「Future of Music」日本代表25組を発表 世界各国のRolling Stone誌がアーティストを選出

ぺろぺろきゃんでー

ギャル魂で鼓舞する兄妹ポップラップ



ぺろぺろきゃんでーは、文脈を超える力を持ったユニットだ。日米をルーツに持つSUNNY-PLAYとJanet真夢叶の兄妹は、よそ者扱いされたり心ない言葉を投げかけられたりといった経験をする中で、自分たちにコンプレックスを抱くように。それをラップで表現し……というところまではよく聞く話かもしれないが、実は音楽性はダークと見せかけてポップ、歌詞もネガティブではなく前向きな明るさに満ちている点が新しい。そのポジティブさを二人は「ギャルマインド」と呼んでおり、そのギャル魂を感じる魅力が最も詰まった曲「話題のGAL」はTikTok内楽曲再生が3億8千万回超え、ティーンの人気を席巻中。次から次にリリースされる楽曲には「地球の隅っこにいるあなたへ、ギャルマインドをお届け」という価値観が流れており、多くの人の背中を押している。ラップシーンも国境も、既存の文脈を軽やかに超えていく力を感じる二人から今後も目が離せない。(つやちゃん)




REJAY

JQ(Nulbarich)初のトータルプロデュース



NulbarichのJQにその歌声を発掘された、REJAY。Nulbarichは年内での活動休止を発表しており、JQが自身の次のプロジェクトとしてトータルプロデュースを手掛けるのが彼女である。2月7日にシングル「Too Late」でデビューし、3月22日にはEP『18』をリリース。デビュー翌日にNulbarichのZepp Haneda公演にオープニングアクトとして登場したのだが、いきなり「Tom’s Diner」(スザンヌ・ヴェガ)をアカペラで歌い切ったことには驚いた。日本のメインストリームにNulbarichというオルタナティブなスタイルを持ち込むことに成功したJQが、現在はLAを制作拠点とする中で日本とグローバルの現行シーンへの嗅覚を鋭く持ち、オーストラリアと日本のダブルであるREJAYという稀有な感性と声を通して音楽を世界に響かせるのがこのプロジェクト。まるで国境などないかのような広がりを見せるのではないかと、新たな音楽の誕生に期待が高まる。(矢島由佳子)




SATOH

東京のロックを斬新な形で塗り替える2人組



クラブやヒップホップシーンを出自に持つSATOHは、アジカン、ELLEGARDEN、RADWIMPSなどの「邦ロック」からの影響を背景に、昨年リリースの『BORN IN ASIA』で新たなスタンダードを提示した。東京のユースカルチャーの先頭を突っ走るLinna FiggとKyazmの2人組は、日本のロックを塗り替えようという気概に満ちている。メジャー1stシングル「OK」の音楽性は、過剰なデジタル加工と異なるジャンル要素の組合せをポップに響かせる100 gecsやunderscoresとも共振しつつ、よりラウドでパンキッシュだ。“ニヒルやめろ my friend”という率直で鋭い一節には背筋が伸びる。NYで撮影を敢行したというMVも、等身大の街を映すことに長けた彼らの強みが発揮されている。また、主催イベント「FLAG」では同世代アーティストを巻き込み、シーンを形成する力も充分。楽曲を共同制作した、中国/ベトナムにルーツを持つNYのHarry Teardropも招聘するなど、その輪を国内外に拡げている。
(最込舜一)




Skaai

一人の表現者として新たな領域を開拓するクリエイター



アメリカで生まれ、幼少期から韓国やマレーシアでの生活を経験し、九州大学の大学院へ進み研究者の道を志すという道を歩んできたSkaaiは、コロナ禍を契機にするようなかたちで徐々にラップへと傾倒しSoundCloud上に楽曲をアップロードするようになる。2021年に人気オーディション番組「ラップスタア誕生!」で注目を浴びるようになった彼のリリックは繊細で文学的な味わいを持つと同時にラッパーとしての確固たる自信も顕著で、聴くほどにSkaaiという人間の複雑さを思い知る。楽曲制作を始めて間もないタイミングでラッパーとしてのキャリアをスタートさせたSkaaiだが、Daichi Yamamotoを迎えた「FLOATING EYES」ではその不安や葛藤をストレートに表現。挑発的なタイトルのEP『WE’LL DIE THIS WAY』では、若さゆえの歪さや不安定さといった感情の発露を見事にまとめあげた。以前、これからはラップ以外の表現にも挑戦していきたいと語ったSkaai。無限の可能性と才能を秘めたクリエイターである。(渡辺志保)




TAMTAM

世界が発見したニューエイジポップス



レゲエ/ダブを一大ルーツとしながら、R&Bやヒップホップ、ジャズ、エレクトロなど多様な音楽性を吸収し、マジカルなポップスを奏でてきた東京の4人組、TAMTAMが転機を迎えている。今年1月の最新EP『Ramble In The Rainbow』で米レーベルPPUより海外デビューを果たすと、ジャイルス・ピーターソンが即座に反応し、Bandcampも大きく取り上げるなど海外メディア/リスナーの間で注目の的に。Stones Throw譲りの宅録サイケデリア、サン・ラのスピリチュアルな浮遊感など国内外の文脈とシンクロしつつ、ニューエイジ的な要素をバンド演奏に盛り込み、万華鏡サウンドはますます先鋭化。童歌とネオソウル、シティポップが溶け込んだKuroの歌も郷愁を誘う。リスナー気質ゆえに海外シーンの最深部へアンテナを張り、個性的なサウンドであり続けた結果、結成15年を経て世界に発見され、今まさに新たな扉を開こうとしている。その数奇なキャリアにも「音楽の未来」を感じずにいられない。(小熊俊哉)




