Kroiが語る、アニメシリーズ『SAND LAND』主題歌に隠された想い

演奏面やサウンドメイキングのこだわり

―それぞれのプレイや音作りの面に関して、こだわった点などを聞いてもいいですか。

長谷部:俺はけっこう新しい挑戦をしたんですよ。サビのフレーズとかはシタールギターを弾いていて、最後のソロとかもスライドバーで弾いてるんですけど、当時では初めてだったのかな。2年前だと新しいことを一番挑戦してたなって、リリースされてから再確認しました。

―最後のギターソロ、めちゃくちゃいいですよね。

長谷部:気合い入ってたんでしょうね、きっと(笑)。ジャック・ホワイトを意識して弾きましたね。俺だけレコーディングのタームがちょっとズレてて、FUJIROCKのあとくらいに録ったのかな。それまで組んでたソロは全然違うもので、FUJIROCKでジャック・ホワイトのライブを見てスライドバーでいこうと決めました。

関:ミュージックビデオ撮影のときに改めて自分のフレーズを聴き直したんですけど、気合い入ってたなって思いました。音数の多さだったり、「ここでこういうフレーズを入れたい」っていうものがあったり、「ゴーストノート」といってミュートした状態で弦を弾くパーカッシブなサウンドを「これでもか」というくらい入れてたり。そういう細かいところまでこだわって作ったなと思います。

内田:Kroi感を担保させようということでまず考えていたのがビート面で、「ビートはファンキーに」みたいなものは一個あったかもしれないですね。ブレイクビーツみたいな、ファンクビートにタンバリンがずっと追っかけて鳴ってるっていうビートをやりたかったんですよ。それを益田さんに叩いてもらったんですけど、今までの中でもかなりファンキーなサウンドになっているというか。

益田:「ブレイクビーツ」って、確かに言ってたわ。あとイントロの頭のフィルに命を懸けろって言われてマッチョに叩きました。

―スネアの音作りも気持ちいいなと思いました。

益田:千葉がミックスし直してくれて、スネアもパキッと力強さが出てくるような感じになってサウンド全体が変わったよね。

千葉(Key):うん、よくなりましたね。

内田:音源で出てるのが最近ミックスし直したもので。同じ曲を2年後にミックスし直す機会ってあまりないから、2年でこんなに変わるんだとは思った。成長もあるし、千葉さんの好きな質感みたいなものも多分変わってるし。そういうことをすごく感じられたな。

千葉:うん、耳は変わるよね。シンプルに、2年もあるとやっぱり技術が上達するので。より自分の出したい音が正確に出せるようになったところで、耳がいい方向に変化してきて、変なフィルターをかけずに鳴ってる音を正確に捉えられるようになってきてるんだろうなって思います。2年前に見えなかった部分が見えるなって、ミックスし直しながらすごく思ったので、ちゃんと成長しているという答え合わせにもなりました。

内田:みんなも曲を書く俺も気合いが入ってたのはありつつ、でも音の感じはミニマルにタイトにまとめてて。あの感じだったら、もっと空間感というかウェットな感じにした方が盛り上がってる感を演出できると思うんですけど、そこをあえてドラムとかかなりデッドなサウンドでやっているというのが、あのときのKroiだなって感じる。

益田:確かに。デッドブームだったもん。

内田:あれがあったからすごくよかったなっていう感じがするんだよね。

―千葉さんの中で、プレイ面で何か印象深かったことはありますか。

千葉:アレンジに関しても、自分の作り方が変わってるなと思いました。それこそミックスしながら「今アレンジするとしたら入れない音だな」とか「こんな音入れてたんだ」みたいに思うことがあって。だから今同じ曲を怜央が書いて持ってきたとしても、絶対ああいう仕上がりにはならない気がしましたね。いい意味での若さがあるものを今出せるというのはフレッシュさもあって、Kroiにとってプラスなんじゃないかなとは思ってます。

―ミュージックビデオも、「SAND LAND」の世界観を具現化したような見事な映像になりましたね。バギーに乗ってるシーンもグッときます。どこで撮ったんですか?

