笠置シヅ子が起こした革命、刑部芳則が語る服部良一によるリズムの実験

オールマン・リバップ / 笠置シヅ子



田家:昭和26年、1951年6月発売。これも思いがけない曲でした。

刑部:私も最初聴いたときに服部さんが作った曲とは思えなかったですね。外国の曲だと思いました。

田家:ですよね。「オールマン・リバー」というシナトラの代表曲がありますもんね。

刑部:これは言葉遊びじゃないけれども、服部さんのユーモアあるセンスですよね。「オールマン・リバー」をリバップと。後に言う、ビバップですよね。

田家:ビバップ・ジャズ。スウィング・ジャズの進化系ですね。

刑部:そういう形で仕立て直している、服部さん的に。おもしろいですよね。

田家:服部さんがやっぱりジャズの人だったということの表れでしょうか。服部さんは一番最初の音楽はなんだったんでしたっけ。

刑部:大正時代ってハーモニカが非常に普及していたりして、古関裕而さんもそうなんだけど、古関さんと服部さんって、そういうところで結構音楽的に共通項が多いんですよね。少年時代にハーモニカをやっていた。

ボン・ボレロ / 笠置シヅ子



田家:流れているのは昭和27年、1952年2月発売、「ボン・ボレロ」。これもおもしろい曲だなと思って。

刑部:おもしろいですよね。服部さんのボレロと言うと、昭和14年に発売されてヒットした藤山一郎さんの「懐かしのボレロ」があるんですけど、あれを連想すると全然違うんですよね。聴いてみると、どこか作りが「買い物ブギ」に似ているところもあるんですよね。

田家:日蓮宗の太鼓とボレロを融合させているところに、おもしろさがありますよね。

刑部:キーワードは太鼓、ドラムなんですよね。

田家:ジャズのドラムじゃないなと思ったら、途中から日蓮宗のドラムになっていく。で、太鼓に変わりはないわいなんて言っている。発想の転換がすごい。

刑部:やっぱりこれも遊び心がありますよね。

田家:ジャパニーズタムタムじゃないかと。

刑部:これは作詞は服部さん自身がやっていますもんね。

田家:今回の2枚組アルバム『笠置シヅ子の世界』のDisc1のブギウギ編はわりとみんなの知っている歌もあったりして、これが笠置シヅ子さんですよねというあるパブリック・イメージなのですが、Disc2はほとんどの方ご存知ないだろうなという曲が並んでいますし、Disc2の意味は大きいですね。

刑部:そうですね。昭和20年代前半はブギのヒットに隠れちゃったような曲とか、その後ブギが下火になってきたときに、服部さんと笠置さんがその後、毛色を変えて出していった曲。だけど、そっちの方の曲は意外と知られてない曲が多いんですよね。名曲なんですけど。

田家:「ボン・ボレロ」、これがシングルになったわけですもんね。どんなふうに受け止められたのかなと思いましたけども、ヒットはしてないと?

刑部:あまりしなかったと思いますね。

田家:ですよね。服部良一さんは2000曲記念ショーを昭和26年におやりになったりしているんでしょう?

刑部:そうですね。このときには服部さんの関係していた音楽仲間、歌手の人たちが総動員というかみんなお祝いに駆けつけて、盛大にやったショーですよね。

田家:この話もまた再来週になるんですけれども、昭和20年代、先週のブギのピークというのが昭和24年、25年頃にあったという話をされましたけども当時の日本で一番の売れっ子作曲家でしょう。

刑部:時代が要請していた感じですよね。

田家:そういう中で「ボン・ボレロ」のような曲とかを書いているんですもんね。次の曲もそんな曲なのかなと思ったりもしました。「ハーイ・ハイ」。

Rolling Stone Japan 編集部

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