BREIMEN・高木祥太が児童精神科医・三木崇弘に聞く、人間の「凸凹」とADHDへの対処法

BREIMENチームから
リアルな相談

ハナダ(『赤裸々SESSIOONe』映像担当) ちょっと気になることがあるんですけど……。

ーぜひ!

ハナダ 僕、社会が生きづらいなと思ってて。診断されてはないんですけど。怖くて診断に行けないんです。自覚しているのは、多動性、ADHD、あと多分吃音も持ってる気がしてて。全部がリンクしてどんどん落ちていくんですよ。ADHDで忘れ物が多くて、多動で、「ああ……」ってなって、自信がないとどもって。全部が負のスパイラルみたいになるのが大学時代から明確に出始めていて……どう治していったらいいのかなって。薬があると聞いてちょっと興味あるんですけど、飲んでも治るわけではないということですよね。

三木 薬の種類によるんですけど、結局毎日飲むということは飲んでる状態が標準になるから、最初は「飲むと調子いい」だったのが「薬がないと調子悪い」になるんですよ。根本的には「俺、こんなんやけど、別によくね?」というところに着地できる方が健康的だとは思うんですけどね。

ハナダ 自分が掲げている理想の自分と、現実のできない自分とのギャップもめっちゃくちゃあったり。

高木 その現実を俺らは受け入れてるけど、たとえ受け入れる人がいたとしても、自分が掲げる理想が違うから自分的に許せないということだよね。

ハナダ そうですね。それもあるし、認めてくれる世界は意外と狭くて。その世界を出たら自分が掲げる理想を求められる場合もあって。実際に他人から「ダメだ」っていうのがあったり。

三木 そういう世界とは距離を取ってしまってもいいんじゃないかなと思うんですけどね。

高木 距離を取りつつ、俺が思うのは、作品でねじ伏せる。そこが唯一クリエイティブ業界で希望を持てるし甘えられるなと思うところなんだけど。俺は作品至上主義、出音至上主義だから。

三木 まさにそうですよね。1本ホームラン打てれば勝ちみたいな感覚になっちゃえばいいとは思います。

ハナダ 山一に来てる人たちは認められてるから救われてる部分もあると思うんですけど、救われていない人たちもいると思ってて。

ー得意なものも居場所も見つかってない人、ですよね。

ハナダ そういう人はどういう判断基準で病院に行ったらいいですか? もしこれを見てる人で悩んでる人がいたとしたら、何かアドバイスはありますか?

三木 受診の基準は、しんどかったらかなと思います。自分がすっごくつらいと思ったら一回行っていいと思うんですよ。それがクリニックとか病院である必要はなくて、いわゆるカウンセリングみたいなところでもいいし、もっというと友達とかでもいいと思うんです。「俺、最近めっちゃつらくて」とか言いながらしゃべると、自分の思ってることもちょっと整理できたりするしデトックスにもなるし。

高木 そういう人たちって、病院へ行ったときに「いや、あなたは精神疾患や発達障害ではありませんよ」って突き放される恐怖みたいのもあると思うんです。そうなると、それまで周りから言われていたみたいに「頑張りが足りなかった」になっちゃうという恐怖があるから。「別に何も問題ありませんよ」という診断をするときもあるんですか?

三木 あります。専門家の立場として「あなたはつらいから鬱でいいです」とは言えないじゃないですか。ただ病名がつくことと、本人がつらいということは、必ずしもイコールではないので。そうなると、ヘルプを求める先として医療機関が適切ではなかったのかなっていう。楽になるなら何だってよくて、医療機関はそのための1つの選択肢でしかないんですよね。病名をもらえたら許されるものでもないですし、逆に病名がつかないから何もないわけでもないですからね。

高木 なるほど。でも自分が知ってる情報は限られているから、診断を受けることによって「あ、これはそれが原因じゃなかったんだ」みたいなに気づけるのは利点ですよね。

hamaiba(『赤裸々SESSIOONe』の映像やBREIMENのMVを手掛ける映像監督) 友達が適応障害になっちゃったときに、本当に自分がだらしなかったのか、それとも会社の上司がきつかったのか、そこで揺れていた気がして。その人自身の「ハンデ」と「怠惰」の線引きって難しいなと思うんですけど、それはどういうふうに考えてますか?