関:LAで撮りました。厳密にいうと、LAから車で1時間くらい行ったところ。確実に日本では撮れないスケール感の画が撮れて、しかもアニメや楽曲との親和性がすごく高いですよね。バギーに乗る演出とかも監督の新保(拓人)さんが考えてくださって。あっちで撮った甲斐があったミュージックビデオになってると思います。

―長谷部さんのギターソロのシーンとかめちゃくちゃ気持ちよさそうだし、「SAND LAND」とのリンクも感じさせますよね。ギターヒーロー感ある。

長谷部:さすがにありますね。あれめっちゃ怖かったんですよ。足の踏み場が小さくて、もう断崖絶壁みたいな。それなのに新保さんは「もうちょっと動いて」とか言うんですよ。動けねえよって(笑)。

関:あれはなかなか撮れるギターソロの映像じゃない。アメリカには10日間滞在したんですけど、レコーディングを2回別のスタジオでやって、そのあいだに「SXSW」でライブをして、ミュージックビデオの撮影もして。

―初のアメリカライブはどうでした?

長谷部:いつかテキサスステーキ店をオープンするのが俺と益田さんの夢なんですよ。そのためには現地視察が必要だってずっと言ってたんですけど、まさに本当にテキサスに行けるとは……。

―(笑)。Kroiのグルーヴがアメリカで通用する手応えはありました?

関:向こうじゃまだまだ無名な俺らのために200人くらいお客さんが集まってくれて、かなりノリノリで踊ってくれましたし、ライブが終わったあとも「最高だったよお前ら」みたいな感じでそれぞれに声をかけてくれました。すごくいい経験になりましたし、英語圏の方々にも自分たちの音楽が多少なりとも通用することがわかっていい機会でした。

―アメリカでのレコーディングだからこそ得られたものは何かありました?

千葉:アメリカでライブやレコーディングをやってみて、今まで画面の中でしか見られなかったものや想像だけだったものを実際に目で確認してみるということが、今回行った意味だったのかなとは思って。Kroiはゆくゆく海外でもやっていきたいという想いがあるので、そのスタートラインに立ったという意味で有意義だったなと思いますね。

―Kroiはデビュー当初から「音楽シーンに革命をもたらしたい」という野望を掲げていて、実際、Kroiの音楽スタイルで武道館を成功させたことはひとつの革命だと思うんです。しかもオーディエンスを置き去りにすることなく着実に輪を広げたという、Kroiにとって理想的な形で武道館まで行けたんじゃないかなと思っていて。

内田:そうですね、そういう感じになってますね。お客さんもちょっとずつ増えながら、昔からいてくれる人もいて、みんなと成長していってる感じがある。

関:コロナ禍とかもありましたけど、着実にちゃんとライブをして、会場の規模を1個ずつ拡大してここまで来られたので。それが功を奏して、ファンのみなさんがついてきてくれる状態で大きくなれたのかなという気はします。



―そうやって武道館も成功させて、アメリカへも一歩踏み出して……今バンドとしては「次のフェーズへ」みたいなモードですか。

内田:うーん……難しいんですけど、自分たちがもうちょっと世に出ないと「革命」みたいなものを起こせないなっていう、そのバランスをめっちゃ考えているというか。売れてしっかり「革命」をしないと広がらないというか、デカく打ち上がらないなって。ちゃんと売れた上で、どういった革命を起こしていくのかっていうのを、また改めて考えているところではあります。

―武道館に立つミュージシャンが持つ影響力や起こせる革命の範囲が、実際にそこに立ったからこそわかって、まだまだやらなきゃいけないことが見えてきたという感覚?

内田:これからですね、どちらかというと。もう武道館でライブをやってる最中から「これからだな」みたいな感覚があったので。本当に、必要なのは絶えず考えることですかね。

―そのためにやれることややるべきことが、次のアルバムに入っているともいえる?

内田:そうなるといいですね、まだできてないんで(笑)。

関:まだ7割くらい(2024年3月末時点)なのかな。頑張ります。

内田:タイアップ曲のリリースが3つ続いたので、次のリード曲は自分たちの思惑だけで楽曲を大きく出せるなと思っていて。Kroiの今やりたいことを聴きたいという人がいたら、ぜひアルバムを聴いてほしいなと。

―今のKroiを提示できる重要な1曲を今作っていると。

関:俺たちもまだまったくどういう曲になるかわかってない状態(笑)。

内田:今まであまりなかったんですけど、今回は制作期間をちゃんと設けてもらって。今までは色々活動をやりながら、夜中に曲を書いたりしていたんです。しっかり期間をもらったので今は研究ができるということもあって……そういう1曲を出せたらいいなと思ってるところです。


Photo by TAGAWA YUTARO(CEKAI), Styling by Minoru Sugahara, Hair and Make-up by Katsuki Chichi
衣装提供:KAMIYA / Tamme / YUKI HASHIMOTO / VALAADO / baziszt / SUBLATIONS / amok 


<INFORMATION>


「Water Carrier」
Kroi
配信中
https://lnk.to/Kroi_WaterCarrier

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