲の中で、辻褄が合ったんです。きっといろいろなエッセンスとして、ブリング・ミー・ザ・ホライズンからもらったものを消化して、新しい形で曲にしてたりするのかなって、勝手に自分の中では感じてました。なので、今回のフェスでご一緒できるというのもすごく光栄ですし、アーティスト主宰のフェスには初めて出させていただくこともあって、とても気合いが入ってます。

Ayase 楽しみです。

オリー 昨日BABYMETALと会ったんだけど、BABYMETALもYOASOBIと共演できるのを楽しみだと言ってたよ。

ーYOASOBIの音楽はチェックしました?

オリー もちろん。すごくカッコいいよね。まず聴いた時にとても驚いたんだ。DAIDAIからは日本のポップ・ミュージックだって聞いてたから、僕としてはK-POPに近いものをイメージしてたんだけど、実際に聴いてみて、これが日本のポップ・ミュージックだとしたら、かなりヤバいことになってるなと思った。

Ayase うれしいです。

オリー 音楽的にチャレンジしてる部分がたくさんあるし、ロック・ミュージックが盛り込まれてると思った。1曲の中で、いろいろ異なるアイデアを組み合わせて、様々な要素をふくらませて、それをちゃんと形にしてまとめてるところが、とても気に入ったよ。DAIDAIと曲作りをした時にも感じたことなんだけど、DAIDAIもAyaseも、多くのアイデアを引き出しとして持っていて、異なる要素を組み合わせてくる。でも、曲としての統一感はちゃんと出せる。これには大きなインスピレーションをもらえたね。僕も自分のバンドで同じようなことをやりたいし、音楽がフレッシュに聴こえるための新しい方法を見つけていきたいから。日本のアーティストの音楽を聴くと、YOASOBIもPaleduskもそうだけど、そういうやり方で新しい音楽を生み出す凄い才能を持ってることに気づかされるんだよ。「これとこれを混ぜてしまうの?」ってなるし、クレイジーだなと思うし、驚かされるんだけど、聴いてておかしくないどころか、自然と楽しめてしまうんだ。しかもすごく大きなオーディエンスが付いてるよね。これは僕のようなイギリス人にとっては、かなりの音楽的なチャレンジだと言えるし、エキサイティングだし、インスピレーションに溢れてるとしか言いようがないよ。

ーブリング・ミー・ザ・ホライズンもYOASOBIも、それぞれロックとメタル、J-POPをベースにしながらも、境界線なんて関係なく新しい音楽を追求しているという点では、共通しているんじゃないでしょうか。J-POPっていうのは、ある意味、究極のハイパーポップだとは思いませんか?

オリー 間違いないね(笑)。

Ayase (笑)。

ーでも、どんなサウンドになっても、メロディだけは絶対にJ-POPになるんですよね。

オリー そうだね。YOASOBIの音楽はハイパーポップ以上だと思うよ。そもそもハイパーポップがカッコいいのは、あまりにも先を行ってるからなんだ。最初に浮かんだアイデアをそのまま形にしてるしね。曲のパートごとに時間もエネルギーも手間もめちゃくちゃかけてるし、単なる曲というよりも、まるで旅に出てるみたいな感じだ。そこに自分の居場所を見つけてイメージできるのはめちゃくちゃクールなことだよ。どんなジャンルでも音楽でリスナーに驚きを与えるのって、とても難しい。でも新しい音楽というのはそういう中から生まれるわけで、それで僕はハイパーポップが次世代の大きな流れになると思ったんだ。

Ayase それで言うと、ジャンルに関しては、僕はそこまで深くは考えてないんです。DAIDAIともそういう話をするんですが、その時に一番気持ちがいいと思った音だったり方向性を選んでいく中で、たまたまこういうジャンルで、そこにあるルーツから引っ張ってきたという感じで。最終的にまとめるためには、それこそ緻密に、バランスを取るために考えるけど、最初の枠組みを決める時は、もうただただ好きなものを、「これも欲しい」「あれも欲しい」と言って、カゴに入れていく。それで一旦レジに出すみたいな(笑)、そんな感じなんです。



ー新しい音楽が好きで、引き出しもたくさんあるから、そうなるんですよね。

Ayase 何でも大好きだから、それはあるかもしれないです。

オリー よくわかるよ。

ーメタルコアのクセが思わず出てしまうことってあります?

Ayase けっこうドラムとかリズムの刻み方にはこだわりますね。ブレイクダウンしたり、ビートダウンしたりというのを、ポップスでもガンガン取り入れたくてやってますけど、元々そういうセクションがメタルコア・バンドをやってる時に好きだったからというのはあります。


Ayase(Photo by Maciej Kucia)

Translated by Yuriko Banno

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