VivaOla

日米韓のルーツをもつオルタナティブR&Bの寵児



VivaOlaは2019年のデビュー以降、確かな音楽性によってアジアを代表するR&Bアーティストへと成長を遂げてきた。韓国生まれ、東京育ちという出自を持ち、バークリー音大でソングライティングを学んでいた経歴も。R&Bの歴史を理知的に捉えた上でアップデートしていくその才能は、グローバルにおける同時代の音楽を独自に解釈したような、先進性とユニークネスを備えている。ゆえに、同世代の音楽家からのリスペクトも厚い。2021年リリースの1stフルアルバム『Juliet is the moon』では、グラミーのノミネートプロデューサーであるstarRoを起用した「All This Time」で、昨今トレンドとなっているアフロビーツ解釈のR&Bにもいち早くアプローチ。2023年にはSXSWにも出演し、国内外において大きな注目を集めた。この3月には待望の2ndフルアルバム『APORIE VIVANT』を発表、ブライソン·ティラーの『T R A P S O U L』をはじめとした2010sオルタナティブR&Bの再解釈に挑んでいる。(つやちゃん)



VMO

メタルとテクノを融合させる暗黒アート集団



ブラックメタルとクラブミュージックを自在に融合する総合アート集団、VMP。その実力は世界的にも高く評価され、2018年のRoadburn Festivalや2019年のCTM Festival、2023年のNEX_FESTといったジャンル越境型フェスに出演。幅広い注目を集めてきた。「自分たちがやっていることはポップだと思っている」「アートしたい人と遊園地したい人のせめぎ合い」と言うように、暗黒舞踏的なパフォーマンスを強烈な電子音響で彩るステージは、無理やりぶち上がるうちにそのテンションが本気に至る様子、言葉本来の意味でのレイヴ感を美しく具現化しつつ、不思議と開かれた親しみやすさにも満ちている。そうしたスタンス=『DEATH RAVE』を冠する今年3月発表のニューアルバムには、メイヘムのアッティラ·シハーや、インドネシアのガムラン·ガバ·ユニットGabber Modus Operandi、フル·オブ·ヘルといった強力なゲストが世界各地から参加。この快作で更なる躍進を遂げるに違いない。(s.h.i.)




Xansei

自由なマインドで躍動する、創造性全開のビート職人



20代にして国内外から注目を受ける“逆輸入”プロデューサー、Xansei。2017年よりトラップの聖地、米アトランタを拠点にラトーやサブリナ・クラウディオ、ワーレイ、NLE・チョッパなどの有名アーティストとレコーディングを経験。また、KOHHやGottz&MUDとも共演し、日本国内での注目も高まった。攻撃的な音を使ったバイオレンスなビートを特徴としている一方、SNSなどを通して世界的にヒットしたガールズグループ・XG「Shooting Star」をプロデュースするなど、柔軟で新しい音楽性を持つ。2023年にはラッパーのLeon Fanourakis、SANTAWORLDVIEWとともにアルバム『XEONWORLDVIEW』をリリース。同年開催された日本最大級のヒップホップフェス「THE HOPE」に出演し、約3万人の前でパフォーマンスを披露。2024年、村上隆の国内8年ぶりの大規模個展「村上隆 もののけ 京都」の主題歌となるJP THE WAVY「Mononoke Kyoto」にビートを提供した。(MINORI)




由薫

ハイブリッドなルーツと心を音楽に



幼少期をアメリカ、スイスにて過ごしたバイリンガルシンガー。「星月夜」は累計再生数が4億回を突破するほどのヒットに。日本語と英語、それぞれから生まれ得るメロディやグルーヴとは何かを探求し続けているシンガーソングライターであり、音楽を届ける先は国内だけに留まらない。SXSWに2年連続出演し、今年はLAにてワンマンライブも成功させた。1stアルバム『Brighter』にはスウェーデンにて現地のクリエイターとコンポーズした楽曲たちも収録。ギターを始めた頃はテイラー・スウィフトをカバーしていたといい、自身の心を素直に音楽に投影し、グッドメロディと歌の力を柱としながらもジャンル感はその時々の自分のヴァイブスに合うものを選んで音の中で弾けている由薫の姿には、オリヴィア・ロドリゴとの重なりも見える。何より、音楽には人間の無自覚な部分も揺らす力があると信じ抜いていることが彼女の楽曲の強度になっていると感じる。(矢島由佳子)




長瀬有花

バーチャルとリアルの境界を跨ぐ表現者



日本発祥の新たなエンタメとして、海外でも北米やアジアを中心に人気が加速しているVTuber/バーチャルタレントの文化。キャラクター性の高い楽曲やバーチャル空間ならではのライブ演出など、音楽面においてもおもしろい取り組みが次々と登場するなか、いま特に注目したいのが、2次元と3次元の境界を越えて活動する“だつりょく系アーティスト”の長瀬有花だ。3DCGなどの“二次元の姿”で活動する一方、リアルアーティストとしても配信やライブを行っている彼女。その自由なゆるさは音楽性にも通じており、パソコン音楽クラブ、mekakushe、笹川真生、いよわといったアーティストと共に作りあげた楽曲は、いずれも彼女特有のまろやかな歌声とポップなストレンジ感に満ちたもので、聴いていると程良く脱力させてくれる。AiobahnやネットレーベルのLocal Visionsとのコラボなどフットワークの軽さも魅力で、彼女の創意工夫に富んだ自己表現を追えば色々な発見に出会えるはずだ。(北野創)

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