AI・YOASOBI・J-CLUB 音楽がIP化する時代にtofubeatsが思うこと

音楽のことをどう思っているか

若林:ただ、だからといって「日本最高!」と手放しで、そうしたありようを認めてしまってよいものかいうと、なかなかモヤるところも個人的にはありまして、その辺のモヤモヤはtofuさんとも共通してるのかなと思ったりします。

tofu:そうですね。少なくとも音楽に限った話でいうと、音楽って「つくり手が音楽のことをどう思っているか」がハッキリわかっちゃうものだと思っているんです。自分はベタに「音楽の力」みたいなものを信じているし、そう信じている人の音楽が聴きたいんです。とはいえ、その一方で「他人に良い影響を与えてあげましょう」みたいな押し付けになるのも避けたいんです。

若林:tofuさんはそうですよね。歌詞とか読んでも、ずっと音楽の話をしてるなという印象あります。

tofu:そうなんですよ、実際。

若林:知り合いの写真家が、以前「写真っていうのは、全部が写真論だから」といったことを言っていて、なるほどそういうものかと思ったことがあります。自分が本や雑誌をつくるときも、一番大事なのは、「本とは何か? 雑誌とは何か?」という問いで、少なくとも自分はそこに興味がありますし、何を作るにしても、いつもそこに向けてやっている感覚はあります。逆に、そのフレーム自体に向けた問いがないものは、自分からするとあまり面白くない。それは、音楽を聴いたりするときも、映画やドラマを観たり、本を読んだりするときも同じかもしれません。




tofu:さっきのバーチャル/リアルみたいな話でいうと、例えばVTuberのように、匿名的なアバターを使うことで、デジタル空間上で起こりうる様々なリスクを回避できるといった、ある種の必要性の観点からも求められていることはわかるのですが、ただ腹落ちできていないところもあるんですよね。顔出ししないことへの違和感みたいなものというか。自分も最初は絶対に顔出ししたくなかったタイプなんですけど、やっぱりしなきゃダメだよなと思って、顔出しするようになったので。

若林:と言いながら、AIに歌わせてるし(笑)。

tofu:何なんでしょうね(笑)。自分としては、やっぱり常に、自分がいまなぜこの音楽をやるのか、その必然性がどこにあるのかということは常に考えていて、それって結局、「自分が音楽のことをどう思っているか」を考えることなんですよね。

ちなみに、弊社HIHATTの最近のテーマのひとつに「J-CLUB」っていうのがあるんですよ。TSUTAYAのレンタルCD棚のジャンル名なんですけど、自分はそこにあるCDを借りまくるところからキャリアをスタートさせたわけですが、そもそも自分のルーツとか、この音楽をやる必然性って何なんだっけ?みたいなことを考えたときに、「J-CLUB」ってすごく良いワードのような気がしたんです。

あと、日本のクラブミュージック、エレクトロニック・ミュージックの歴史の系譜を見直してみると、特に自分が影響を受けた関西の諸先輩方が自主CD-Rとかで出してきた作品に、サンプリングの権利問題などもあってストリーミングサービスに乗っていないものが膨大にあるんです。今は音楽を辞めてしまっている人も多いですし、自分がそうした関西のインディ魂みたいなものを引き継いで整理したいっていう気持ちはありますね。




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『NOBODY』
配信:https://tofubeats.lnk.to/NOBODY

tofubeatsオフィシャルサイト:https://www.tofubeats.com/

Text by Yuki Jimbo

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