三木 僕は、苦手なことはしょうがないなって思ってますね。それも結局グラデーションの話で、どこから「障害」と呼ぶのかはあまり明確に言えないから。「苦手やし嫌いやからしゃあないやん」「その代わりにこれやるからさ」みたいなことが自分の中にあるといいんですけどね。あんまり開き直ると感じが悪いので、1割くらいは「ごめんね」という気持ちを持っておくのは大事だと思うんですけど、9割方は「もうしゃあないよな、だってできへんもん」みたいな感じでいいんじゃないかな。世の中にはいろんな人がいるから、自分は超絶苦手なことが大好きな人もいるんですよ。「怠惰」も得意・不得意の中ですよ。気合いで勤勉にはなれないし、嫌いなものをコツコツやるのも特殊能力だと思います。好きなことには怠惰にならないじゃないですか。怠惰になるということは、きっと何か嫌な原因があるので、そういう諦め方でもいいんじゃないかなとは思うんですけどね。

高木 多分全員、グラデーションとか程度の深さは違えど凸凹はあって。それがうまくハマってピースになればいいよね。今話してることは、日本社会が抱える問題だから……どうしたらいいんだろうね。この企画をやってるからこうやって発信してるけど、俺が実働でできることも限られてるし、近しい人たちで手一杯だから。その中で不特定多数を相手にされている三木さんはすごいなと思います。

三木 僕はリアルな人にしかアプローチできないですけど、音楽は影響力がべらぼうにでかいじゃないですか。死にたい夜を音楽を聴いてやり過ごす子もいる。めちゃくちゃいろんな子に届いてると思うんです。個人ができることは24時間の範囲内でしかないけど、生み出したものが増幅されて飛んでいくってすごいことですよね。

高木 確かにすごいことですよね。まとめてくださってありがとうございます(笑)。楽しかったです、ありがとうございました!


左から、高木祥太、三木崇弘 Photo by hamaiba(GROUPN), Hair and Make-up by Riku Murata



『AVEANTIN』
BREIMEN
ソニー・ミュージックレーベルズ
4月3日(水)発売

BREIMEN MAJOR 1st ONEMAN TOUR「AVEANTING」
4月19日 (金) 東京 人見記念講堂
4月26日 (金) 札幌 sound lab mole
5月10日 (金) 仙台 Rensa
5月18日 (土) 大阪 なんばHatch
5月24日 (金) 金沢 AZ
5月31日 (金) 福岡 BEAT STATION
6月1日 (土) 広島 LIVE VANQUISH
6月7日 (金) 名古屋 ボトムライン

BREIMEN
常軌を逸した演奏とジャンルにとらわれないスタイルで注目を浴びる、5人組オルタナティブファンクバンド。バンドを軸としながらも各々が有名アーティストのサポートを行い、その確かな演奏技術と、セッションからなるジャンルに拘らない型破りのサウンドセンスで熱烈なファンを獲得している。岡野昭仁×井口理「MELODY(prod.by BREIMEN)」では高木祥太(Vo, Ba)が作詞・作曲、BREIMENメンバーが編曲・演奏に参加。2023年10月、アメリカ・ロサンゼルス州・エンゼルスタジアム前にてメジャー移籍を発表。

三木崇弘
1981年、兵庫県姫路市生まれ。2008年、愛媛大学医学部卒業。その後、愛媛県内の病院で小児科後期研修を修了。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・医員として6年間勤務した後、フリーランスの児童精神科医となり、公立小中学校、児童相談所、児童養護施設、保健所などで臨床経験を積む。『モーニング』にて連載中の『リエゾン -こどものこころ診療所-』では監修を務めている。2019年、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。2022年、早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程修了。現在は勤務医として地元・姫路市の病院に勤めながら、地域の子育て力アップのためのネットワーク作りに勤しんでいる。


『リエゾン
-こどものこころ診療所- 凸凹のためのおとなの
こころがまえ』
三木崇弘
講談社
発売中


『リエゾン
-こどものこころ診療所-』
ヨンチャン(原作・漫画)
竹村優作(原作)
講談社
最新16巻発売中

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