This is LASTが語る、3ピースバンドとしてのプライド 現代のロックバンドのあり方

―今作のアルバム全体に関して、どのようなテーマがあったんでしょう。

陽報:竜静のことも含めて、This is LASTに対しての気持ちが離れてしまった方も結構いると思うんですよね。それは常日頃起きているとは思うんですけど、僕らとしても心境の変化があったり、いろんなものが変化していった2022年、2023年で。昔の曲から全部リテイクさせてもらって、新しいThis is LASTが表現したかった。僕らが始まった曲たちが入ってるところに意味があると思ったんです。帰ってくる場所というか。This is LASTから離れてしまった人も含めて、いろんな人が『HOME』ってアルバムに戻ってきてほしいなって。This is LASTに立ち帰れるアルバムにしたくて『HOME』と名付けたんです。

―本作の中で、1番新しくできた曲は?

陽報:一番新しいのは「アウトフォーカス」ですね。僕が曲の原案を出したのが、2024年のお正月ぐらいで。初詣は行きましたけど、みんなでお正月を過ごすとかもなく、とにかく「アウトフォーカス」を完成させることだけを年末から明けまでずっとやっていました。



―「アウトフォーカス」に関しては、どういう部分が苦戦したんでしょう?

陽報:この曲はドラマのタイアップで。年末ぐらいにドラマの内容をいただいて考えていったんですけど、僕の恋愛の実体験も踏襲した感じの内容になっていて。ドラマの内容にフォーカスを当てつつ、This is LASTとして表現した楽曲を試しながら作っていきました。

―どっちかというとリリックの部分で試行錯誤したと。

陽報:そうですね。僕は元々リリックから書く派で、詞先なので、先に詞をイメージして書いていきました。

―「ラブソングにも時代がある」も新曲ですが、どうしてこういうテーマで書こうと思ったんでしょう。

陽報:この曲は、それこそさっき言った100曲近くボツにした中で、ちょっとエンジンかかってきて、やっとできるようになってきた時期に作った曲なんです。最近、ハーモニーだったりウワモノも大事にする曲が多かった中で、もう一度、その中に隠れるロックを踏襲しつつ、3ピースで勝負できる楽曲を作りたかったっていうのがこの楽曲のスタートですね。

―やっぱり3ピースバンドであることには、強い信念みたいなものがある?

陽報:それはありますね。今3ピースじゃないかもしれないんですけど、俺の中ではずっと3ピースっていう感覚があって。そこに対してのプライドは絶対に曲げるつもりはないし、何を言われても音楽でネジ伏せるしかないなと思ってます。面白いのは、他の楽曲は詞先で作っているんですけど、この曲は詞が後だったんです。リズムから作った。僕がドラムとベース打ちこんで、そこにギター重ねて、歌を乗せて、自分1人で完結させていった。そういう意味で言うと、スタート地点が違う。リズムを作るところから狙ってるので、他の楽曲と面白い対比にはなってると思います。

―そういう作り方をしようと思った理由は?

陽報:それは時代ですね。それこそ「ラブソングにも時代がある」っていうのは、詞の意味だけじゃなく、リズムに対しての意味もあって。今の恋愛って、昔とは違ってマッチングアプリがあったり、SNSで出会うことが当たり前になっている。新しいラブソングがこれからどんどん出ていくだろうなって。同じように、現代において流行っている楽曲だったり、抜きん出ている楽曲ってリズムから作られてることが多いんですよね。それを思った時に、やっぱりビートがすごく大事なんだなと思って。若いティーンだったりTikTok世代だったりとかは、ビートを重視して乗れるかどうかで判断してるんだなって。僕の中である程度思ったので、ビートに対して詞を乗せていけるようにならないと、この先戦っていけない。自分がそこの勝負をして出せた1個目の結果の曲です。

―鹿又さんは、現代のビート感を認識しつつ、ドラムとしてどのようなことを意識されていますか?

鹿又:とにかくノリは崩さないことと、いかに歌を邪魔しないか、リズムやフィルの手数はすごく意識してますね。とにかくあきの歌で勝負したいっていうのがThis is LASTの中にはあるので、そこをしっかり押していくリズムを叩きたいなって思っています。

―実際、それを行動する柔軟さがすごいですよね。ストリングスを入れたり、非常にフレキシブルにいろんなことに挑戦されている。

陽報:よくバンドマンと飲んでいて縦軸と横軸の話をするんです。縦軸っていうのは1本のジャンルに絞って、そのジャンルにおいて自分たちを打ち立てていくバンド。横軸というのは、いろんなジャンルを自分の音楽に消化していくバンド。僕は元々横軸なバンドだと思っていて。もちろん3ピースバンドとしてのプライドを持ちつつも、バンドとして絶対的に求められるのは、ライブがいいかってことと、楽曲がいいかっていう2点だと思っていて。っていうことを考えると、ライブでどういう曲があったらいいか考えることもするし、逆に決めないことで3ピースに振って作ったりもする。逆に「カスミソウ」みたいな楽曲を作った時もすごく楽しかったし、ストリングスの方たちとレコーディングしてる時に会話する時間もすごい楽しいし、自分たちがそうやりたいと思って動いたからこそ得られてる環境があるし、知見も広がってる。勉強になる部分も本当にたくさんあって。僕は今のスタイルの方が、より音楽家としてできることが広がっていっているなと思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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